2005.07.27
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"考える力"を育む『ハンズオン・マス教材』を使った算数授業

7月9日東京ビックサイトにて『ハンズオン・マス教材を使っての算数授業の提案』という体験授業型セミナーが開催された。参加者はハンズオン教材の「作る」「気づく」「発見する」という楽しさを味わいながら、その魅力に十二分に触れることができた。

ずべての参加者にプレゼントされたハンズオン・マス教材の「パターンブロック」と「タングラム」

ずべての参加者にプレゼントされたハンズオン・マス教材の「パターンブロック」と「タングラム」

7月9日、東京ビックサイトで開催された「東京国際ブックフェア」のセミナー会場にて、日本数学教育研究学科常任幹事である滝井章氏による『ハンズオン・マス教材を使っての算数授業の提案』というセミナーが開催された。"ハンズオン・マス"とは、実際に教具に触って遊んで試して考えるなかで、子どもの興味・関心を引き出す体験型の算数のこと。
総勢80名強が参加し、それぞれが ハンズオン教材の楽しさを身をもって体験

総勢80名強が参加し、それぞれが
ハンズオン教材の楽しさを身をもって体験

事前申し込みにて参加の教育関係者が60名弱、当日一般参加者が20名弱と、80名強収容のセミナー会場は満席となった。
同じバーを使っていても、長方形と平行四辺形では面積が違うことを体感できる

同じバーを使っていても、長方形と平行四辺形では面積が違うことを体感できる

ハンズオン・マス教材である「パターンブロック」と「タングラム(ジョイントバー)」が参加者に配布・プレゼントされ、参加者が実際に教材を使って、学ぶ生徒の立場に立ちながらの体験授業型セミナーが展開していった。

まずは「パターンブロックを出し、自由に形を作ってください」と言われ、しばしのブロックタイム。ブロックは、正六角形、台形、正方形、正三角形、ひし形の6種からなり、形が同じものは同じ色。模様を作る人、対象図形を作る人、縦に積み上げていく子どもの参加者など、それぞれに形ができあがっていく。これは、自由に作らせることで発想を広げていくおもしろさを味わわせるためのもの。

滝井章氏

滝井章氏


講師:滝井章氏
東京都世田谷区立八幡小学校教諭、日本数学教育研究会常任幹事、海外補修校指導計画作成資料作成委員、IEA国際数学教育動向調査TIMSS2003年調査・評価分析チーム外部委員
「算数を通しての人間づくり。クラスづくり」をモットーとする講師の滝井氏


参加者に手を挙げて発表してもらうことで、ほかの参加者にも多くの気づきが

参加者に手を挙げて発表してもらうことで、ほかの参加者にも多くの気づきが

次に、決まった形にあてはめる作業。六角形がプリントされた紙に枠内にブロックを敷くよう指示。できあがった参加者に使ったブロックの色とそれぞれの数を聞く。同じ数のブロックがあるものを比べると、残りのブロックの数の差で、「赤ブロック2つ=青ブロック3つ」といった関係が見えてくる。目に見えるため、子どもたちにもわかりやすい。

このようにパターンブロックは、「作る」「気づく」「発見する」という楽しさが味わえる教材であり、工夫によっては「数と計算」「量と計測」の領域にまで発展させていけるもの。

次に、点がマス状に配列された紙に、正方形と台形、平行四辺形と長方形、これらすべてがひとつは入るように点と点を結ばせた。同じくできた参加者に発表させていくと、台形がひとつという人がひとりもいないことに気づく。それがなぜかを参加者に発表させていくなかで、それぞれの図形のもつ性質があきらかになっていく。もちろん参加者は先生方なので答えることができるが、子どもたちに同じ質問をしても、図形の性質への何らかの気づきが出てくるはずだ。

レポーターが作った2等辺三角形の図形。ほめられて喜ぶ子どもの気持ちがわかった

レポーターが作った2等辺三角形の図形。ほめられて喜ぶ子どもの気持ちがわかった

同じく点がマス状に配列された紙の右上の点を頂点とする2等辺三角形をたくさん作ってみようという課題が出る。右上の頂点から左下へと対角線にラインをひき、上半分にできた三角には垂直に線をおろし、下半分にできた三角には水平に線を描いて、相似形の三角形を効率よく作った先生の図形が、滝井氏の指名で発表された。それとは対照的ということで指名されたのが私(レポーター)の描いた図形。算数などとはほど遠い生活を送っている私は、右上の頂点から対角線上に線をひくまでは同じだったが、そこからはその線を三角形の中心線とし、線をまたいで右上の点を頂点とする三角形を作っていた。

先の先生のものに比べるとなんとも効率が悪いのだが、
「子どもたちはこういう新しい発想を目にすると、尊敬し、感動し、新たな発想に気づくことができるのです」
とほめられる。子どもでなくとも嬉しく、効率重視でなくいろいろな発想をほめてやる、ということで子どもたちは伸びていくのだろうなと実感させられた。

今度はタングラムを使っての体験授業。これは6種類の棒状のジョイントバーで構成され、棒の両端のジョイント同士を接続することで図形をつくることができるもの。

ジョイントバーで長方形を作り、ずらしていくと、平行四辺形になる。「周りの長さは同じ。では面積は?」と問いかけることで面積を求めるのに必要な条件を考えさせることができる。ただ「面積=底辺×高さ」と暗記させるよりも、よっぽど条件が頭に入るはずだ。

このように、この教材は教具を使用して図形を作り、それについて考察していくことで、基本図形の性質を発見したり、多角形の内角の和が一定であることなどを発見することができる。自然な形での「考える力」を育むことができるのだ。

ここで体験授業はタイムオーバー。「もう終わり?」と思うほどにあっという間の1時間だった。「子どもの目が輝くような授業をしていきたいですね」と結んだ滝井氏の後に、ハンズオン・マス研究会代表の坪田氏より、

筑波大学付属小学校の副校長も務める坪井耕三氏が最後に挨拶

筑波大学付属小学校の副校長も務める坪井耕三氏が最後に挨拶

「考えるための道具を使うと、授業のスタイルも創造型のものに変わってきます。ただの道具、説明具、に加えてこの『ハンズオン教材』を『考具』として活用してみてください」との挨拶があった。
「問いをもたせる」「思考力を身につけさせる」「表現力を育成する」「理解を確かなものにする」といったことが可能なハンズオン教材。その魅力に触れることができた1時間であった。学校で、ご家庭で、ぜひ試してみていただきたい。

取材・文:小股千佐

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