2007.07.10
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読書活動の意義と環境づくり

読書の重要性が語られています。しかし、ゆとり教育から学力重視へと教育方針が転換され、「学校での読書教育や読書活動の時間と予算が削減されたり、なおざりにされるのではないか」という不安の声を上げる人も増えています。 読書活動の意義と子どもが自主的に読書をする環境づくりの事例を紹介します。

本当の学力を身につけるには、読書が培う読解力が大切

 読書が培う力(国語力や言葉の知識、読解力)はあらゆる教科の学習の基礎学力に欠くことができないものといわれます。また、読書によって育まれた豊かな感性や情操、思いやりは子どもの心の発達に大きな影響を持つともいわれます。

 読書活動は子どもが言葉を学び、感性をみがき、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身につけていくうえで欠くことのできないものであるとして、子どもが自主的な読書活動を行うことができるように積極的に環境を整えるために、平成13年(2001年)12月に「子どもの読書活動推進に関する法律」が公布・施行されました。

 この法律に基づき、政府は「子どもの読書活動の推進に関する基本計画」を策定し、(1)子どもが読書に親しむ機会の提供と諸条件の整備、(2)家庭、地域、学校を通じた社会全体での推進、(3)子どもの読書活動に関する理解と関心の普及を推進するものとし、学校図書館については、司書教諭の役割の理解と配置の促進をはかる必要性が述べられています。
 この政府の基本計画をもとに、各自治体で「子どもの読書活動推進基本計画」が策定されています。

 その中の学校(小・中学校)における取り組み事例については、

(1)
各学校に専任の司書教諭・学校図書館司書の配置
(2)
司書教諭・学校図書館司書の研修の推進
(3)
教職員(司書教諭・学校図書館司書以外)の研修の実施
(4)
学校図書館の図書の充実
(5)
学校図書館施設の整備
(6)
学校図書館における学習支援機能の整備
(7)
学級文庫の整備
(8)
「朝の読書」の実施や「読み語り」等読書活動の充実
(9)
児童・生徒による図書委員会活動の活性化
(10)
市町村立図書館との連携
(11)
保護者や地域の人々から学校図書館支援ボランティアを募り、読み語り等を行うことなど、地域との連携
(12)
読書の啓発活動

 などがあげられています。

 ところが、こうした読書活動の推進の動きが徐々に進む中で、政府の教育方針がゆとり教育の見直しから学力重視へと大きく転換しました。そのため、これまで読書教育や読書活動に使われてきた時間が削減されたり、図書購入費などが削られるのではないかという恐れを感じている人も多くいます。

 2003年に行われたOECDの「生徒の学習到達度調査」(PISA)で、読解力、数学的リテラシーの分野でトップだったフィンランドでは、国民1人当たり年間21冊の本を図書館で借りており(国民の図書館利用率世界一)、国民の77%が1日に1時間以上読書をするというデータもあるようです。それに対して、日本の国民1人当たりの図書館貸し出し冊数は年間4.6冊と、フィンランドの5分の1強にすぎません。(2004年度、文部科学省「社会教育調査」より算出)

 フィンランドの教育の特長として、何よりも読解力の重視があげられています。読解力こそ全ての教育科目の基礎であり、学力を向上させるものだとの考えです。重要とされるICT教育もリテラシー(読み書き能力)によって支えられます。その読解力を培うのが読書です。知識の詰め込みを競い合うよりも、読書によって知識や言葉の使い方を覚え、読解力を培い、思考力を高めることのほうが、本当の学力を身につけるうえで役立つのはないでしょうか。

読みたい本を自由に読むことで、まずは読書の習慣づけを

 多くの学校で「朝の読書」が行われています。「朝の読書」運動は、授業が始まる前の10分間、子どもたち(児童・生徒)と教員が、それぞれ自分が読みたい本を自由に読む読書活動で、子どもたちの「自ら学ぶ力」を育てようと、1988年に千葉県の女子高校から始まりました。朝の読書推進協議会調べによると、21年目を迎えた2007年6月22日現在、小学校1万5666校、中学校7322校、高等学校1768校で実施されています。
 原則は、(1)みんなでやる、(2)毎日やる、(3)好きな本でよい、(4)ただ読むだけ、いたってシンプルです。

 取り組んでいる学校での実施状況をみると、全校一斉に実施89%、学年での実施7.1%、学級での実施3.4%、授業での実施0.4%と、約9割が全校一斉に行っています。実施時間は5分間 1%、10分間 53%、15分間 34.1%、20分間 9.3%、その他2.6%と、10分間あるいは15分間が大半を占めています。実施回数については、毎日(週5回)33.4%、週4回7%、週3回8.4%、週2回13.5%、週1回21.4%、期間限定9%、不明7.3%と、実施校の約半数が週3回以上行っています。

 また、読む対象とする本は書籍のみが86.9%で、書籍とともに雑誌やマンガを認めている学校もあります。感想文については、書かせない72.9%、書かせることもある23.8%、定期的に書かせる2.3%となっています。教員が一緒に読んでいる学校は66.3%になっています。(2007年6月1日現在)

 この朝の読書によって、(1)本が読めない子が読めるようになった、(2)言葉(語彙)が豊かになって、表現力がついてきた、(3)読解力がついてきた、(4)集中力がついた、(5)落ち着きが見られるようになった、(5)他人を思いやる気持ちが出てきた、(6)遅刻がなくなった、(7)いじめが少なくなった、(8)いつも騒がしかった教室が静かになった、(9)昼休みなど、休み時間に読書する児童生徒が増えた、(10)学級崩壊を防げた、などの実際の効果があった、という声もあります。

 もちろん、「朝の読書」に対して、「読書の強制は良くない」「心の教育と言われるとうさんくさい」「人に言われて読むのは主体性がない」「興味を持って読むことが大事」などの批判があります。

 しかし、子どもが自発的に本を選ぶようになるには、「ある程度本を読んで、自分の好みと本の選び方がわかるようにならないと難しい」という指摘もあります。家庭や学校で、子どもが興味を持ちそうな本を選んで読み聞かせや読書をさせることで、子どもは徐々に自分の好みの本を選べるようになります。

 本を読まない中学生や高校生は、幼児期から小学校にかけての子どものころに、読み聞かせをあまりしてもらっていないケースが多いともいわれます。
 まず読書を習慣づける一つの方法として意義があるのではないでしょうか。

読書は子どもの心を育み、学力を伸ばす

 学校図書館の充実に向けて研究と交流活動を行っている全日本小学校学校図書館研究会会長で、東京都港区立御田小学校校長の福永睦子さんは、「読書は子どもの豊かな心を育むという面においても、学力を伸ばすという面でも大きな役割を果たしています。家庭で小さいうちから読み聞かせをしたり、ゆっくりと絵を見たり、本を読む体験をすることが大事で、学校でも積極的に行っています。幼児期からゲームやテレビなどのメディア浸けにされている子どもと、読み聞かせで育った子どもとでは、情操面での発達に大きな違いが出てきます。
 また、国語力はすべての教科の基礎となります。というのも、すべての教科が言語によって表現されていますので、教科の内容を理解するには言葉を理解し、読み解く力、読解力が必要で、その読解力は日々の生活の中で本を読むことによって培われていきます」と指摘しています。

 福永さんが校長を務める御田小学校では、読書活動としては、「1日10分間の読書のすすめ」の取り組みを始めています。毎週木曜日の「朝読書」では、子どもたちはその日に読む本を自分で準備します。いつも机の中に本を置き、いつでも読めるようにしています。

 また、「読書貯金」にも取り組んでいます。2006年は、たくさんの本を読んだ子どもたちに賞状を渡し、励みになるようにしてきました。2007年はさらに工夫しながら本に親しむ子どもたちを増やしていくそうです。
 また、ハード面では、学校図書館の本の検索や貸し出しをパソコンで迅速に行えるようにしています。
 福永さんは、「子どもたちがすぐに本を手に取れ、読みたいときにいつでも本が読めるようにすることが大事」と、読書のための環境づくりの大切さを説いています。

いつでも本が目の前にある‥‥学校が本のテーマパークに

 「えっ、こんなところにも本が置いてある!!」と、見学者から一様に驚きの声が上がります。
 神奈川県横浜市立港北小学校には、一般の学校のように1か所に全ての本をまとめて置いてある図書館がありません。そのかわりに、廊下や階段の脇、トイレの横、教室の中など、学校中のいたるところに取り付けられた書架や棚、床に置かれた小さなテーブルの上に本が並べられています。

 読み物、歴史、小説、環境、国際理解、福祉、人権、伝記、冒険、ミステリー、ファンタジー、絵本、文庫本などの分類のほか、教員おすすめの本、PTAおすすめの本、赤毛のアンシリーズ、宮澤賢治などの人気のある作家、外国人作家の本のコーナーなどもあります。ベストセラーや話題の本も、まだ新鮮さを失わないうちに揃えられています。

 理科室や家庭科室、音楽室、保健室、造形ルームなどの特別教室には、それぞれ理科に役立つ本、家庭科に役立つ本、音楽に役立つ本など、教科に関する本が置かれており、授業中でも手に取って調べることができます。まさに学校全体が図書館です。

 本の置き方にも工夫が凝らされています。子どもたちの視覚に訴えるようにブックカバーを付けたまま、書架の上のブックスタンドに立てかけたり、テーブルの上に平置きするなど、表紙がよく見えるように書店スタイルで飾り置きしています。
 また、牛乳をテーマにした本の隣に牛のぬいぐるみを置いたり、絵本の人気シリーズの横にはキャラクターの人形を置くなど、本のストーリーに関係がありそうな小物をさりげなく置いて子どもたちの好奇心をくすぐっています。

 書架の下には、カーペットが敷かれているところや箱形の大きなベンチが取り付けられているところ、児童用のいすが置かれているところがあり、子どもたちは床に寝ころんだり、ベンチやいすに腰かけて、思い思いのスタイルで本を読みます。

 校舎の各階には、水飲み場を改造したデンと呼ばれる隠れ家のような図書スペースが設けられ、本棚の下に取り付けられたベンチに座って、個室にいるような感覚で誰にも邪魔されずに読書にふけることができます。
 子どもたちは「机の前でかしこまることなく、気楽に読めるのがいい」と、とても気に入っているそうです。

 「子どもたちが好きなところへ行って、好きな本に出合える。通りがかったときに、つい立ち止まり自然に手が伸びていく。そんなコンビニ的な発想で、手を伸ばせば本がある環境をつくるのが狙いでした。学校全体の本のテーマパーク化を目指しています」と、図書担当教員の鈴木正憲さんは言います。

横浜市立港北小学校の本のテーマパーク化。本は校内のいたるところに、様々なスタイルで飾り置きされている

横浜市立港北小学校の本のテーマパーク化。本は校内のいたるところに、様々なスタイルで飾り置きされている

 港北小学校で、豊かな心を育てる学校図書館をつくろうとして10年目。魅力あるテーマパークのように、子どもたちを飽きさせず、常に子どもたちが本に注目するように、図書コーナーをどんどんリニューアルしています。
 例えば、教員と子どもが一緒になって、そのときの学習に関係のある本を集めてコーナーをつくり、子どもたちが自由に読んで、終わったら元に戻すなど、そのときどきの学習内容や関心によって本がどんどん動き、図書コーナーづくりも進化しています。

 港北小学校では、教室のオープン化を進めており、構造上の問題で壁を取り払うことができない教室を除いて、教室と廊下を隔てる壁を取り払い、教室と教室の間の仕切りもなくしています。
 子どもたちは、授業中に他のクラスの子どもが入ってきて本を持っていっても、いっこうに気にしていないそうです。

 一般の多くの学校では、読書活動は司書教諭や図書担当の教員によって担われることが多いようですが、港北小学校では全教職員がかかわっています。
 鈴木さんは、「1人や2人の力では限度があります。全ての教職員が積極的にかかわるからできることです。もともと教員は本が好きですから、よい本だと言われたら、どうにかしてその本を購入し、子どもたちにぜひ読んでほしいと思います。
 また、港北小学校では読み聞かせボランティアや環境ボランティアなど約50名の方が読書活動のサポートをし、教職員ができない部分を補ってくださっています。
 教職員みんなが自信を持って行動し、語れるようになると、子どもたちも自信を持って行動したり、語れるようになっていきます」と指摘しています。

 廊下の一角に置かれた書架とテーブルに、写真家の星野道夫さんの本や写真集が並んでいます。
 理科担当教員の江野澤勝さんが、6年生の授業で取り上げられた星野さんの著書『森へ』を、子どもたちに読んでほしいと思い、自ら市立図書館に行って借りてきたり、取次店まで足を運んで購入してきました。

 『森へ』は、筆者星野さんが、アラスカ南部からカナダにかけて広がる原生林を訪れて目にしたことを記した体験記です。人間がめったに足を踏み入たことがないアラスカの原生林の風景を目にして、驚いたこと、感動したこと、不思議に思ったこと、発見したこと、疑問に思ったことなども書かれています。

横浜市立港北小学校・家庭科室にある本のスペース

横浜市立港北小学校・家庭科室にある本のスペース

 『森へ』を読んで感動した子どもの話を聞き、「自分も読みたい」という子が続々と現れました。さらに「星野さんの他の本も読みたい」という声が多くなり、「では、星野さんの他の本も揃えよう」と、星野さんの著書のコーナーをつくりました。
 順番を待ちきれずに、自ら市立図書館まで星野さんの本を借りに行く子どももいました。
 江野澤さんは「自然の生命や営みに対する関心が高まりました。また、子どもたちの本に対する考えが変わりました。読書の幅がどんどん広がっています」と振り返ります。

 2006年、国語の授業で作家の立松和平さんの著書『海のいのち』が取り上げられました。この本には、自然の海の風景とともに、もぐり漁で大魚のクエと格闘し水死した父の姿を見て父と同じ漁師への道を進み、そしてついに海中で父と格闘したクエと出会う少年太一の心の軌跡が描かれています。

 立松さんは、この『海のいのち』のほかに、『山のいのち』『街のいのち』『川のいのち』など、「いのち」をテーマにした作品を書いています。
 体育担当教員の栗田高広さんは、子どもたちに『海のいのち』を読んで、「いのち」について考えてほしいと思い、本集めに奔走し、子どもたちに読むことをすすめました。そして、『海のいのち』を読んだ子どもたちの間に『山のいのち』や『街のいのち』も読んでみたいという声が広がりました。

 栗田さんは、これらの作品を読み比べて、子どもたちが「いのち」をどのように捉えているか、お互いの考えを話し合う座談会を子どもたちと開きました。
 座談会で子どもたちは、それぞれの主人公たちの心情や人物の相関図などを描き、他の子どもの感想や意見を聞きながら自分の考えや感想を述べるなど、意見交換をしました。

 栗田さんは「子どもたちが、予想以上に自分の考えを持っていることがわかりました。また、子どもたちは、友だちと自分が同じところに注目していても、ひとりひとり感じ方が違うのだということも理解しました。この本を読むことをすすめ、座談会をやって本当によかったと思います」と述べています。

 港北小学校では、子どもたちは自由に本を持ち帰って読むことができます。外部の人は、「それでは本がなくなるのでは?」と疑問を持つようですが、本は減るどころか、増えているそうです。子どもたちが、自分の家から持ってきて置いておくこともしばしばあるとのことです。

 また、読書が好きそうに見えない子が、実は本好きだったりすることもわかりました。例えばヤンチャで、ふだんは汗びっしょりになって遊んでいる子が、朝早く登校し、メディアセンターの床に寝転がって本を読んでいたり、授業の合間の休み時間に一心に本を読んでいることも多いそうです。

 鈴木さんは、「一般の図書館のように、いつも同じ本が同じ場所にあるのでは、今の子どもたちは図書館に行きません。テーマパークは、引きつける魅力があればつぶれません。同じように図書館も、子どもたちを引きつける魅力をつくり、好奇心をそそる仕掛けをすることが大切です。
 本をどんどん動かして、子どもたちが行くところ、目につくところ、手が届くところに置くことで、子どもたちは興味を持ちます」と指摘します。

 今学習していることに関する本がすぐ目の前にあれば、子どもはさらに知りたいと思って手に取ります。そこで興味や関心が広がり、もっと知りたいという探求心が生まれれば、もっとたくさんの本を読んでみたくなります。
また、書架に並べられた背表紙を見るだけでは読む気になれませんが、書店のように平置きやブックスタントに立てかけたり、斜めに展示するなどで表紙を見せて、視覚的に子どもたちの好奇心を刺激することも大切です

 港北小学校の蔵書冊数は、現在約2万3000冊。図書購入費は、横浜市から支給される48万円と、PTAからの補助(子どもたちのための本の予算)と合わせて年間約100万円になります。全国学校図書館協議会が行った2006年度学校図書館調査によると、小学校の平均蔵書冊数は7970冊ですから、一般の小学校のおよそ3倍の蔵書冊数になります。また、小学校の2005年度決算による平均図書購入費は52万7000円ですので、およそ2倍の図書購入費を使っていることになります。港北小学校の読書活動への取り組みがPTAを動かしているようです。

 本の置き場所や貸し出し状況は、パソコンで検索できます。本の貸し出しや管理は、子どもたちの「ほんわか委員会」(図書委員会。ほんわかする、本がわかるの意味)が行っています。
 教職員と子ども、それにPTAが一体になって図書館(本のテーマパーク)をつくっているのです。

子どもの読書離れ・本嫌いは、詰め込み教育にも一因

 全国学校図書館協議会と毎日新聞とが毎年共同で、全国の小・中・高等学校の児童生徒の読書状況について行っている調査(学校読書調査)では、2006年5月の1か月間の1人当たり平均読書冊数は、小学生9.7冊、中学生2.8冊、高校生1.5冊となっています。これを、40年前の1966年の調査と比較してみると、小学生は3.8冊→9.7冊と約2.6倍、中学生は1.9冊→2.8冊と約1.5倍に増えていますが、高校生は1.9冊→1.5冊と約8割に減少しています。

 また、2006年5月の1か月間に本を1冊も読まなかった児童生徒(不読者)の割合は、小学生6.0%、中学生22.7%、高校生50.2%となっています。40年前の1966年の調査と比較すると、小学生は14.2%→6.0%、中学生は34.4%→22.7%、高校生は31.3%→50.2%となっています。不読者の割合のピークは、小学生16.6%(1998年)、中学生55.3%(1997年)、高校生69.8%(1997年)です。

 中学生、高校生の読書離れは、1960年代(昭和30年代)から始まった詰め込み教育とともに拡大し始め、受験競争や偏差値重視の矛盾が吹き出し、ゆとり教育が段階的に始められた1990年代後半(1997年)まで続いています。その反省から読書の重要性が見直され、読書活動推進の方針によって、中学生の読書離れに歯止めがかかりつつあるといえるでしょう。

 子どもたちの読書離れの要因として、テレビやラジオ、パソコン、インターネット、携帯電話などの情報メディア、受験勉強、部活動などに時間を取られる子どもの生活を取り巻く状況が指摘されています。確かにテレビゲームやパソコンゲーム、インターネット、携帯電話に熱中する子どもたちは大勢おり、それも子どもたちの読書離れの要因でしょうが、最大の要因の一つは、1960年代から続いた、本をじっくり読むことよりも、単純に言葉や数値などの知識を覚えさせることで学力を上げようとした詰め込み教育にあると言えるのではないでしょうか。

 ある調査では、本をよく読む子どもはスポーツや勉強にも積極的に取り組む傾向があるという結果が出たそうです。それを裏返してみると、本を読まない子どもは本をよく読む子どもに比べて、自ら考え、課題を見つけ、判断し、表現する資質や能力を育む機会を失っているとも言えるでしょう。
 また、ある大手進学塾が首都圏の中学生を対象とした調査では、学力が高い生徒ほど読書量が多く、文学書をよく読むという結果が出ているそうです。
 
  読書によって、子どもたちは様々なことに興味や関心広げ、それを探求心につなげます。そして思考力を高め、想像力や表現力を豊かにします。
 しかし、小学生時代に、読書によって培われた力を、中学校、高等学校で行われる知識を一方的に覚えさせる詰め込み教育が押しつぶしてしまっている現状があるのではないでしょうか。

 家庭、学校も含めて、身の回りに本がたくさんあり、自由に好きな本を読める環境をつくることが、子どもの知的好奇心を刺激し、学ぶ動機づけになります。学力向上には、知識や技術の詰め込みではなく、子どもたちの生活の中に読書をする習慣を根づかせることが大事です。

構成・文:矢崎栄司 イラスト:あべゆきえ

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