子どもにお洒落は必要? 小中学生のファッションを考える

最近の子どもたちはすごくお洒落になってきた。いったい変化が現れたのはいつの頃からだろう。現代の子どもたちのファッション感覚は?彼らを見守る親や教師の意識は?今回は小中学生を中心に子どものファッションについて考察する。
POP&カラフル!子どもたちがお洒落になったワケ

渋谷ファッションビル109のジュニアステーション「109-2」の6Fと7Fはナルミヤブランドを始めジュニア向けアクセサリーストアやシューズストアが集結している。 写真提供: 株式会社ナルミヤ・インターナショナル
小・中学生の子どもたちをターゲットにしたジュニア・ファッション市場はここ数年伸び盛りだ。休日の街中、ファッションビルやデパートの子ども服売り場は親子連れで賑わう。子どもたちの着こなしは、色もデザインも大人顔負けのとてもファッショナブルなものだ。
小・中学生の子を持つ母親たちに「子どもたちの洋服について聞かせて」と尋ねところ"ナルミヤ"がキーワードとしてあがった。老舗アパレル会社「(株)ナルミヤ・インターナショナル」が、10~14歳がターゲットとなるジュニアに焦点を当てたブランドを立ち上げたのが1994年。その後、ベビー、キッズのジャンルを含む異なる十数のブランドを全国のデパートやファッションビルに次々に展開し成功を収めている。同時にジュニア・ファッション市場全体も成長してきた。

自分のお気に入りの コーディネートを持つ 小1の女の子

就学前、低学年向けは カラフル&ポップな デザインが揃う
また、"兄弟間でのお下がり"については、「お揃いで着たり、流行もあるので意外にお下がりはしない」、「子どもブランドなら(お下がりにするよりも)人気のあるうちにバザーなどに出すのが堅実と考えるお母さんたちも多い」、「上の子と下の子で趣味が違う。幼稚園児でも自分の趣味を持っていて、これがいいと言ったりするので無理矢理着せるのは難しい」という。また、「おばあちゃんがお下がりはかわいそうと言って子どもの好きなブランドショップの服をプレゼントしてくれる」などの声もあった。
ちょうど、学生の頃に80年代のブランドや渋カジといったファッションの様々な時代を迎え、その後バブル時期も経験してきた現代のママたちのファッション感覚をくすぐるマーケット戦略と相成って、シックス・ポケットといわれる祖父母からのお財布事情がここ数年のジュニア・ファッション市場の好景気を支えてきたようだ。
情報はどこから?

小学生高学年から中学1,2年生をターゲットにしたファッション雑誌。発行部数も10万単位と人気が高い。
最新号(取材時2006年1月)を覗くと、「2006年流行予報」、「スタイルランキング」などの特集で小物、コスメ、洋服を紙面いっぱいに取り上げている。オリジナルロゴバックやチェックのマフラーなどの学校アイテムからハートブレスレットやピンクハートのケータイ用ストラップといったアクセサリ類まで様々な付録も付く。
「美肌」「モテたい」「キレイになりたい」といったキーワードが散りばめられ、大人の女性向けのファッション雑誌と何ら変わりはない。同じページに並ぶかわいいボールペンやノート類もきらびやかなマニキュアやアクセサリも現代の子どもたちにとって同じ類という感覚が身についてもおかしくないだろう。都内の中学生からは「小学生の頃から読んでいる」、「数カ月に一度は手にする」といった声が聞かれた。
ネットも情報源の一つだ。学生生活支援コミュニティ「キャスフィ」内の中学生ファッション、中学校制服の掲示板では、「B系ファッションをどう思うか」、「みんなどこで服買ってる?」といった話題が盛んに交わされている。「通学時に履く靴はどんなもの?」「中学男子のファッション」と男子の書き込みも少なくない。雑誌やショップのホームページも充実した情報と楽しめる作りになっている。
*プチ・レモンは1986年創刊、95年にファッション系にリニューアル
行き過ぎたおしゃれは必要ない!子どもは子どもらしくの声多し
子どものお洒落に対する親の意識を「学びの場.com」で実施したWEBアンケート結果から見ていく。「子どもにオシャレをさせたいですか?小中学生が髪を染める、パーマをかける〔縮毛矯正パーマ含む〕、制服を改造する、ブランドものの服を欲しがる、化粧をする、ピアス、プチ整形をする、ということについてどう思いますか?」という質問に回答結果は、108件。(当サイト読者アンケートはYES、NO式ではないため確実な統計データとはならない点につきご注意いただきたい)。
「必要程度にさせたい」、「興味を持つことは悪いことだとは思わない」など子どものお洒落について肯定的だったのは60件程度。しかし、そのほとんどが、「その年齢にあった程度」、「校則の範囲内」、「華美にならない」、「清潔感のあるもの」、「TPOによって」といった条件付きであった。また、きっぱりと「反対」、「不必要」、「させたくない」と唱える親は13件。髪のパーマや染め、化粧、プチ整形に関しては「高校生や大人になってからの判断で」、「自分でお金を稼いでからならOK」などの声もあるものの回答者全員が、小中学生の間は「必要ない」と反対する。全体的にみると身だしなみとしてそれなりのオシャレはさせたいという意向は少なくない。
今回のアンケートの中で縮毛矯正パーマについては「本人が悩んでいるならいいのではないか」とする意見は十数件に上った。昨年、中学生の女子の母親数人との話を持つ機会を得たのだが、娘の縮毛矯正について考えている母親は多く、その理由は、極度の天然パーマというよりは、ちょっとした髪質やくせ毛などでも本人が悩んでいるというものだった。子どもたちの悩みの度合いも"オシャレ"を基準に変わってきているのではないだろうか。
なんちゃって制服からスクールファッションブランドの時代に

フォーマルファッションは 制服風デザインが主流

マネキンの顔も今風?!
制服や持ち物に対する価値観の変化

ナルミヤブランド「ANGEL BLUE」でも制服ラインのデザインを扱う

カラフルなオリジナル・グッズも好評 写真提供: 株式会社ナルミヤ・インターナショナル
教員たちは「ダボダボのパンツ、長いスカートという時代は、その格好自体が"ワル"や"不良"の象徴だった。今は、スカート丈は短いもの、ズボンをルーズに下げて履くといった着こなしがうけているが、彼らのファッションであって、非行と直結するとは限らない」と語る一方で、次のようにも。「時代は変わっても制服はその学校の象徴。茶髪の中学生の集団が歩いていたら、一般の大人たちからはやはり"らしくない"という風評を得ることにもなる。彼らの感覚を全く無視するのではなく、"これぐらいで止めておく"、つまりは身だしなみの感覚を一定の線を引いて守らせることが学校の役割だと感じている。それには普段からの様子を見つめて感じ取るしかない(生活指導担当)」。「学校は子どもたちにとっての社会生活そのもの。趣味だけではいけないし、大人のように自己責任で行なうのとは異なるということも自覚させるべきと思う。中学時期は、"我慢をさせることを学ばせる最後の砦"とも言える。だからこそ、したい放題にさせるのではなくセーブをかけてあげるべきなのではないか(副校長)」。
時代の流れに沿い、校則も変化している。この中学では、一昨年前の生徒会で議題に上がったPコート、ダッフルコートの着用を認めている。通学時に持つバック類のデザインや素材にも規定はないというが、確かに通学路ですれ違う中学生たちのサイドバックはピンクや赤など賑やかだ。また、同校では、合併に伴い昨年、制服のモデルチェンジを行なったが、PTA、学校とでグループを作り一緒に検討し、数社から取り寄せたデザインの選択時には保護者のアンケートも実施したという。最近はイメージを一新するために制服のモデルチェンジを検討する学校も増えていると聞く。
小学高学年くらいから女子の多くが洋服の好き嫌いを口に出すようになり、中学生頃からは男子も髪型を気にするようになる。それは昔も見られた光景だ。親や教師が"子どもらしい服装"をして欲しいという気持ちそのものは大きくは変わっていない。しかし、子どものファッションに対する価値観が大きく変わってきたことは確かだ。幼稚園や小学生時代に薄化粧やピアスなどをさせた後に、中学では校則があるからだめよというのも現代のママたちに見られる価値観の一つである。
社会が溢れんばかりの情報を与えておいて、今さらオシャレを楽しむなと言うのも現実的ではない。大人たちは、"今どき"の子どもファッションの現実と合わせて"子どもらしさ"の本質を見直し、一緒に伝えていくべきではないだろうか。
写真提供: 株式会社ナルミヤ・インターナショナル
写真協力:東武百貨店 池袋店 (http://www.tobu-dept.jp/)
参考資料
- キャスフィ(学生生活支援コミュニティ)
取材・文:遠竹智寿子
※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
「教育トレンド」の最新記事
