2005.02.08
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出会い系サイトに潜む罠 出会い系サイトは「犯罪とも出会うサイト」

インターネットや携帯電話の普及に伴い、新しい通信手段をきっかけとして子供が犯罪に巻き込まれるケースが最近急増している。この手の犯罪が恐ろしいのは、入り口の敷居が低く、別に悪意はなくとも興味本位でのぞいたサイトが犯罪への入り口になっている、ということだ。数あるサイトの中でも、携帯電話からアクセスできるいわゆる「出会い系サイト」へのアクセスが発端で事件になるケースが特に増えている。今回は、こうした犯罪につながりやすいサイトの事例を紹介し、犯罪に巻き込まれないためにはどのような点に注意したらいいのか考えてみたい

■ 子供が犯罪に巻き込まれるケースが増えている

 まず、実際に子供がインターネットがらみで犯罪に巻き込まれるケースの動向を見てみよう。これに関しては、警察庁が2004年8月に発表した資料を見るとよくわかる。(警察庁
 最初のグラフを見れば明らかなように、平成13年から「出会い系サイト」に関連した事件の検挙数が急増している。平成16年上半期の数字を見ると、その中でも「児童買春・児童ポルノ法違反」の検挙数が増えていることがわかる。

 ここでちょっと言葉の説明をしておくと、「児童買春・児童ポルノ法違反」というのは厳密には下記の法律の違反だが、概ねお金の絡んだ売春・買春のこと。
 また各都道府県が定めた条例違反(都道府県ごとに名称が違う。神奈川県の場合「青少年保護育成条例違反」)、俗に言う淫行条例違反は、金銭の授受が絡んでいないものをいう。

 さて、このように出会い系サイトが入り口となり犯罪に巻き込まれるケースにはどのようなものがあるのかというと、先の警察庁のサイトで紹介されているもの以外ではたとえば……、

・ボイラー技師・男性(48)は、歌手志望の女子高校生(15)と出会い系サイトで知り合い、芸能関係者を装って「映画デビューのための演技を練習しよう」と言ってわいせつな行為をした。

・15才の女子中学生がインターネットカフェから出会い系サイトに、「中3の女の子です。5万円で買ってもらえませんか」などと書き込み、連絡してきた会社員に現金を振り込ませだまし取った。
(いずれも神奈川県の例)

などの例がある。特に2番目の例は平成15年12月に施行された「出会い系サイト規制法」違反の第1号で、この場合は金銭をだまし取ったということもあったが、書き込みをしたこと自体が違法となる。また最近では、オンラインゲームで他人のアイテムがほしくなり、人のIDとパスワードでアクセスしてアイテムを盗む、というケースも増えている。これなども、本人に悪意はなくても「不正アクセス禁止法」に違反する立派な犯罪だ。

■ 気軽な気持ちから出会い系サイトにアクセス

 では、なぜこのような事例が増えているのか? また、どのような防止策が効果的なのか? 神奈川県警でコンピュータに関する犯罪を扱っている「ハイテク犯罪対策センター」の神棒照夫さん(副所長・警部)と夘野智喜さん(セキュリティアドバイザー・技師)に話を聞いた。神奈川県警では、2年前からスクール・ポリスネットという活動を始め、ネット犯罪などの情報を概ね1カ月に1度、神奈川県にある学校に配信している。

 まず出会い系サイトに関わる犯罪の現状だが、被害者を年齢別に見ると18才未満が全体の80%を占め、その99%は女子だという(平成16年度上半期全国の例)。そのうち約55%が高校生で中学生は約45%、出会い系サイトを利用する手段は携帯電話が97%となっている。つまり、携帯電話を使う女子中学生・高校生が被害者の大半を占めている。

 それでは次に、どうしてこれだけ多くの女子中学生・高校生が出会い系サイトにはまってしまうのか?まず利用し始める動機だが、「メールだけだから危なくない」「暇つぶしにちょうどいい」という気軽なものが多いようである。特に出会い系サイトの場合、利用者は圧倒的に男性が多いので、女性が登録するとすぐに男性からのメールが殺到する。実際にはひとりの男性が複数の女性に大量にメールを出しているケースが多いのだが、いきなりたくさんメールが来るのでそれをもって「自分はもてている」→「出会い系サイトは楽しい」と思ってしまうらしい。

■ メールならではの錯覚

 さらにメールのやりとりならではの錯覚がある。メールでは直接相手とは会わず文字のやりとりだけなので、相手の書いていることが本当かどうか確認できない。年齢や容姿、場合によっては性別までウソかもしれない。また、自分の側も理想の自分を演じることができる。相手が「仲間由紀恵が好きだ」といえば、「自分はよく似ているといわれる」と書くことも簡単だ。こうしてきれい事だけのバーチャルな関係ができあがる。

 そしてメールでは、面と向かって話をするわけではないので人には言いにくい悩みなどを書いてしまうことがある。そうした悩みに関して、親身に相談に乗ってくれれば、会ったこともないメル友が親や自分の友達よりも信頼できる相手だと思ってしまうこともある。こうした関係ができると、相手から「会おう」といわれたときに断ることは難しい。初めは「会わないから安心」と思って始めたメールのやりとりでも、つい「会ってもいいかな」とか「会いたい」と思ってしまう。

 しかし、実際に会う相手は、自分の中で作り上げた理想の相手とはまったくの別人かもしれない。というより、理想の相手であることはまずあり得ない。そして最悪、相手が悪意を持った人間の場合、犯罪に巻き込まれてしまう。インターネットの世界は匿名・自己申告が原則だ。犯罪者にとっては打ってつけのシステムだということを忘れてはいけない。

■ 子供たちを犯罪から守るためには

 それでは、このような出会い系サイトを入り口とした犯罪から子供たちを守るためにはどうしたらいいのか? まず、物理的にこうしたサイトへのアクセスだけを遮断してしまう、という方法がある。パソコンからのアクセスの場合には、フィルタリングソフトというソフトを使えば、子供たちにアクセスさせたくないサイトを遮断することができる。ソフトを使わなくても、プロバイダーによっては利用者の申請によって対応しているところもある。

 また、携帯電話の場合も、電話会社に申し込むことによって、こうしたサイトへのアクセスを規制できる。
http://www.au.kddi.com/notice/deaikei.html
(au by KDDI)
 通話機能は残して、サイトへのアクセスを一切禁止することも可能だ。

 今紹介したのは物理的な遮断の方法だが、子供自体が「出会い系サイトは危険だ」という認識を持っていなければ、ほかにもアクセスする手段はいくらでもある。やはり一番重要なのは、保護者や教師がこうしたサイトに関する知識を持ち、危険性を子供に認識させることだろう。法律的には、「出会い系サイト規制法」により、18才未満の者は出会い系サイトを使えないことになっている。ましてや、そういったサイトで援助交際を誘う書き込みをすればそれだけで犯罪になり、援助交際自体は立派な売春行為(犯罪)だ。

 それだけでなく、子供が犯罪者にならなくても、悪意をもった相手に目をつけられ、犯罪に巻き込まれる可能性もかなり高い。「メル友とはメールのやりとりだけで絶対に会わない」「万が一会うときにもひとりでは会いに行かない」くらいの気持ちが必要だ。

 子供たちは気軽な気持ちでこうしたサイトにアクセスし「自分だけは大丈夫」と思っているが、同じように思っていた多くの子供が実際に被害を受けている。「自分は注意深いから大丈夫」と思っている人は、試しに次のふたつの話を読んでみてほしい。
http://allabout.co.jp/family/bohan/closeup/CU20030430A/index.htm
(出会い系サイト~少女の誤算)
http://allabout.co.jp/family/bohan/closeup/CU20030923A/index.htm
(出会い系サイト~嘘つきなメール)
 これは完全な実話ではないが、実話を元に構成されている。この話を読んでも、「自分だけは大丈夫」と言い切れるだろうか?

■ 出会い系サイトはきっかけにすぎない

 今回のようなケースを調べるといつも思うことだが、単に子供を出会い系サイトから遠ざけることは根本的な解決にはならない。なぜ子供がそういうサイトにアクセスしてしまうのか、その理由をよく考えること、また、子供が危険なことをしているときに、そのことについて親に相談できるような信頼関係ができているか、ということの方がもっと大切だろう。その根本的な問題を解決しなければ、テレクラがダメなら次は出会い系サイト、それもダメならまた別の手段、というように、ただ子供たちが新たな手段を見つけるだけになってしまう。

 最近では、出会い系サイトではなく、単なる「メル友探しサイト」や、ホームページの掲示板、チャットからも、犯罪に巻き込まれるケースが出ている。単に子供を出会い系サイトから隔離しただけでは、こうした新しい形の危険に対応することはできない。

 保護者や教師は常日頃から子供たちが何をしているのか注意深く観察し、何でも話し合える関係を築いておくことがいちばんの防止策になるように思える。そしてもし、あなたの家庭でそういった対策がとられていないのであれば、これから子供のためにできることを真剣に考えるべきだろう。


・出会い系サイトを巡る問題などについて学べるサイト
http://www.cyberpolice.go.jp/
(警察庁セキュリティポータルサイト。ゲームで遊びながらインターネットのルールを学べる)
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/web_encounter/
(出会い系サイト関連のニュースを集めたページ)

振り込め詐欺だけでなく、インターネットを巡る犯罪の世界は日々進化し続けている。次々に開発される新しい詐欺に引っかからないためにも、インターネットに関する知識を十分に蓄え、各方面にアンテナを張り巡らせておくことは、セキュリティの必要条件になるだろう。

執筆:堀内一秀 イラスト:Yoko Tanaka

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