2003.01.21
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6・3・3・4制がなくなる? ~小中一貫教育が始まる~

日本では1947年(昭和22年)以来、学校では6・3・3・4制がとられている(小学校6年、中学・高校3年、大学4年)。このうち私立では、中学高校の教育を一貫して行う、中高一貫教育が主流で、公立でも中高一貫校を作ろうという動きがある。今回紹介するのはそれとは違い、義務教育である小学校と中学校の教育を一貫して行う、小中一貫教育への取り組みだ。

 2002年5月、文部科学省はこれまでの小学校と中学校の6・3制の枠を越えることを想定した研究校を4件指定した。4件は小中一貫教育という見方からすれば共通しているが、その内容を見てみるとそれぞれ微妙に異なっている。

 まず品川区では、品川区立第二日野小学校と日野中学校を対象とし、小中の9年間を現在の小1~4、小5~中1、中2~3、の3段階に分けて一貫したカリキュラムを編成し、全教科で習熟度別学習を行う。

 香川県直島町立直島小と直島中では、9年間を5・4制にし、小学校段階から英語を教え、現在の小6と中1では学年の枠を超え算数・数学の習熟度別学習を研究する。

 高知県田野町の町立田野幼稚園、田野小、田野中では、幼稚園年長からの10年間を3つの段階に分け、一貫して英語教育に取り組む。

 宮崎大教育学部付属幼稚園、小、中学校も連続した教育内容や指導を研究する予定。中学では学年の枠を超えた習熟度学習と、異学年を一緒にした学習集団編成に取り組む予定になっている。

 このような小中一貫教育を探る動きは、大学受験をターゲットとした中高一貫教育とは出発点が根本的に異なっている。小中一貫というか、義務教育の9年間を再編成しようという背景にある理由は、義務教育の9年間で生徒の発達段階が著しく異なること、発達段階に即した教育内容や指導方法を採ることで教育効果が上がる、ということがある。

 そのほかの理由としては、小学校の第5学年(現小学5年生)から第二次性徴が始まる児童が昔に比べずっと増加していること、また同時にこの時期に生活指導上の問題が顕著化すること、現中学1年生時に環境の激変から不登校や引きこもりの割合が増加すること、などがある。

 つまり品川区の4・3・2制にしろ直島町の5・4制にしろ、小学校5、6年をひとつの区切りとして学習内容や指導法を変えるとともに、徐々に教科別担任制に移行し児童を取り巻く環境を急変させないような取り組みが研究されることになる。

 さらに4件のうち2件の、幼稚園までも含んだ一貫教育研究の背景には、やはり幼稚園から小学校への移り変わり時期に子供がうまく対応できず、俗に言う「学級崩壊」が発生することを防ぐ狙いがある。

 いずれにせよ、これから実験校による研究が進めば、小中一貫教育、さらには幼小中一貫教育の流れが加速されるかもしれない。これまでの制度を改めるとなれば長所ばかりでなく、これまでなかった新たな問題が出てくることも十分に予想される。そうなって「やっぱりそのままにしておけばよかった」ということがないように、長所短所とも納得のいく研究をしてもらいたいと思う。制度の欠陥で被害を被るのは、子供の側なのだから。

堀内一秀

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