2014.07.08
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

教育再生実行会議の「学制改革」とは

学制改革を検討してきた政府「教育再生実行会議」第5次提言の内容が固まった。小中一貫教育学校(仮称)、実践的な職業教育を行う高等教育機関、幼児教育の段階的な無償化と5歳児の義務教育化などが盛り込まれる見通しだ。

諸外国にもない初等教育の複線化

小中一貫教育学校の制度化は学制上、画期的なことである。文部科学省の説明によると、主な先進国で初等教育を複線化している国はない。中等教育段階から能力や適性などに応じて複線化するというのが基本だからだ。ただ、基本的には既に制度化されている中等教育学校と同様、単線型を基本とした中での制度改正と言えそうだ。

実践的な職業教育の高等教育機関も、既に高等専門学校(高専)の例があるとはいえ、ものづくり日本の復権、福祉などの人材ニーズの高まりや雇用流動化への対応、「社会人の学び直し」の受け皿となる可能性など、現代的な意味を持っている。

就学前教育は、その後の初等教育で学力などの伸びに大きく寄与することが期待されている。段階的な無償化も、教育費負担に悩む保護者には歓迎されるだろう。

6・3・3・4制自体は手をつけず

ただ、6・3・3・4制という基本的な学校体系には手をつけていない。議論の過程では、6・3・3・4制が敷かれた戦後すぐの時に比べ子どもの発達が約2歳早まっていることが共通認識になっていた。小1プロブレムや中1ギャップといった接続の問題も指摘される。しかし学校施設や教員配置を見直すには相当の予算的・社会的コストがかかることから見送ったものとみられる。

一方、提言にしても実現には困難が待ち受ける。会議の配布資料によると公私立保育所も含めて3歳児以上の幼児教育を無償化するには約7,840億円、5歳児に限っても約2,610億円という大規模な財源の確保策が必要になる。

なお、幼児教育の無償化は、麻生太郎内閣時の「教育再生懇談会」第4次報告(2009年5月)でも「早期実現を目指す」ことが提言された経緯がある。実現できないまでも、教育費の負担軽減につながれば保護者にとっては朗報だろう。

渡辺 敦司(わたなべ あつし)

1964年、北海道生まれ。
1990年、横浜国立大学教育学部を卒業して日本教育新聞社に入社し、編集局記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当。1998年よりフリーとなり、「内外教育」(時事通信社)をはじめとした教育雑誌やWEBサイトを中心に行政から実践まで幅広く取材・執筆している。
ブログ「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」

構成・文:渡辺敦司

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop