2014.06.10
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各地の英語教育、グローバル化に対応へ

実用英語技能検定(英検)はもとよりTOEFL(トーフル)などの外部試験を初等中等教育でも取り入れる動きが広がっている。背景には何があるのか。

高校入試に外部試験活用も

英検は、これまでにも高校の入試や単位認定に活用されており、英語力向上のために中学校段階で受検を奨励する等の動きはあった。しかし最近では、少し毛色が変わってきているようだ。

東京都文京区は今年度から、区立中学校の生徒が卒業までに3級(中学卒業程度)を取得することを目指して毎年1回、5級(中学初級程度)から3級までの受検機会を保障し、受検料を全額公費負担する。23区内では初めてという。生徒自らが学習目標を設定するとともに、英語運用力の現状を把握し、卒業後の進路設計にも生かせるようにするためとのこと。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、英語によるコミュニケーション能力の向上を期待している。

横浜市は今年度予算に、小学校16校で6年生に児童英検を、中学校30校で3年生に英検3級を実施する他、市立全日制高校8校では2年生にTOEFLを実施するモデル事業を盛り込んだ。やはり東京オリンピック・パラリンピックを見据え、世界の多様な文化を学び、国際都市横浜の歴史や伝統を世界に発信できるグローバル人材の育成に取り組むのだという。ゆくゆくは中学校3年生全員に受検を広げたい考えだ。

一方、大阪府教育委員会は昨年9月、2017年度の府立高校入試から英語の学力検査に替えてTOEFLや英検、さらには英国の大学などに留学する際に活用されているIELTS(アイエルツ)の成績を活用できるようにすることを発表した。各試験のスコアを学力検査の点数に換算し、当日の成績と比べて高い方を英語の得点とする。併せて高校では、府独自の進学指導特色校「グローバルリーダーズハイスクール」(GLHS)や国際関係学科設置校などを対象に、TOEFL教育を行うコース(3年間で6単位)を設定する。また、2015年度より、生徒が英語圏の大学に就学できる程度にまで英語4技能を高めるTOEFL iBT®テスト等を活用した英語教育を担う指導者「Super English Teacher(SET)」を採用する。

熊本県は昨年度から、高校生と中学生を対象とした「海外チャレンジ塾」(2コースで計102人)を開講している。海外大学進学や国内大学進学後の留学などを目指し、海外進学対策のためのウェブ講座やグローバルセミナーなどの他、TOEFL受験セミナーも開催する。

文部科学省も積極的だ。今年度予算に「外部試験団体と連携した英語力調査事業」1,160万円余りを計上。2015年度を目途に、高校の生徒の英語力を把握分析・検証するための調査を開発したいとしている。

4技能をバランス良く育成へ

こうした外部試験活用の動きは、聞くこと、話すこと、読むこと、書くことの4技能をバランス良く育成することがグローバル人材の育成には不可欠だとの認識がある。

もとより学習指導要領では4技能の育成を目指し、学校現場でも授業改善の努力が続けられている。しかし定期テストや入試がペーパーテスト中心では、どうしても読み書きが中心になってしまいがちになる。多少ヒアリングを入れたとしても、新指導要領が強く打ち出しているコミュニケーション能力の育成には不十分だ。そうした中で、4技能を測定できる外部試験に注目が集まっている。

小学校3年生からの教科化など英語教育の抜本的充実を目指して文科省が2月に設置した「英語教育の在り方に関する有識者会議」でも、4技能を伸ばすためには外部試験の活用が必要だとの意見が出されている。今後とも国や地方の動向が注目される。

渡辺 敦司(わたなべ あつし)

1964年、北海道生まれ。
1990年、横浜国立大学教育学部を卒業して日本教育新聞社に入社し、編集局記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当。1998年よりフリーとなり、「内外教育」(時事通信社)をはじめとした教育雑誌やWEBサイトを中心に行政から実践まで幅広く取材・執筆している。
ブログ「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」

構成・文:渡辺敦司

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