2014.05.13
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東京都の教職員の需給事情は

大都市圏を中心に教職員の「大量退職・大量採用」時代が到来し、今後10年間で半数の教職員が入れ替わると言われている。どのような影響があるのか。東京都教育庁の小島貴弘・人事計画課長に聞いた。

採用増加はしばらく続く見込み

東京都の教職員の年齢構成を見ると(2013年度公立学校統計調査)、小学校は30歳が約1,178人と最も多く。団塊世代の退職に応じて採用された世代が一つの山をつくっています。中・高校では50代が最も多く、今後も退職者数が増えていくことが予想されます。ただ再任用の動向もあり、退職者の数がストレートに新採用数に反映するわけではありません。また、教職員定数は学級数に応じて決まり、住民の移動状況によっても大きく左右されるため、今後どう需給が動いていくのかの具体的な将来推計はできません。

ただし児童・生徒数の推計は2026年度まで行っており、それによると小学校の新入生は2017年度まで増加する見込みです。その6年後には中学校に入学するわけですから、今後しばらく教職員の採用も増えることが予想されます。2014年度の教職員定数も前年度比230人増の6万3,332人となっており、知事部局の職員が軒並み減っている中で増えているのは教職員だけです。

若い世代の増加に伴い、産休・育休代替も増えています。2013年度は約5,000件で、5年前に比べ1.5倍となっています。

若手教員にきめ細かなサポート体制

若年層の急増に伴い、新任をすぐに学級担任にせざるを得ない状況にありますが、本人はもとより保護者などにも不安があるでしょう。教員が身に付けるべき力も「学習指導力」「生活指導力・進路指導力」はもとより「外部との連携・折衝力」「学校運営力・組織貢献力」(2008年策定「東京都教員人材育成基本方針」)の必要性がいっそう高まっています。

そのため都教委では任用前の人に対して、毎年12月頃に、学級経営等に必要な実践的指導力を身に付けることを目的とした「採用前実践的指導力養成講座」を実施したり(2013年度は11月~2月に実施)、4月当初から円滑に教育活動を始められるよう3月から任用予定の学校でさまざまな仕事を体験する「任用前学校体験制度」を実施したりして、サポート体制を充実させようとしています。

採用後は、法定の初年次研修はもとより2年次、3年次の「東京都若手教員育成研修」を実施しています。また、学校内でのOJTの推進として、非常勤の退職教員が学級担任をサポートする体制を組むとともに、電話や電子メールで相談を受け付ける「授業研究ヘルプデスク」、さらに採用4~10年目程度の教員を対象に、授業力向上の中核となるリーダーの育成を目指した「東京教師道場」なども用意しています。

採用試験の倍率は2014年度、全体の平均6倍台、小学校でも4倍台を確保できましたが、優秀な教員を確保するため、採用案内のパンフレット「東京の先生になろう」では全国各地から集まった教員が働いていることを紹介するとともに、日帰りの学校見学会を実施するなど、安心して東京の学校を目指してもらえるよう引き続きアピールしていきます。

対策はこれで完璧だとは考えていません。全国的な制度化前から主幹制度(主幹教諭は教員の指導・監督等の役割を担うリーダー)を導入したのもそうですし、今年度から小・中学校で指導教諭(他の教員に対して教育指導に関する指導・助言を行う職務)を導入したのも(高校および特別支援学校は2013年度から)、モデルとして若手など他の教員への波及効果を狙ったものです(編注:2009年度より主幹教諭の補佐として若手教員の育成に貢献する「主任教諭」も任用開始している)。今後も出てきた課題を一つ一つクリアしていくことになるでしょう。(談)

※注:「主幹」と「主幹教諭」の表記について
東京都は、2003年4月から公立学校に「主幹」を設置した。2007年年6月に改正された学校教育法を受け、都独自の職として設置していた「主幹」を学校教育法上の「主幹教諭」に位置付けた。

教職員の年齢構成や需給動向には都道府県によって濃淡があるため一概には論じられないが、教育の質をはじめ様々な方面に影響を及ぼしていることは間違いない。東京都発の教育改革はこれまでにも全国に波及することが少なくなく、今後もその動向に注目が必要だ。

渡辺 敦司(わたなべ あつし)

1964年、北海道生まれ。
1990年、横浜国立大学教育学部を卒業して日本教育新聞社に入社し、編集局記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当。1998年よりフリーとなり、「内外教育」(時事通信社)をはじめとした教育雑誌やWEBサイトを中心に行政から実践まで幅広く取材・執筆している。
ブログ「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」

構成・文:渡辺敦司

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