2014.02.11
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2012年度の「問題行動調査」、その傾向や特徴は?

昨年12月、文部科学省が毎年調査している「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」の2012年度結果がまとまった。どのような傾向や特徴があるのか。

数値に一喜一憂せず

 いじめに関しては認知件数が前年度の7万231件から19万8,108件へと大きく跳ね上がり、新聞報道などでは「過去最高」「20万件時代へ」といった見出しも躍った。しかし、今回の増加は大津市の中学生自殺事件などを受けて各地できめ細かな実態把握と報告が進められたためでもある。よく知られているように、いじめが社会問題化されるたびに「いじめ」の定義が変更され、学校現場でも把握・報告に努めたこともあって一時期は数が増えたものの、その後は次の社会問題化が起こるまで減少傾向が続く、ということを繰り返してきた。しかし国立教育政策研究所(国研)の滝充・総括研究官は、実際のいじめの「発生」率が増えたり減ったりしているわけではない、と指摘する。国研のリーフレットが訴えている通り、「早期発見・早期対応」を最優先にするよりも「未然防止」に努めることが、学校現場にとって最も合理的で有効な取り組みとなるだろう。

 暴力行為に関しては、発生件数が前年度とほぼ同数の5万5,837件、そのうち対教師暴力が前年度比142件減の8,432件、対人暴力が同192件減の1,530件となるなどの結果が出ているが、いじめの認知件数と同様、一喜一憂すべきではないだろう。むしろ、生徒間暴力が3万3,468件と1,123件増加していることに注目すべきかもしれない。子どもの心の問題が暴力行為に表れなくても、いじめなどに表れている可能性もある。学校現場にとっては言うまでもないことだろうが、数値の結果を受けて個別対応に追われるのではなく、児童・生徒の状況を日常的におさえた上での生徒指導の在り方を改めて振り返るきっかけとしたい。

不登校の状況も見逃せない

 その点でゆるがせにできないのが不登校だ。

 小・中学校の不登校児童・生徒は11万2,689人で、前年度より4,769人減少(小1,379人・中3,390人減)している。不登校率も1.09%と、0.03ポイント下がった。

 しかし高校の不登校は1,303人増の5万7,664人で、不登校率は0.04ポイント増の1.72%と小・中学校より高い。これには高校に進学してから新たに起こったというばかりではなく、小・中学生時代からあった不登校傾向が進学を契機に発現したというケースも少なくないだろう。高校不登校の調査が2004年度から始められている通り、昔は義務教育ではない高校に「不登校」はないとされてきた。また、そもそも不登校の調査も年間30日といった定義に基づく統計である。これも学校現場に対しては改めて指摘するまでもないが、一人一人の児童・生徒を丁寧に把握するとともに、前後の学校段階も視野に入れて児童・生徒の発達全体を見通した指導が求められるだろう。

渡辺 敦司(わたなべ あつし)

1964年、北海道生まれ。
1990年、横浜国立大学教育学部を卒業して日本教育新聞社に入社し、編集局記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当。1998年よりフリーとなり、「内外教育」(時事通信社)をはじめとした教育雑誌やWEBサイトを中心に行政から実践まで幅広く取材・執筆している。
ブログ「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」

構成・文:渡辺敦司

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