2013.12.10
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小学校英語の教科化はどうなる

下村博文文部科学相が、小学校の高学年で行われている外国語活動を正式な教科(英語)にする方針を表明した。中学年でも外国語活動を必修化する一方、中学校以降の英語教育も充実したい考え。実施時期は明らかにしていないが、ほぼ10年毎に行われる学習指導要領全面改訂に先行して、移行措置などの形で教科化することも視野に入れているとみられる。

実行会議の提言受け省内で検討

 政府の教育再生実行会議は5月にまとめた「これからの大学教育等の在り方について」(第3次提言)で、初等中等教育段階からグローバル化に対応した教育を充実させるべきだとして、小学校の英語学習で「実施学年の早期化、指導時間増、教科化、専任教員配置等」によって抜本的拡充を図ることや、中学校における英語による英語授業の実施、初等中等教育を通じた系統的な英語教育について「学習指導要領の改訂も視野に入れ、諸外国の英語教育の事例も参考にしながら検討する」ことを求めていた。これを受けて6月、文部科学省内に「英語教育に関する検討チーム」を設置し、小・中・高校を通じた英語教育の在り方について具体的な検討を行っていた。

 同チームの検討案が一部メディアで報道されると、下村文科相は10月25日の定例会見で記者団の質問に答えて「現時点でまだはっきり固めているわけではない」と断りながらも、検討案では▽小学校3・4年生で週1回程度、英語に親しむ ▽同5年生から週3回程度(現行の外国語活動は週1回)で英語を教科化する――としていることを明らかにした。その上で、「小学校だけ英語を前倒しして、中学校は現状維持というのでは無駄。当然、中学校の英語もレベルアップする必要があるし、高校入試や高校そのものの英語教育、それ以降(の英語教育)にも影響してくる」「英語教育を小学校から教科化をしていくということは、同時に日本語教育、日本人のアイデンティティーとしての日本の文化・伝統・歴史を踏まえた日本語教育も更に強化すべきだ。トータル的に考えて制度設計してスタートをすることが必要だ」との考えを示している。

7年後の東京五輪を「ターゲット」に

 下村文科相が小学校英語の教科化をはじめ英語教育の充実を図ろうとしているのは、第3次提言にあるように「グローバル化に対応した教育環境づくり」を進めるため。対応を加速させたのが、9月に決まった2020年オリンピック・パラリンピックの東京招致だ。下村文科相は先の会見で「これ(東京五輪)に対応できるような形でのスケジューリングもしていく必要がある」との考えを表明。11月に東京・羽田空港で行われた留学促進キャンペーン「トビタテ! 留学JAPAN」のイベントでも「2020年には2,000万人の外国人に来てもらいたい。子どもたちにとっては日本語と同じように英語を普通にしゃべれておかしくない時代が、7年間であっという間に来る」と述べている。

 学習指導要領の改訂には、中央教育審議会の答申が不可欠。正式な教科になれば、教科書や教員免許の問題も解決しなければならない。2020年度からの全面実施を目指すとの一部報道もあるが、下村文科相自身は実施時期を明確にしていない。

 ただし五輪開催年が「ターゲットイヤー」(10月4日の大臣会見)であることは確かだ。早ければ2015年度からとも報道される道徳の教科化と併せて一部改訂したり、全面実施の前に移行措置などの形で先行実施したりすることも考えられる。いずれにせよ、2020年に向けてコミュニケーション能力を重視した英語教育の充実が学校現場に一層求められることは必至だ。

※本記事は、2013年12月11日に公開しましたが、文部科学省より2013年12月13日に「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」について報道発表がありましたのでリンクを掲載します。
文部科学省「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」について

渡辺 敦司(わたなべ あつし)

1964年、北海道生まれ。
1990年、横浜国立大学教育学部を卒業して日本教育新聞社に入社し、編集局記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当。1998年よりフリーとなり、「内外教育」(時事通信社)をはじめとした教育雑誌やWEBサイトを中心に行政から実践まで幅広く取材・執筆している。
ブログ「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」

構成・文:渡辺敦司

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