2013.09.10
  • twitter
  • facebook
  • google+
  • はてなブックマーク
  • 印刷

「21世紀型能力」とは何か

「21世紀型能力」とは何か

国立教育政策研究所のプロジェクトが報告をまとめ、今後の教育課程編成で育成が求められる資質・能力として「21世紀型能力」を提唱した。高校の新学習指導要領が、2013年度の新入生からようやく本格実施されたばかりだというのに、なぜ今、新しい能力なのか。

“コンピテンシー改革”は世界の潮流

 国立教育政策研究所(以下、国研)のプロジェクト「教育課程の編成に関する基礎的研究」は、高校の学習指導要領が告示された直後の2009年度から5か年計画で始まった。およそ10年ごとに改訂されてきている学習指導要領など教育課程の基準に関して、国内外の学力調査など“これまで”の成果だけでなく、社会の変化という“これから”に着目して、教育課程の在り方の選択肢や基礎的な資料を提供しようというものだ。

 既に2011年度には3本の報告書をまとめ、▽社会の変化に対応して求められる資質・能力を育成する観点から教育課程を編成する必要がある、▽思考力等の育成や人間関係等のスキルを具体化し、その獲得のために体系的なカリキュラムを構成する必要がある、▽人間を全体的にとらえ、思考力等(知)と道徳性等(心)を関連づける必要がある――との見解をまとめている。

 国研によると、「コンピテンシー」に基づく教育改革は世界的潮流となっている。コンピテンシーとは、多様性が増した複雑な社会に適合することが要求される能力概念のこと。単なる知識や技能だけではなく、特定の文脈の中で複雑な要求・課題に対応することができる力を意味する。そのコンピテンシー改革の源流には二つある。

 一つが言うまでもなく生徒の学習到達度調査(PISA)の基となった経済協力開発機構(OECD)の「DeSeCo※注(Definition and Selection of Competencies )」による「キー・コンピテンシー」であり、もう一つが北米を中心に世界的ICT企業なども加わって研究が進められている「21世紀型スキル」だ。日本でも「人間力」「社会人基礎力」「学士力」など、基礎学力や専門的な知識・技能だけでない、より汎用的な認知・社会スキルが求められていることは周知の通りだろう。
(※注 コンピテンシーを国際的、学際的かつ政策指向的に研究するためOECDが組織したプロジェクトの名称)

 ただ、対社会・対人間関係について求める能力は各国で違いが見られ、育成を目指す能力の名称も「キースキル」(英国)、「汎用的能力」(豪州)、「核心力量」(韓国)など様々。日本でも単に世界の潮流の“輸入盤”を作成しても受容されにくい可能性があり、むしろ人間関係を大切にしながら集団で協力して課題を解決する心性といった“日本の強み”を生かすことを、2012年度報告書「社会の変化に対応する資質や能力を育成する教育課程編成の基本原理」[PDF]では提唱している。

「思考力」を中核に三層構造で

 世界的な教育課程改革の潮流と、これまで日本で蓄積されてきた研究開発学校などの成果を踏まえ、求められる資質・能力の枠組みの試案として提案したのが「21世紀型能力」だ。資質・能力を、「思考力」(論理的・批判的思考力、問題発見解決力・創造力、メタ認知)、「基礎力」(言語的リテラシー、数量的リテラシー、情報リテラシー)、「実践力」(自律的活動力、人間関係形成力、社会参画力・持続可能な未来への責任)という三層構造に整理。あくまで中核となるのは基礎力に支えられた思考力であり、思考力の向かう先を実践力がガイドすることで「生きる力」に結実する、と位置づけている。

 2012年度報告書では、(1)社会の変化に対応できる汎用的な資質・能力を教育目標として明確に定義する必要がある、(2)人との関わりの中で課題を解決できる力など、社会の中で生きる力に直結する形で、教育目標を構造化する必要がある、(3)資質・能力の育成は、教科内容の深い学びで支える必要がある――との「原理」を、今後の教育課程編成の共通認識にすべきだとしている。具体的な資質・能力の目標を「〔教科内容の知識〕を〔資質・能力やスキルが〕できる」といった形で定義することや、教科内容と資質・能力を学校段階など発達段階ごとにマトリックスにして示すことも提案した。

 報告はあくまで国研プロジェクトの成果であり、研究期間も残り1年ある。今後の動向が注目される。

渡辺 敦司(わたなべ あつし)

渡辺 敦司(わたなべ あつし)

1964年、北海道生まれ。
1990年、横浜国立大学教育学部を卒業して日本教育新聞社に入社し、編集局記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当。1998年よりフリーとなり、「内外教育」(時事通信社)をはじめとした教育雑誌やWEBサイトを中心に行政から実践まで幅広く取材・執筆している。
ブログ「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」

構成・文:渡辺敦司

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

pagetop