2013.04.09
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土曜日授業、どうなるか?

文部科学省は、公立学校で「学校週6日制」を実施できるようにすることを検討している。3月18日には義家弘介政務官をトップとする省内の検討チームも発足。義家政務官は同21日の参院文部科学委員会で、実施の判断を各教育委員会に任せる方針を明らかにした。土曜日授業は本当に実現するのか。

前「再生会議」の提言を「実行」へ

 昨年末の衆院選に際し、自民党の「教育再生実行本部」(当時の本部長は下村博文・現文部科学相)は11月の中間とりまとめで「教育長の判断で、土曜日に正規の授業を行えるよう」にすべきだと提言。政権公約でも「土曜授業」の実現を掲げていた。これを受けて下村文科相は今年1月15日の記者会見で、「6日制」の授業実現の検討を始める方針を公式に表明した。

 学校週5日制は、1989年に9都県38校を指定した「社会の変化に対応した学校運営等に関する調査研究」での試行以来、慎重に検討が進められ、1992年3月の学校教育法施行規則改正により、同年9月の2学期から月1回(第2土曜日)の休業でスタート。95年4月からは休業日が隔週(第2、第4土曜日)に拡大され、「生きる力とゆとり」を掲げた小・中学校の学習指導要領が本格実施となる2002年4月から毎週土曜日を休業日とする完全学校週5日制に移行するという、長い年月と段階を踏んで実施された経緯がある。

 一方、土曜日授業をめぐっては第1次安倍内閣で設置された「教育再生会議」第2次報告(2007年6月)で、「ゆとり教育見直しの具体策」として授業時数の10%増と併せて、「必要に応じ土曜日の授業も可能にする」ことが提言されていた。これを踏まえて下村文科相は今回、現内閣の下で設置された「教育再生実行会議」に改めて掛ける必要はなく、省内の整理で実現が可能であるとの考えを示している。

実際には各地で先行

 下村文科相が土曜日授業の是非を改めて議論する必要がないと判断した背景には、実際に各地で土曜日授業が広がっていることと、それを世論も支持しているとの判断がある。

 土曜日授業が広がるきっかけとなったのが、東京都教育委員会が2010年1月に出した通知「土曜日における授業の実施に係る留意点について」だった。ここでは区市町村教委や学校の自主的な判断により、月2回を上限に正規の授業を行えることを明確化した。ただし「保護者や地域住民等に開かれた学校づくりを進める観点から」という学校週5日制の趣旨は堅持しており、(1)確かな学力の定着を図る授業の公開、(2)道徳授業地区公開講座やセーフティ教室、(3)保護者や地域住民等をゲストティーチャーに招いての授業――に内容を限っている。土曜日授業の容認に踏み切った他の教委も、おおむね都教委通知を追従しているようだ。

 なぜ土曜日授業が現場で必要とされているのかも、都教委が通知とともに示した留意点の中で説明している。そこでは、「家庭や地域の教育力が必ずしも十分ではない地域等においては、無意識に過ごしたり、生活のリズムを乱したりする子どもへの対応が必要」だとする一方、学校側でも、▽補習等のために多くの教員が土曜日に出勤、▽補習等を土曜日に行う学校が増えてきているが、指導を有する児童・生徒全員を対象とすることが困難、▽長期休業日の短縮を実施する学校も毎年増加、▽新学習指導要領の全面実施に伴い、授業時数が増加し、これまで以上に過密な週時程を余儀なくされ、児童・生徒及び教員の負担が増大、▽週時程がさらに過密となり、教育相談や学校行事のための準備、児童・生徒会活動のための時間の確保が困難――だとして、授業時数が増加する新指導要領の全面実施を控えて「このまま放置しておくことはできず、早急に解決しなければならない課題」だとしていた。

 都内では12年度、年間6回以上の土曜日授業を行う公立小・中学校が4割を超え、2年前の約4倍となった。京都府教委のまとめでも、京都市立を除く府内の公立小・中学校の内、7割以上で「土曜日教育」に取り組んでいるという。

 今春から土曜日授業を実施する横浜市教委が11年度に行った意識調査では、保護者の7割が土曜日授業を実施した方がいいと回答していた。教員は3割近くが実施に反対し、その多くが「子どもや教員にとって負担になるから」を理由に挙げていた。逆に、実施に賛成する教員の9割近くがその理由として「子どもや教員の平日の負担を減らせるから」を挙げていた。

 文科省が正式に土曜日授業に向けた法令改正を行えば、更に実施が広がることは必至だ。どのような形で容認するのかも含めて、今後の成り行きが注目される。

渡辺 敦司(わたなべ あつし)

1964年、北海道生まれ。
1990年、横浜国立大学教育学部を卒業して日本教育新聞社に入社し、編集局記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当。1998年よりフリーとなり、「内外教育」(時事通信社)をはじめとした教育雑誌やWEBサイトを中心に行政から実践まで幅広く取材・執筆している。
ブログ「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」

構成・文:渡辺敦司

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