2013.03.12
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教育再生「実行」の課題

3年ぶりに政権を奪還した第2次安倍晋三内閣の下で、「教育再生実行会議」が発足した。第1次安倍内閣で設置された「教育再生会議」の事実上の復活であるとともに、「実行」の2文字を加えたことで、前内閣でやり残した教育再生の再チャレンジをしたいという思いがにじむ。今後、何を議論しようとしているのか。

教委改革は2014年に法改正へ

 2012年12月に発足した安倍内閣の目下の最優先課題は「経済再生」だが、安倍首相は実行会議の初会合(1月24日)や国会などで「教育再生は経済再生と並ぶ日本国の最重要課題」だと説明している。

 実行会議は、座長の鎌田薫・早稲田大学総長、副座長の佃和夫・三菱重工業会長をはじめ、第1次安倍内閣の時に民間団体「日本教育再生機構」を発足させた八木秀次・高崎経済大学教授、元文部次官の加戸守行・前愛媛県知事、河野達信・全日本教職員連盟(全日教連)委員長、作家の曽野綾子氏ら15人の有識者と、首相、官房長官、文科相をメンバーとする。首相が開催する形態も前「再生会議」と同様だ。

 下村博文文科相は初会合で、当面の審議内容として、(1)いじめ問題への対応、(2)教育委員会の抜本的な見直し、(3)大学の在り方の抜本的な見直し、(4)グローバル化に対応した教育、等について検討を進め、その後、(5)6・3・3・4制の在り方、(6)大学入試の在り方、等についても検討するよう要請した。このうち「(1)いじめ問題への対応」については3回ほどで提言をまとめ、議員立法で今通常国会中の成立を目指す「いじめ防止対策基本法」制定を後押ししたい考えである。「(2)教育委員会の抜本的な見直し」に関しては、2014年の通常国会での教委制度改革法案の成立に結び付けたいとしている。

「実行」策は中教審で

 下村文科相は実行会議の発足に先立つ1月18日、中央教育審議会(中教審)の教育振興基本計画部会に対して、策定作業が大詰めを迎えている第2期教育振興基本計画(2013年度から5年間)に、五つの論点を盛り込むよう要請した。その五つの論点とは、[1]教育行政の在り方について、[2]全国学力・学習状況調査について、[3] 6・3・3・4制の在り方について、[4]高等学校段階での学習の到達度を把握する共通的な調査の仕組み及び大学入試制度の在り方について、[5]公立学校授業料無償制・高等学校等就学支援金制度について、である。つまり、この五日後に開く実行会議の提言を受けて、すぐ中教審で「実行」に向けた審議に入れるよう含みを持たせた格好だ。

 このほか自民党の政権公約では、幼児教育の無償化、教科書検定基準の抜本的な改善と近隣諸国条項の見直し、「教師インターンシップ」の導入などを盛り込んでいる。こうした課題も実行会議の論点になるとみられる。

 安倍内閣は今夏の参院選までは文教行政も含め慎重な政権運営に徹するとの観測が根強いが、安倍首相は実行会議の初会合で「物議を醸すことになったとしても、ご意見を活発にいただきたい」と委員に要請している。いずれの課題も提言が出れば教育現場に大きな影響が及ぶことは必至で、今の所、成り行きを見守るしかない。

渡辺 敦司(わたなべ あつし)

1964年、北海道生まれ。
1990年、横浜国立大学教育学部を卒業して日本教育新聞社に入社し、編集局記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当。1998年よりフリーとなり、「内外教育」(時事通信社)をはじめとした教育雑誌やWEBサイトを中心に行政から実践まで幅広く取材・執筆している。
ブログ「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」

構成・文:渡辺敦司

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