2012.09.11
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いじめ問題への対応 基本ポイントを見直す

いじめ問題が背景にあると思われる生徒の自殺を受けて、文部科学省は官房長を室長とする「子ども安全対策支援室」を設置した。学校や教育委員会の迅速かつ的確な対応をサポートし、総合的ないじめ対策の方針を構築することが当面のねらいだ。これまでも、いじめ対策は講じられてきている。それらをいま一度、振り返ってみよう。

平成18年、大臣からの「お願い」

「いじめは恥ずかしいことであり、ひきょうなこと。いじめで苦しんでいても一人ぼっちではない、いじめられていることを話す勇気をもとう。きっとみんなが助けてくれる」
 これは、2006(平成18)年11月に当時の伊吹文明文部科学大臣が子どもたちへ呼びかけた言葉だ(一部要約。原文を参照)。

 当時、文部科学省にいじめによる自殺予告の手紙が届いたことへの対応だったが、大臣の「お願い」に書かれている通り、いじめに苦しんでいる子どもは「一人ぼっち」であり、その孤独は時に周りには深刻に受け止められず、本人だけが苦しんでいることが多い。教師はその孤独をどう察知し、理解し、いじめ問題にどう対処することができるのかが問われている。

5つの基本ポイント

 学校や教育委員会における「いじめの定義」は以下のようになっている。
「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」とする。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。

 いじめが原因となり、子どもが自らの命を絶つという最も悲しい出来事に至る前、まわりはその兆候をどのようにして見逃さないことが可能なのか。
 いじめが継続的に行われている場合、その構造をしっかりと把握し、時にその根深い問題の原因までも特定し、対処することは一般的に難しいが、「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント」は予防的措置の観点からも、また、いじめ問題が起こっていると考えられてからの対処としても参考になる。冒頭に5つの「いじめ問題に関する基本的認識」が示されている。以下の通りである。

1.「弱いものをいじめることは人間として絶対に許されない」との強い認識を持つこと。
2.いじめられている子どもの立場に立った親身の指導を行うこと。
3.いじめは家庭教育の在り方に大きな関わりを有していること。
4.いじめの問題は、教師の児童生徒観や指導の在り方が問われる問題であること。
5.家庭・学校・地域社会など全ての関係者がそれぞれの役割を果たし、一体となって真剣に取り組むことが必要であること。

 当たり前のことで、「お題目でしかない」と感じられる方もおられるかもしれないが、この5つの基本的認識を順守することは、まずは必須だろう。
 同ポイントでは、基本的認識に続いて、取り組みについても具体的な指針を上げている。その中でも「いじめを許さない学級経営等」「いじめを受けた児童生徒へのケアと弾力的な対応」は参考となる。

警察との連携を図る動きも

 いじめ問題の難しさは、学級内で対処可能なものから、学校をあげて、時には地域も巻き込んで対処をしなくてはいけないものまで、さまざまなタイプがあるというところにある。ただ近年、いじめ問題において課題だと感じるのは、組織的な対応が必要なケースである。

 先述の「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント」においても、「いじめる児童生徒への指導・措置」への項目において、

「いじめる児童生徒に対し出席停止の措置を講じたり、警察等適切な関係機関の協力を求め、厳しい対応策をとることも必要であること。特に、暴行や恐喝など犯罪行為に当たるようないじめを行う児童生徒については、警察との連携が積極的に図られてよいこと」

 とすでに示されている。実際、学校や教育委員会が警察と情報共有を図り、連携を強化する動きも増えてきた。いじめを学校内部の問題と抱え込むのではなく、基本的認識の5つ目にもあるように、周囲が一体となって問題に向きあうことが求められている。

坂本建一郎(さかもと けんいちろう)

時事通信出版局出版事業部次長 編集委員
1971年愛知県春日井市生まれ。北海道札幌市育ち。1997年東京学芸大学大学院教育学研究科修了、教育学修士。大学院修了後、教育専門出版社で主に教育学等の学術書と月刊誌の編集に携わる。2004年に時事通信出版局に移り、2005年2月より2010年3月まで時事通信出版局『教員養成セミナー』編集長。2010年から教員養成および教員採用についての研究を進める(科研費挑戦的萌芽研究 研究協力者)。

構成・文:坂本建一郎

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