2010.09.21
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『〈発達のつまずき〉から読み解く支援アプローチ』

『〈発達のつまずき〉から読み解く支援アプローチ』(川上康則 著、学苑社 刊)~27の徹底的な原因分析、子ども理解、具体的手だて~

『〈発達のつまずき〉から読み解く支援アプローチ』は、学びの場.comの人気コーナー【教育つれづれ日誌】第1~4期の執筆者、東京都立港特別支援学校の川上康則教諭の著書。同コーナーでの記事を加筆修正したものである。

本書を一読して「これはスゴイ!」と思った点は、非常に現実的でわかりやすい書であること。ありがちな抽象的で概念的な教育書とは一線を画す。

目次には、授業中に姿勢が崩れやすい子、音読が苦手な子、授業妨害する子、偏食がある子、キレやすい子……など、まさに“今そこにある危機”の27ケースがズラリ。いずれも教育現場に立つ者にとって喫緊の課題ばかりだ。

そして、これらの原因分析がスゴイ! たとえば「友だちとのトラブルが絶えない子」や「リーダーでいたがる子」には、こんな知られざる要因があったとは……と、ショックで胸をえぐられた。

本文から引用させていただくと、子どもたちの一見、身勝手と思える行動――指示に従わない、ただ突っ立って状況を見ている、どこかへ行ってしまう、かんしゃくを爆発させる……などは、「ボクにはよくわからないので視覚的に示してください」といったサポートを求めるサインだと理解したほうがよい、とのこと。

この原因分析に続き、具体的な指導法や、スキル&トレーニングがしっかり書かれていく。通りいっぺんのマニュアル本とは違い、じっくり取り組むべき対策法となっているので、ここは現場の先生方の腕の見せ所ではないだろうか。

どの解説も難しい専門用語は平易な表現に置き換えられ、まったくのストレスフリー。保護者の方にも読みやすい。対人関係スキルについてなどは、何も教育関係者だけの課題ではなく、一般社会の大人にそのまま活用できるトピックだ。本書によって自分自身を振り返り、周囲の人々への見方、関わり方を見直すこともできる。
実に面白く、有益な書である。

『〈発達のつまずき〉から読み解く支援アプローチ』

川上康則 著
A5判/並製 1575円(税込)
学苑社

文:宝子山真紀

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