2018.10.22
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「授業のユニバーサルデザイン」の3要素①(第2回)

子どもたちを輝かせる「授業のユニバーサルデザイン」の概論
~ユニバーサルデザインへの3つの観点からのアプローチ①~

戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表 笠原 三義

今回は、授業のユニバーサルデザインを支える3つのユニバーサルデザインの要素について、ご紹介します。

授業のユニバーサルデザインを語る際には、大まかに以下の3つの観点からユニバーサルデザインについて考えます。

① 学習環境のユニバーサルデザイン

 ・刺激の調整の観点から、教室内の環境整えること

② 人的環境のユニバーサルデザイン

 ・クラスの仲間づくりの取り組みに関すること

③ 授業のユニバーサルデザイン

 ・全員が楽しく「わかる」「できる」授業にすること

(参考 阿部利彦他(2014)『通常学級のユニバーサルデザインプランZERO』東洋館出版社)

 これらの中で、一般に取り組みが進んでいるのは、①の学習環境のユニバーサルデザインです。

例えば、無意味な前面掲示をやめて、余計な視覚的な刺激を減らしていこうという取り組みは、全国に広がっています。また、自治体によっては机やいすの足にテニスボールをつけ、余計な音(聴覚刺激)を減らしてより集中しやすい環境を整えている学校もあります。

いずれにしても、これらの比較的取り組みやすい「ソフト」な学習環境のユニバーサルデザインは学校や市町村教委単位での取り組みも多く、ユニバーサルデザインだと標榜せずに行われている場合も多いです。

これに対して、学級の中を子どもにとって居心地よくするために、あえて寝ころべるスペースを作ったり、子供がかくれんぼできる場所を作る大掛かりなユニバーサルデザインを行ったりする先生もいらっしゃいます(これを、私は「ハード」な学習環境のユニバーサルデザインと呼んでいます。)。
この場合は、平行学年間での取り組みへの理解などが必要になってきますが、まさにそのクラスや子どもに合った魅力的なオーダーメイドの教室空間を作ることができます。

私の場合は、ソフトな学習環境のユニバーサルデザインについては、学校ぐるみの取り組みとして行っています。主に掲示物の配置について、場所や種類を決めて行っています。
その一方、ハードな学習環境のユニバーサルデザインは、教室の子どもの人数や学年の状況に合わせて行っています。
以前にオランダの日本人学校へ勤務した際には、単級、1学年5人のクラス規模を活かして子供たちと相談して教室の後ろにロッカーを使って寝ころべるスペースを作ってみた時もありました。休み時間やお弁当の時間にとどまらず、国語の授業もそのスペースで行いました。子どもたちはとても気に入って、自分たちで屋根を作り始めて教室の中にもう一つの教室があるような状態になったこともありました。

担任する学級の規模や、状況に応じて子供にあった学習環境を作ることは、授業のユニバーサルデザインの初めの一歩です。

皆さんの周りでも、学習環境のユニバーサルデザインが少しずつ広がっているのではないでしょうか?

さて、次回は、②の人的環境のユニバーサルデザインについてご紹介します。

笠原 三義(かさはら みつよし)

戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表・同学会 国語部会事務局・日本学級経営学会 会員
埼玉県の公立小学校・在外教育施設派遣(オランダ・ロッテルダム)を経て現職。
UDの視点から主に授業づくり(国語を中心に)・学級と学年経営について研究・発表・講演をしています。
クラスに起こる「あるある」を活かす「普段着のUD」を一緒に考えていきましょう。

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