2019年度に子どもの体力が低下した要因
昨年末、2019年度の体力テストの結果が公表されました。今年度は著しい低下を示しましたが、ゼミの研究で取り上げ、もう少し経年的に捉えてみました。新型コロナウィルスの影響により教育活動発表会が中止となってしまったため、そこでゼミ生たちと発表するはずだった一部を報告したいと思います。
旭川大学短期大学部 准教授 赤堀 達也
昨年末に、今年度の体力テストの驚きの結果が公表されました。私達教員は、その結果をどのように捉え、取り組んでいったらいいのでしょうか。
昨年12月23日、スポーツ庁から今年度の小学校5年生男女・中学2年生男女の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(体力テスト)の結果が公表されました。それによると、これまで男子は横ばい傾向、女子は上昇傾向で推移していましたが、いずれも前年度を大幅に下回る結果が出てしまいました。特に男子は小学校5年生で過去最低、中学校2年生は過去5年間で最低となってしまっています。
スポーツ庁の分析としては…
- 授業以外の運動時間が減少したこと
- スマートフォンなどの使用時間が増加したこと
- 小・中学生男女ともに肥満児の割合が増加したこと などをあげています。
しかし、いずれの理由も昨年度から大幅に変化したのかと考えてみると、私達はそれは考えにくいように思っています。そのため、私とゼミ生で考えた要因を次にあげてみました。
子どもの体力の推移は2008年頃が最低を記録し、その後は前述したように男子は横ばい傾向で、女子上昇傾向で推移しています。その2008年頃の子どもたちが10年経ち、教職の現場に立ち始めています。私はこれが要因ではないかと思っています(参考資料として、新型コロナウィルスの影響で中止になってしまった大学の教育活動発表会に向けて学生が制作した物を掲載します)。
子どもの体力と運動量に関係があることはスポーツ庁の調査によりはっきりしています。そのため、この時期に子ども時代を過ごしていた方は運動量に関する感覚が少し異なるようです。特に現場に出る直前の学生たちを毎日目の当たりにしているため強く感じています。
そのうえ採用者数は上がってきているため、そのような若手が増えてきているのではないでしょうか。そのような教員の場合、子どもの頃から運動量が少ない暮らしをしてきているため、「運動量が少ない」ということに気づけずにいる場合が多いです。より意識的に子どもたちを運動に誘うようにしたり、また異なる年代の教員がアプローチしたりするなど、運動量を増やす取り組みをしていかないと、今後も更に子どもの体力に影響を及ぼしてしまうと懸念しています。
今年度の結果はかなり大幅に落ち込んでいます。思い切った行動が必要になるかと思います。しかし、新型コロナウィルスにより一斉休校の措置がなされており、まだまだ増える感染者や対策が見えてこない状況を見ると、長期化することが予想されます。新年度、行えない可能性もあり、行えたとしても落ち込んでしまうことが予想されます。そしてそれを言い訳としてしまうと、2年後には更なる追い打ちをくらってしまうことになるかもしれません。この休校期間中、いろいろと考えなくてはいけないことが多いかもしれませんが、そのあたりの対策も考えてみる必要があるかもしれません。
赤堀 達也(あかほり たつや)
旭川大学短期大学部 准教授・元パーソナルストレッチトレーナー・バスケットボールコーチ
幼児体育指導、小学校のスポーツ少年団指導、中学校の部活動指導、高校の体育指導、大学の体育指導及び部活動指導と、全年代の子どものスポーツ及び体育指導の経験を生かし、子どもの運動能力の向上を図る研究を行う。
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