2020.11.25
体育におけるケガの出にくい授業展開を考える
体育の授業において、ケガを出さないことは大切です。そうなると、できることしかできることしかできず伸ばすことができないと考えていないですか?実はやり方次第でそれは可能となります。コーディネーショントレーニングの考え方を応用した一例をご紹介します。
旭川大学短期大学部 准教授 赤堀 達也
はじめに
新型コロナウイルス感染症が流行り、休校期間が明けた際に、学校現場におけるケガの増加が話題となりました。また体育の授業での組体操におけるケガなども問題として提起されることが多いです。私たち体育を担当する教員はケガに対して、どのように考えて授業を展開していったら良いのでしょうか?
現在の子どもと昔の子どもの違い
まず現在の子どもと私たちの子ども時代と異なる点について、次の2点をしっかりと認識する必要があります。
<1点目>
体育教員は通常、体育が得意な人がなる傾向にあります。しかし子どもたちは体育が好きでも苦手なことが多いです。そこに大きな隔たりがあります。
<2点目>
昔のような運動遊びをしてきていない子どもたちの運動感覚と、私たち世代の運動感覚にも大きな隔たりがあります。また全くそのレベルにないのに運動経験が少ないためにできると勘違いしてケガをしてしまうことも多いです。
これら2点に大きな隔たりがあるため、私達が思うレベルで進めてしまうと、間違いなく高い確率でケガにつながることになります。そこで私が大切にしている考え方は「スモールステップ」ではなく「緩やかな坂道」から入ることです。
<1点目>
体育教員は通常、体育が得意な人がなる傾向にあります。しかし子どもたちは体育が好きでも苦手なことが多いです。そこに大きな隔たりがあります。
<2点目>
昔のような運動遊びをしてきていない子どもたちの運動感覚と、私たち世代の運動感覚にも大きな隔たりがあります。また全くそのレベルにないのに運動経験が少ないためにできると勘違いしてケガをしてしまうことも多いです。
これら2点に大きな隔たりがあるため、私達が思うレベルで進めてしまうと、間違いなく高い確率でケガにつながることになります。そこで私が大切にしている考え方は「スモールステップ」ではなく「緩やかな坂道」から入ることです。
「スモールステップ」と「緩やかな坂道」
スモールステップでは、できないことのハードルを低くしてできるようにしていくイメージだと思います。これはとても大切な考え方です。しかし「緩やかな坂道」ではそうではなく、同じことではなく、様々なできることを繰り返し、いつのまにか次のレベルに上がっているというイメージです。緩やかな坂道からスモールステップへと授業を展開していくといいです。
例えば補助なし倒立をできるようにしたいとします。補助付きで倒立を練習したり壁倒立をしたりすると思います。しかしそれだけではなく、他にもお腹が壁になる壁倒立をしたり、壁を利用した手押し車の体勢から横に歩かせたり、壁倒立をして側転方向に足を下させたり、壁倒立から横に歩かせたり、壁倒立から向きを変えさせたり、補助倒立で同じようなことをさせたりするなど、いろいろな倒立をさせ、倒立遊びの中で様々な感覚を育てていくといいです。そして、しばらくして慣れてきたら補助なし倒立に入っていくといいでしょう。それを自分たちで考えさせるようにしていくとアクティブ・ラーニングにもつながってきます。
運動遊びが少ない子どもは、あらゆる面で感覚神経や運動神経が未発達であることが多いです。運動神経がいい子どもでも、ある部分だけ特化していいということが多いです。そのため、様々な動きをさせていく中で全体的な神経の発達を促すように導いていくといいです。
本人は気づいていないできることを繰り返しているため、ケガはほとんどありません。またできることを、形を変えて行っているのでモチベーションは落ちず、むしろ楽しむことができます。
この考え方はコーディネーショントレーニングの考え方にも通じており、たとえ結果的にできるようにならなくても確実に神経系統を伸ばすことができます。
例えば補助なし倒立をできるようにしたいとします。補助付きで倒立を練習したり壁倒立をしたりすると思います。しかしそれだけではなく、他にもお腹が壁になる壁倒立をしたり、壁を利用した手押し車の体勢から横に歩かせたり、壁倒立をして側転方向に足を下させたり、壁倒立から横に歩かせたり、壁倒立から向きを変えさせたり、補助倒立で同じようなことをさせたりするなど、いろいろな倒立をさせ、倒立遊びの中で様々な感覚を育てていくといいです。そして、しばらくして慣れてきたら補助なし倒立に入っていくといいでしょう。それを自分たちで考えさせるようにしていくとアクティブ・ラーニングにもつながってきます。
運動遊びが少ない子どもは、あらゆる面で感覚神経や運動神経が未発達であることが多いです。運動神経がいい子どもでも、ある部分だけ特化していいということが多いです。そのため、様々な動きをさせていく中で全体的な神経の発達を促すように導いていくといいです。
本人は気づいていないできることを繰り返しているため、ケガはほとんどありません。またできることを、形を変えて行っているのでモチベーションは落ちず、むしろ楽しむことができます。
この考え方はコーディネーショントレーニングの考え方にも通じており、たとえ結果的にできるようにならなくても確実に神経系統を伸ばすことができます。
最後に
教育現場において、安心安全に行われることが私たち教員の責務です。しかし体育においては、器械体操のように危険のあるものを行っていく必要もあるため、完全にケガをなくすことはできないかもしれません。しかし限りなく少なくすることはできます。このような考え方でやってみてはいかがでしょうか。
赤堀 達也(あかほり たつや)
旭川大学短期大学部 准教授・元パーソナルストレッチトレーナー・バスケットボールコーチ
幼児体育指導、小学校のスポーツ少年団指導、中学校の部活動指導、高校の体育指導、大学の体育指導及び部活動指導と、全年代の子どものスポーツ及び体育指導の経験を生かし、子どもの運動能力の向上を図る研究を行う。
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