2008.02.18
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ストロークを大切にした体育授業

さいたま市立海老沼小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

 「やったー、上手にできたね!」「すごいよ、もっとできるよ!」
私は体育授業の中でできるだけ児童に声をかけるようにしています。この声かけのことを「ストローク」というそうです。「ストローク」とは心理学用語で自分の感情を相手に伝えることで、そこには肯定的なものから否定的なもの、また言語によるものから非言語によるものなどさまざまなものがあります。私が尊敬しているカリスマ体育教師・原田隆史先生はこのストロークで「心に栄養を与える」と仰っています。

 日々の実践の中でも特に、体育授業の中では必ず1時間の中で1回は全員の児童にストロークを与えるようにします。まずは、授業開始直後の慣れの運動を行う際に、児童の中を回りながら声をかけます。そして、授業のメインの活動に入った時にはその時間で重点的に見てあげたい児童に集中的に声をかけます。例えば、前の時間で少し自信をなくしてしまった児童や、もう少しがんばれば技ができるようになりそうな児童などに声をかけるようにします。声をかけやすくするために事前に学習カードなどを見て重点的に声かけをする児童をピックアップしておきます。そうすることによって児童理解も深まります。

 ストロークを全員の児童に与えようと思ったきっかけは、前任校で担任をした1年生の女の子からもらった手紙でした。前任校ではじめて受け持った1年生。クラスの児童数は39人となかなか大変でした。クラスには元気な男の子がたくさんいたり、お母さんと離れたくなくて毎朝泣いてしまう子がいて、対応に手間取っていました。そんなクラスともお別れをして次の学校に異動することになったとき、クラスのTさんからこんな手紙をもらいました。
 
「先生、わたしは先生に一どもおこられたことがないんだよ。だからつぎの学校へいってもやさしい先生でいてください。」
 
この手紙をもらったときに、この子はもしかしたらもっとわたしに関わってもらいたかったのかもしれないと思いました。初めての1年生担任で分からないことだらけだった自分は、手がかかる子ばかり気にしてしまっていたような気がしました。このお手紙をきっかけに、もっとクラスの子全員を見ていかなければならないという思いを強くしました。

 体育では児童が一生懸命に体を動かすので、声をかけてよいところをほめてあげやすい教科であると思います。これからも毎時間のストロークを大切にしていきたいと思います。

 Tさんからお手紙と一緒にヘアバンドをもらいました。担任をしていたときに汗をかくとヘアバンドをしていたので、新しいものをプレゼントしてもらいました。そのヘアバンドは今でも大切に使っています。(写真はTさんからもらったヘアバンドと手紙です。)
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菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立海老沼小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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