2014.02.10
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1.17から3.11へ 防災学習「クロスロード」の取組

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV) 関田 聖和

 

 阪神淡路大震災から19年が経ちました。

わたしも,被災者です。そして,今では,語り部となります。

当時の話は,メルマガで少し発信しました。まだ話したくないのですが,

先輩の先生と話し,伝えなくてはいけないということを強く感じました。

話すことは,難しいのですが,文章ならできると思い,発信しました。

 今年度,子どもたちと取り組んだのは,

「大地震が起こっていない今,考えておくこと」

です。それは,防災学習ゲーム「クロスロード」です。


 

阪神淡路大震災がきっかけ

 「クロスロード」とは,いわゆる「分かれ道」のことです。

ひとつの課題に対して,「Yes」と「No」の2つの選択肢を示します。
 


この防災学習ゲーム「クロスロード」の素材は,1995年の阪神淡路大震災の際,

神戸市の職員が実際に迫られた難しい判断状況をもとに作成されています。

 ゲームに正解はありません。起こりうる様々なことを考え,違った意見の人と話し合う中で,

「より良い判断ができるように,備えをすること」

がねらいです。

 わたし自身もあの時には,即決即断が求められました。

そしてその決断が良かったのか悪かったのか……。

今もなお,あの選択は,間違っていたのではないかと,

胸が締め付けられるように苦しくなることがあります。

 そうならないためにも,平穏なときに震災時を想定して考えておくことは,

大切なことだと考えています。これは,経験から強く感じることです。

 

 

22対6

 京都大学の生協に販売されているようですが,その神戸編・一般編では,

小学生向けにはなっていないので,

Eテレ「シンサイミライ学校」
(「シンサイミライ学校|NHK そなえる 防災 - NHKオンライン」で検索してください)

を参考にし,問題を改編しました。


 子どもたちには,次の課題を出しました。

 大地震が起こりました。今,あなたは,学校にいます。

みんなで避難することになりました。

しかし,友だちがいません。あなたは,どうしますか。

Yes …… 助けにいく

No  …… とにかく避難する



 子どもたちの意見は,22対6で,Yesが多かったのです。

「友だちがいないとさみしい。」

「1人でも多く,助かりたい。」

「もし自分が死んでしまったら,友だちは助けられない。」

「おさない,走らない,しやべらない,戻らないだから,まず,自分が逃げないと……」

子どもたちは,促さなくても,次々と話し始めました。正解はありませんから,迷いに迷います。

 

ほんまに地震が来たら,こんなん考えられへん

「ほんまに,地震が来たら,こんなん考えられへん。」

と,ある男の子が学習中に話しました。本当にそうなのです。

 あの阪神淡路大震災での私の行動。

今から思えば,ああすれば良かったと思うことがたくさんあります。

もしかすると,助けられた命がもっとあったかも知れません。

幸いあの日,親しい知人とクラスの子どもたち全員の無事を確認しました。

 直接顔を見て,喜び合ったこと。

「全員無事です。○○に避難しています。」との伝言メモに安堵しました。

最後は,元気な男の子。真っ暗な中,地域の公共施設に避難していました。

「先生!」

と言われた一言,まだ,耳に残っています。今その子どもは,プロのカメラマンとして,大活躍しています。

 3.11の東日本大震災もそうです。

震災が起こった半年後に,福島県小名浜市,南相馬市にボランティアに行きました。

 道や建物の様子などは,阪神淡路大震災と変わりません。もちろん,津波と原発の問題が加わっているだけに,

被害の大きさを肌で感じました。

 でも一番驚いたのは,半年も経っているのに,電気が通っていない地域があったことでした。

そして,ボランティアセンターの方に,

「神戸から来てくれたんだったら,これも見ておいてほしい。」

と,沿岸部付近や仮設住宅を見に連れて行っていただきました。

 阪神淡路大震災と比べることはできませんが,津波から逃げる様子が目に浮かぶような,

そのままの姿が,残っていました。

 そのときの即決即断の判断。

たくさんのエピソードを聞かせていただきました。

1.17 から 3.11へ。

防災学習は,

時を選ばず,常に大切

だと考えています。

 

 

起こる前に指導する・考える

 大震災については,起こってから考えては遅いでしょう。だから,避難・防災訓練があるのです。

起こる前に指導し,考えさせること……。

 何だか,いじめの指導と似ていますね。

いじめも,

起こってからの指導では遅い!

のです。だから,いじめが起きていないときに指導を入れます。

 

  さて,このクロスロードは,たくさんのバージョンがあります。

参考になる著書も販売されています。WEBサイトにもいくつかあります。

 高学年の防災学習の取組の一つとして,いかがでしょうか。

 未来を見据えた防災学習。

たくさんの取組みの中の一つを紹介させていただきました。

 

関田 聖和(せきだ きよかず)

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
主な単著:『楽しく学んで国語力アップ!「楽習」授業ネタ&ツール』(明治図書)、『新学期から取り組もう!専手必笑 気になる子への60の手立て』(喜楽研)、『専手必笑!インクルーシブ教育の基礎・基本と学級づくり・授業づくり』(黎明書房)、国語・算数が苦手な子どもへの個別支援プリントシリーズ(全10冊:清風堂)
その他、特別支援教育すきまスキル(明治図書)等共著多数。

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