2020.05.22
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【授業UD】視覚化・刺激量の調整・場の構造化はこんなものもあります。

これまでの記事では以下のことをお伝えいたしました。

まずはこの3つから!教室環境UD」スタートアップが1学期を方向づける!
次はこの3つ!「ノートを構造化してもっと使いやすくしよう」

実践された皆様はいかがだったでしょうか。休業中で通常とは異なる授業体制もあり、なかなか実感とまではいかないかもしれませんが、教室内UDの一歩を踏み出したことに は間違いないです。

今回はそんな、教室内UDにおいて、視覚化・刺激量の調整・場の構造化について事例を挙げて触れます。

長野県大町市立大町南小学校講師・長野県池田町教育支援講師(高瀬中学校学習相談室)・授業ユニバーサルデザイン学会正会員・長野県GIGAスクールサポーター 清水 智

1.「国語」教科書の付録を使おう【視覚化】

廊下側上部に掲示。白抜きの字にすることで目に優しい。

各学年の国語の教科書の多くは、巻末付録として言語に関するページが掲載されています。その学年で習得すべき単語や用法など、このページを抑えることで言語力向上のヒントにつながるかもしれません。

2020年(新元号2年)度版光村の「国語」完全活用ガイド 語彙力を高める「言葉の宝箱」

光村図書では、2年生以上の各巻巻末に「言葉の宝箱」を設け、思考や表現の助けとなるよう、その学年に応じた語彙を 「考えや気持ちを伝える言葉」として提示するとともに、国語の学習で用いる大切な言葉を 「学習に用いる言葉」として整理しています。

これを使わない手はないです。私はこのページを見つけたときの感動を今でもはっきりと覚えています。教科書で使用する言葉が一覧で掲載されていて、何よりも非常に見やすい。なぜ、これまで気付かなかったのだろう……

巻末にあるということで見落とされがちですが、常設物として年間を通して掲示・手に取りやすくすることで、他教科・領域でも利用しやすくなります。 ただし、重要であるからといって教室前方に目立つように掲示するのでは刺激が強すぎます。お勧めは、子供たちが学びの時間中にさりげなく見える、または手に取れる状態にしておくことです。掲示物が風景ではなく日常のツールとして成立していきます。

2.その色は本当に見やすいですか【刺激量の調整】

ホワイトボード等に貼り付けて使用するタイプ。ラミネート加工してあります。

カラープリンターが普及してきたこともあり、カラー印刷したものを掲示物として使用している場面も多くなってきました。または、手書きであったとしてもカラーペンを活用しているのはこれまでも多くありました。

私は好きな色合いだけで掲示物を作っていた時期がありました。つまり、自分好みの色合いだけで構成された掲示物、もしくは手抜きの掲示物ということです。

果たして、その色は本当に見やすい色でしょうか?その色は本当に目立っていますか?

色弱者(CUDO:NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構による提唱)は、日本では男性で20人に1人。女性では500人に1人。日本全体では300万人以上いるとされています。

参照:川崎市「公文書作成におけるカラーユニバーサルデザイン・ガイドラインの策定について」


200人規模の学校で男女同数と仮定すると、5人くらいの色弱の子供がいることになります。カラーでの出力が一般化しつつある昨今だからこそ、ユニバーサルデザインの考え方で色に意味を持たせる効果は大きいと考えられます

私のお勧めの配色は「青と黄色」「青と白」。この色の組み合わせは、一般色覚者・色弱者関わらず、非常に見やすい配色となっています。特に青と白は、黒板との相性も良く、マグネットタイプの掲示物でも利用をお勧めします。

3.テープで区切る【場の構造化】

NIEに取り組んだR1小谷小学校。1週間分の新聞を常設。

1本のテープ。これだけで、物の位置がある程度きまることで整理しやすくなったり、掲示物同士の区切りがつくことで見やすくなったりします。このテープの構造化が習慣になってくると、 板書も変わってきます。

限られた黒板スペースや時間という条件の中で、どこに何を書くか、どの色のチョークを使うかなど授業自体を構造化するようになると単元全体の計画(プランニング)も構造的に考えやすくなってきます。つまり、思考の仕方が変わってきます。授業全体のUD化にもつながってくるのです。

4.結果的にはインクルーシブな授業経営へ

ここまでは、教室環境という実際の授業の前段階的な情報でした。この学習環境があってこそ、本来の授業が効果的なものとなります。授業におけるUDでは、今回のような学習環境だけでは当然不十分で、ここに人的環境というUDも入ってきます。

環境のUD、そして人的のUD。その両者がいい具合に重なり合うことで自然と授業のUD化が進み、結果的には発達の特性を有する児童生徒にとっては なくては困る、その他の周囲の生徒にとっては あると便利な支援に近づいていくと思われます。
関連情報

◇ 2020年(新元号2年)度版 光村の「国語」完全活用ガイド 語彙力を高める 「言葉の宝箱」
https://www.mitsumura-tosho.co.jp/2020s_kyokasho/download/kokugo/2020k_guide_03.pdf

◇ 川崎市「公文書作成におけるカラーユニバーサルデザイン・ガイドラインの策定について」 http://www.city.kawasaki.jp/shisei/category/50-3-4-0-0-0-0-0-0-0.html

清水 智(しみず さとし)

長野県大町市立大町南小学校講師・長野県池田町教育支援講師(高瀬中学校学習相談室)・授業ユニバーサルデザイン学会正会員・長野県GIGAスクールサポーター 


元東京都小学校主幹教諭

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