2005.08.28
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現役教頭の研修報告(vol.2) 「「ネットデイサミットin柏」を取材する!

企業研修の7日目、「学びの場.com」特派員としての2回目のレポートの機会が巡ってきた。 8月2日(火)から3日(水)にかけて、第3回「ネットデイサミットin柏」が 廣池学園 麗澤大学(千葉県柏市)において開催された。小中高等学校、大学、教育委員会など教育関係者ら約70名が参加した。


展示ブース前で談笑する参加者たち

 

 


 

 岐阜、岩手のサテライト会場をスクリーンに呼び出しながら進行

■ネットデイ とは

 ネットデイは、1996年に校内LAN敷設とネット接続を一気に行うことを目的に米国から世界に広まった運動である。文部省が推進している学校の情報化は、2005年度終了までを目標に進められているが、実際には、その予算を確保できない自治体がほとんどである。ならば、ということで、地域、保護者らによるボランティアグループが、学校に入り込み、一気に学校LANを引いてしまおう、という運動である。これにより非常に廉価に、しかも迅速に学校の情報化が実現するほか、ボランティアコミュニティが学校と地域社会の架け橋を努め、子どもたちを含めた人と人とのかかわりにより学校が開かれた教育の場に変わっていくことも大きなメリットとなっている。その運動は少しづつだが、確実に広がりつつある。

 ネットデイサミットは、有志によって地域ごとに行われている「ネットデイ」について互いに現状を整理し、より活動を広めるために、今後このような活動を行おうとする地域への技術移転、情報交換を行うことを目的に開催されてきた。

 第1回が1999年に群馬(前橋)で、第2回のサミットが2001年に愛知(豊橋)で開催され、今回の「ネットデイin柏」は第3回目になる。
 小中高等学校のネットワーク整備は地方自治体の努力もあり、かなり改善された。その結果、ボランティア主催のネットデイ活動が自治体を中心としたものへと移行していくとも考えられていた。しかし、校内ネットワーク整備が著しく遅れている地域も多く(特に大都市部)、また、地方財政の厳しさから、依然としてボランティアの手によるネットワーク整備への期待は大きい。

 先行地域のネットデイ的な活動は継続していて、単なるネットワーク構築活動を超えて教育現場の情報システムの維持・支援活動に変容しつつある。中には、半業者的な扱いを受けながらも活動を続けてくれる団体もあるという。

 さて、ここからは、プログラムに沿って「ネットデイin柏」の内容を簡単に紹介しよう。

 

 

 

 

 

 

円卓会議にふさわしい落ち着いた会場

 

 

 

 

 

 

 

暗くて、写真がブレました。すいません

■基調講演「e-Japan戦略と教育のIT化」
(内閣官房 IT担当室 内閣参事官 安藤 英作 氏)

 IT基本法に基づき、2005年までに世界最先端のIT国家となる「e-Japan戦略」の国家目標が開始された。その後、現在のIT政策加速パッケージ-2005まで推進されてきた。公立学校の校内LAN整備、情報モラル教育、IT人材の育成を中心に政策を進めた。結果で見ると、校内LANの整備については、大都市部を中心に達成率が半分にも満たないことが判明した。しかし、地域差が大きいので、いっそうの理解を得るようにする。  
   
■3地域をTV会議でつなぐ円卓会議
 
 さすが、ネットによるサミットはお手の物で、ここ柏会場以外にも、岐阜会場と岩手会場をTV会議システムで結び、会議を行った。
 ネットデイ活動を推進してきたり、これから始めようという23名(3会場)による会議。主な論点を、ネットデイ実施までのアプローチ方法、学校とボランティアと地域と行政の役割分担、実施後の校内LANの運用とサポート、ネットデイの将来像に定めて議論が行われた。

 本当に学校はネットデイの実施でよりよくなるのか。校内LANはうまく機能し続けるのか。いろいろな面で地域差が大きくて、かえって有意義な情報交換が出来たのかもしれない。せっかく配線が出来ても、コンピュータがそろわない地域もあると聞いてびっくり。自分の地域は恵まれていることを再確認した。やれやれ!

■特別講演「地域と学校をつなぐ新しい関係づくり」
(文部科学省 生涯学習政策局 学習情報政策担当参事官 小川 壮 氏)

 政府の「e-Japan戦略」に基づき、教育のIT化に積極的に取り組んでいるそうだ。現在の「IT政策加速パッケージ-2005」では、ネットデイに対する支援について、特例の記述がなされている。教育の情報化の重要性が改めて認識された。具体的な調査結果をもとに数字をあげての説明だった。要は、ネットデイ運動などのボランティア活動を含め、今後いっそうの努力で、校内LAN整備を進め、子供たちにITへの理解を深めてもらうようにする。  

■共同宣言
(ネットデイサミットin柏 実行委員会)

(1)行政や自治体の思惑に振り回されることなく、『校内ネットワークを引きたい学校が引けるため』のネットデイを展開すべきである。そのためには、教育委員会を中心とした行政・地方自治体、地域社会、学校・保護者、ボランティアの役割とは何かを再確認し、子供たちの情報教育環境整備のために、真に必要なことが何であるかを十分考えてネットデイを実施すべきである。

(2)各地のネットデイボランティアは地域の違いを尊重し、必要な情報の共有と交換を実現し。よりよい校内ネットワークの整備にむけた努力をしていくことが必要である。
 
以上の2点が宣言として採択された。

2日午前には、KIU(柏インターネットユニオン)インターネット教育研究フォーラムも開催された。あわせてレポートしたい。4点の研究事例発表と以下の招待講演が行われた。

■招待講演 「教育の情報化と日本の教育 」 
(教育情報化推進協議会 大久保    昇    氏)

 2005年度末をゴールとした、日本を世界最強のインターネット国家にするための「e-Japan戦略」、その学校分野での数値目標の達成がなかなか難しい見通しとなった現在、世界の教育の情報化の状況と比較しながら、財源・地域格差・学力向上を中心とする我が国の現状を検討し、米国の7つのプラン等、課題解決の方策を探る講演がされた。

 大久保氏の講演を聞いて、このところの日本の教育行政に危機感を持った。韓国や中国の力の入れようと比較すると、日本のお役所にはあまりやる気がないようにみえる。ブロードバンド化も学校の入口までは何とかなりそうだが、教室までがなかなかつながらない。地域差がありすぎるようだ。金がいることにはこの頃特に厳しく、教育システムを地方自治体の会計システムに無理にあわせようとする柔軟さを欠いた発想がここでも顔を出していると思う。韓国や中国だって日本より厳しいはずなのにこの違いは何だ。教育成果はもっとも効果が測りにくいと思う。だから、目先の効果のみでなく、もっと大きな視点で将来のために予算を使うことが出来ないのかなあ。2005年以降の世界の情報化の進展に、日本はその地位を取り戻していけるのか本当に心配になった。資源のない国日本は、情報化をはじめとして日本経済を支えるキーポイントをマクロに戦略構想し、政策に反映させないと日本の明日は暗いと感じた。

 

(竹内 宣友)

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