2005.09.13
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「できる」教師を目指して「学ぶ」! 2005両毛教育祭

8月20,21日、群馬県太田市で行われた「でき学セミナー」の様子をご紹介します!

 


会場となった太田市民会館

 「でき学セミナー」という現役教師たちの運動をご存知だろうか。

「“できる”教師をめざして“学び”続ける教師を応援するために、各方面の超一流の講師を招き、教師を元気づけ、教師の力量を高め、教育のさらなる活性化を図る」

という目的で、2002年の奈良大会を皮切りに、毎年一回、熊本、栃木、山口、北海道、宮崎で、セミナーを開催してきた。これまでゲストになった方々は、灰谷健次郎、松谷みよ子、あまんきみこらの著名人や、岸本裕史先生、野口芳宏先生ら授業名人として知られる先生方など豪華な顔ぶれ。第7回目となる今年は、群馬県太田市の市民会館の大ホールにて、8月20日~21日の二日間にわたり、セミナーが開催された。

 以下、各先生の講演内容を簡単に紹介しよう。


 


大ホールを埋めつくす参加者たち


坪田 耕三先生

●子どもの「なぜ」に寄り添う授業~坪田 耕三先生

 坪田先生は、全国算数授業研究会会長、ハンズ・オン・マス研究会代表、も務められる、算数の授業の第一人者である。

 「子どもたちが自力で育つように、根元に水や養分を与えるのが教師の仕事」と坪田先生。自力で育つためには、子どもたちが「なぜ」と気づき、その「なぜ」を子どもたち自らが考え答えをみつける力をつけてやらなければならない。教師は、子どもの「なぜ」に寄り添って、子どもたちが答えを見つけるのを手助けしてあげるのである。

 考えてみれば、公式など、ふだん何げなく教えているが、改めて「なぜ」と聞かれると答えられないことってたくさんある。そんな時、子どもの「なぜ」を聞き流さず、きちんと解説する方法の一例を披露してくれた。また、単純なドリルの学習でも、クイズにする、ゲームにするなどの工夫次第で面白くできる、ちょっとしたアイデアを公開してくれた。たとえば、コンパスで同心円をうまく描けない子どもがいたら、「上手にいっぱい描けたら紙を回してごらん、目が回るよ」と声をかける。すると、みんな夢中になって難なくたくさんの同心円を描いて見せてくれる。坪田先生は、こんな「子どもを夢中にさせるツボ」をいっぱい持っている。詳しく知りたい方は坪田先生の著書などをご参考に。
http://www.geocities.jp/dekigaku/kousi/tubota.htm

 



久埜 百合 先生
●子どもが楽しく参加できる小学校英語~久埜 百合 先生

 教科化も検討されている小学校の英語。総合学習などの一環ですでに実施している小学校も少なくない。しかし「間違ったやり方でやるなら、やらないほうがいい」と久埜先生。

 どこの学校に行っても、AETの先生が大きなアクションと大声で「Hello evryone!」と叫んでいるけれど、常に叫んでいるコミュニケーションはありえない。また、同じ単語を大声で何回も繰り返させる学習は本当に身につくのか、リンゴや車、といった単体のピクチャーカードより、いろいろなものが描かれたシーンの絵のほうが、単語同士の関連もわかり、単語を覚えられるのではないか、など現状の小学校英語に対するアンチテーゼを投げかける。

 また、NHKの英語教育番組「えいごリアン2000~2001」の制作企画委員も務めた経験がある久埜先生ならではのゲームや歌、絵本など、子どもの心に働きかけるアクティビティを、紹介してくれた。
http://www.geocities.jp/dekigaku/kousi/kuno.htm

 


金森 俊朗 先生
 
●いのちの授業~金森 俊朗 先生

 金森先生は、1980年代より「仲間とつながりハッピーになる」という教育思想をかかげ、1989年、妊娠七カ月のお母さんを招いた「性の授業」を皮切りに、本格的に「いのちの教育」を開始。今では金森先生と言えば「いのちの授業」というほど知られている。

 金森学級の一年を追ったNHKスペシャル「涙と笑いのハッピークラス 四年一組命の授業」が、2003年第三十回日本賞グランプリを受賞、2004年、第25回バンフテレビ祭「グローバルテレビジョン・グランドプライズ」を受賞。
 『性の授業 死の授業』、『いのちの教科書』、『希望の教室』などの書籍も好評である。

  今回は、子どもに希望を育み、しかも連続性や物語性に富んだ学びの創造を、模擬授業形式で参加者と共に考えた。戦前砂漠化してしまった襟裳の漁業衰退と、緑化による復活や気仙沼の海の民、山の民、平野の民が協力して、植樹を行い海の幸を豊かに育む「森は海の恋人」を題材に、教材の創造を強調した。 


陰山 英男 先生
●解決!学力低下問題~陰山 英男 先生

 100マス計算でも知られる陰山先生は、昨今のマスコミによる学力低下論争の間違いを指摘し、本当の学力低下の原因は、1985年ごろからの中学受験熱に端を発した過度の競争、また社会の夜型化による子どもたちの睡眠不足、ゲーム、TV浸り、食の荒れなどであると主張。山口小学校や土堂小学校での自らの実践を根拠に、地域、家庭、学校が一体となった学力向上策を説く。

 「学力向上策を約束したなら、1年でやりなさい。改革はスピードが命。みんなが期待しているうちに結果を出すべきです」  

すでに実績のある陰山先生の発言だけに説得力がある。


横山 験也 先生

 教師の指導力不足、学力低下が問題となっている昨今だが、授業名人たちの授業は、45分があっという間。すべての子どもたちが、今回見せていただいたような授業名人の授業を受けることができたなら、学級崩壊も、学力低下も起こらないのではないだろうか。こうした授業の実践はぜひ全国に広めて欲しいと痛感した。

◆でき学セミナー公式ホームページ
http://www.geocities.jp/dekigaku/

(取材・文:学びの場.com 高篠栄子)

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