2020.04.01
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外国人の生徒、どうサポートする?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「外国人の生徒、どうサポートする?」です。日本の学校に入学する外国人の児童生徒数が増加しています(平成30年度で計約93,000人)。日本語の指導や、生活面での支援など周囲はどのようにサポートすればよいでしょうか?

子どもたち同士でメンター制度を設けて、心のサポートを。

精神的なサポーターとして、メンター制度を導入してみてはいかがでしょうか。先生がクラスの中で一番信頼している子、面倒見の良い優しい子に声を掛けて、外国人の生徒のメンターにするのです。忘れ物がないかチェックしてあげたり、宿題を助けてあげたり。そうすることで、安心して楽しく登校できますし、成績も伸びると思います。メンターを任された子も、張り切ってやりますよ。こうした取り組みは、どこの学校でもすぐに取り入れられるのではないでしょうか。

実はメンター制度は海外ではよくあること。新入生が入ってくると同じクラスの子と高学年の生徒を2人メンターに据えることが多いです。クラスメイトはもちろん、高学年の知り合いがいることは低学年の子どもにとって心強いことで、いじめ防止にもなります。同じクラスの子と高学年の子と2人でタッグを組ませればメンターならではの悩みを共有することもできるので、ストレスや負荷を減らすこともできます。

先生は生徒の環境を把握して、いざというときに守る準備を。

子どもにとって先生は、家族の次に支えとなる大人ですから、先生が自分のことを気にかけてくれているとわかるだけで心が満たされるものです。「今日も頑張ったね」「うちのクラスに来てくれて良かった」と毎日短い言葉を掛けてあげれば十分です。ポジティブな言葉で励ましてあげましょう。

また、入学の前から身の回りの情報収集をすることも大切です。ご両親のお仕事、自宅にいる時間、兄弟姉妹の関係、連絡先など。ご両親が日本語を話せないのであれば、職場の方に連絡を取る必要があるかもしれません。もしも大地震が起こったり、不慮の事故に巻き込まれることがあれば、大使館や領事館との連携が必要となるので電話番号を控えておくことも忘れずに。

日本語の習得は焦らず、一歩一歩。

日本語の理解や勉強のサポートはどうすればよいでしょうか。特別な指導を受けている生徒も少なくないと思いますが、勉強の遅れなどについては大目に見ることが大切です。そして先生方も彼らが日本人の生徒と同じように授業についてこれなくても深刻に考えすぎないでください。

最近はグーグル翻訳などAIを駆使した技術が進んでいるので率先して取り入れていくのも手ですね。子どもはひらがなをすぐに覚えますので、漢字にふりがなを振ってあげると、後で自分で調べることができます。私も17歳で日本にやってきて1年位で周りが何を話しているのかわかるようになってきましたが、読み書きは難しかったです。漢字にふりがなが振ってあってとても助けられたのを覚えています。

もし私が外国人の生徒を受け持つ先生であったら、翻訳機能を併用しながら、簡単な日本語で毎朝今日は何をするのか書いてあるプリントを配って、その日の授業にスムーズに入れるようにします。少しの配慮で授業に前向きになれるのではないかと思います。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成・文・写真・イラスト:学びの場.com編集部

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