2014.03.03
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若い先生たちへのメッセージNO.19 「体験学習の流れを学ぼう!」

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

  体験を通して学ぶことは、前回の学習指導要領改訂の際に、総合的な学習の時間が導入されて以来、ますます重要視されてきています。今回は、「洗濯板と七輪」を使った学習を例に、体験的学習の進め方をお伝えしたいと思います。

 

 三年生は、三学期に入ってから地域の歴史を学習しています。実は、この内容は教師にとって負担の大きい学習です。勤務地が教師自身の生まれ育った地域とは異なることが多く、赴任した学校の地域を知らなければ、その歴史を子どもたちに教えられないからです。

 事務仕事などに時間を割かれ、教材研究の時間が取りにくい中では、地域に根ざした歴史を深く学び取ることは難しいかもしれません。でも、子どもたちのために、ぜひ興味をもって学び、授業の準備をしてほしいと思います。

 

 さて、先日、「昔のくらし」の学習の一環として、七輪を使った餅焼き体験と、洗濯板を使っての洗濯体験を行いました。それらの授業を通して、教師として事前に準備しなければならないこと、知っておかなければならないことなどを整理しましたので、参考にしてください。

 まず、体験学習をさせるためには、道具類の点検をしなければなりません。七輪が十分に機能できる状態にあるのかを確認し、炭、火箸、着火材、うちわなどを用意します。たとえば、七輪の内側に入れる目皿は割れていることがあります。これは一枚200円程度で販売されています。また、炭火に火をつける方法は様々ですが、体験のさせ方によっては着火材を用意した方がいいと思います。それから、洗濯体験のためには、洗い桶、洗濯板、固形石鹸などが必要です。

 このような準備は、年度末近くにあわててやるのではなく、本来ならばもっと早い時期に行うべきでした。このころになると、学校予算のほとんどを使い切っていて、大きなお金を動かすことができない状況にあるからです。年度末には予算がないということも覚えておいてほしいと思います。事務主事などとよく連携し、早めに準備するよう心がけましょう。

 次に、事前に体験の内容を試しておくことが大切です。七輪を使わせるためには、炭を熾す(おこす)方法を知らなければなりません。また、炭は炎が出ている状態で用いると、本来の良さを引き出すことができません。そういったことを事前に確認しておかなければなりません。洗濯板を使った洗濯も皆経験がないので、洗い方を確認しておきましょう。

 

 では、実際にはどのような体験ができたのかをご紹介します。

 まず、七輪は前年の使用から一年も放置されていました。そのため最初は使いにくいということがわかりました。最初に体験したクラスでは、炭が湿っていたためなのか、着火材がすぐに消えてしまい、炭を熾しにくかったと聞きました。次のクラスからは、順調にできたことを考えると、道具は毎日使っていないとダメなのだなと気付かされました。それから、炭火のイメージが持てなかったのか、炎でお餅を焼いてしまったグループがありました。その班では、お餅の外側は真っ黒こげなのに、中身が堅かったという報告がありました。

 洗濯板に石鹸をこすりつけてしまい、洗濯板がドロドロになってしまったグループもありました。石鹸は洗濯物につけるという指導が徹底されていなかったのだと思います。

 このような簡単そうに見える体験でも、教師の経験や指導方法によって、体験に幅ができてしまいます。事前に打ち合わせをして、実際にやってみていてもこういったことを避けることはできないのかもしれません。日頃から、生活を通して学び取ろうとする姿勢をもつことが求められるのだと痛感しました。

 

 最後に、子どもたちの感想の一部をご紹介します。

「七輪で焼いてみて…」

・お餅を焼くときに、七輪のそばはあたたかくてぽかぽかあったまりました。餅焼きがすごくうまくいって、よかったです。

・今はオーブントースターで焼いているけど、昔はこうやっていたんだなとわかりました。七輪で焼いた方がおいしかったです。

・火の調節が難しかったです。なぜなら、火が強すぎるとこげちゃうし、弱すぎるとなかなか焼けないからです。

・レンジでやるのとちがって、見守っていなきゃだめだから、大変だと思いました。

 

「洗濯板を使ってみて…」

・夏はいいけど冬は水が冷たいし、家族が多いと大変だから、ぼくも手伝いたい。

・昔の人は手作業でやることが多くて、大変だなと思いました。でも、汚れを見ながらせんたくできるから、いいこともあるなと思いました。

・よかったことは、汚れているところを確かめながら洗えることです。大変なことは、水が冷たくて手が赤くなってしまうことです。

・せんたく板で強くやりすぎると穴が開きそうになるし、弱いと汚れがおちないし、調節が難しいと思いました。

 

 「昔の人は大変だった。でも、今は楽にできるからいい」といった感想をもたせることは、好ましいこととは思いません。昔の暮らしにもよさがあるのです。炭火で焼くお餅は、とても美味しかったと、子どもたちは大喜びでした。洗濯物も部分洗いのよさを体験できたようです。

 便利な機器があるから幸せだと考えるのではなく、一見不便そうに見える「昔のくらし」であっても、工夫して生活を楽しんできたことに気付かせることが大事なのだと思います。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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