2010.10.05
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

教育に強制はいらない

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

はじめまして。今回から執筆させていただくことになりました。よろしくお願いいたします。

 さて、今回は、学校生活におけるルールについて考えてみたいと思います。
 私が学生の頃、「教育に強制はいらない」と題した、欧米のフリースクールについての本を読みました。そして、「教育に強制はいらない」という意味を、教師になってからも、ずっと考え続けてきました。
「学校という場所で、強制を完璧になくすことはできるのだろうか?」
「管理という側面ではどうだろうか?」

 学校では、皆さんがご存知のように、多くの子供たちが学んでいます。その場において、時間を守らせる、ルールを守らせるといった、管理的な側面を完全に排除してしまうわけにはいきません。
 しかし、教師からの一方的な強制をなくすこと、あるいは可能な限り少なくすることはできるのではないかと考えてきました。

 ところで、20年以上も前に、私は初めて6年生を担任しました。産休代替という立場だったのですが、それまで担任していた方が、正に強制的と思えるルールを子供たちに押しつけていると感じました。それで、私は一気にそのルールを止めてしまいました。それがどういう結果を招くかということを、当時の私には予測できませんでした。

 子供たちは、あっという間に自由を満喫し始めました。本来の「自由」という意味からはかけ離れた、自由気ままという状態に陥りました。当時はまだ「学級崩壊」という言葉はありませんでしたが、それに近い様子だったと思います。

 慌てた私は、必死な思いで子供たちと話し合い、ルール作りにとりかかりました。しかし、未熟者の私にとっては、泣きたくなるような毎日でした。子供たちとの信頼関係を築くまでは、ルール作りは困難であることを、嫌と言うほど思い知らされたからです。
 でも、強制力をもって押しつけるルールではなく、子供たちと共に作りあげたルールが、いかに大切であるかを学びました。

 さて、若い頃からそんな失敗を繰り返しながらも今日に至ります。そして、この4月からは5年生の担任になりました。
 彼らには4年生までのルールがしっかりと身についており、スムーズなスタートを切ることができました。

 ただ、5年生と言えば、思春期の入り口に差しかかっています。4年生までのルールだけでは不十分なこともたくさん出てきます。子供たちの様子や話から、必要に応じたルール作りは欠かせません。必要性を感じたときは、子供たちから提案させてルールを作ったり、確認させたりするようにしています。

 例えば、クラス遊びのルールや、給食のおかわりのルールのような小さなことから、相手を思いやるためのルールなど様々です。
 
 彼らとの生活も半年間が過ぎ、「自分にもいい、相手にもいい」雰囲気をもったクラスになってきたように感じています。これからも、子供たちの心に寄り添い、子供たちと共に作りあげていくような学級を目指して、頑張っていこうと思っています。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

同じテーマの執筆者
  • 松井 恵子

    兵庫県公立小学校勤務

  • 松森 靖行

    大阪府公立小学校教諭

  • 鈴木 邦明

    帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師

  • 藤田 孝介

    横浜市立入船小学校 教諭

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 髙橋 三郎

    福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop