2017.03.14
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振り返り活動にもの申す

授業や単元の最後に、振り返りとして、その授業のいわば感想を書かせている学校も多いと思います。しかし、「今日は楽しかった」だけに終わっていることはありませんか?振り返りは、何のためにするのか、振り返り活動のあるべき内容とは何か、について今日は話したいと思います。

兵庫県公立小学校勤務 松井 恵子

本校の研究は、算数科を柱にして6年になりますが、算数を研究の柱にした2年目、「どのような振り返りを書かせればよいのか」という疑問の声が聞かれました。これは、本校で問題解決学習を取り入れて間もない頃、「何を話させればよいの?」「教師の代わりをさせればいいの?」という疑問が聞こえてきたことと、にているように思います。話はそれますが、何事も与えられるのを待つのでは、子どもにアクティブを促すことができるわけがありません。教師自身が、もっとどん欲に、自分の授業、日々の教育活動について考え、行動すべきだと私は思います。マニュアルを待つ教師は、マニュアルをこなす子どもしか育てられない!そんな教育はいらない!子どもに主体性を促すには、まずは、ご自分の主体性からです!

それはさておき、本校では、算数を主軸に研究を進めておりますので、今回は、算数の振り返り活動について、考えを述べていきたいと思います。

主体的に取り組み、授業を感動のあるものにすれば、思考が動く。

振り返りを書くのはなぜだろう。

この問いから、やはり出発せねばならないでしょう。どうして授業に話し合い活動を取り入れているのかを考えたように・・・。

今までの教師主導の正解をコピーさせるような学習では、これからの社会を生きる力が培われない。だから今、子ども主体で、正解を探求させる学習が必要とされてきています。

指導要領には、「算数を学ぶことの楽しさや意義を実感できるようにするためには、児童が目的意識をもって主体的に取り組む活動となるよう指導する必要がある。」とも書かれています。

振り返りは、「変容の自覚化」

主体的に取り組み、授業を感動のあるものにすれば、思考が動く。そのような授業を心がけたいものです。

そして、自分と向き合う側面を強く持つ活動が、「振り返りを書く」ことであると考えます。

自分の変容=成長に気づくことで、主体的に他者と関わり合ってできた新たな発見を再び自分の中に落とし込むのです。

わかったことや感じたことを「書く」=アウトプットすることで、その思考はもう一度自分の中で自覚化され、より学習したことが、一人一人の中に成立することでしょう。もしわからなければ、どこがわからないかも自覚できるし、間違えも把握でき、形成的評価として、次へ生かされます。

この1時間の思考の動きを自覚化するために、振り返り活動を行うのです。振り返りも思考力をつけるためのもの。だから、あしあとの観点は、算数科の目標とリンクしていて当然です。

本時の目標に迫るために、授業をする。数理的処理の良さであるとか、数の感覚の豊かさであるとか、比較・検討した思考であるとか、すべて、教師がねらっている意図的な営みが授業。だから、振り返りが目標の内容に帰着するのは当然のことだと思います。

だからこそ、どんな振り返りを「書かせる」かではなく、授業最後には、こんな振り返りを書く子どもになってほしいなと想像し、「そのためには、このめあては複雑だから変えよう。」などと考え、授業をつくります。

それは、評価“基準”と似ています。塾で先行学習している○○くんなら、「長方形の面積はたて×よこと知っていたけど、本当は、長さではなくて1平方センチのいくつぶんだからたて×よこなんだとわかり、びっくりしました。」と言ってほしい。算数の苦手な○○さんなら、「1平方センチを1つずつ数えていたけど、○○ちゃんの言うように、数えるよりかけ算をつかったら便利だなと思いました。」と言ってほしい。そんな姿を想像するのは、評価“基準”と似ています。いつも、子どもの姿を思い、授業をつくりたいものです。

そして、大切にしたい観点を共通理解しながら、低学年から算数としての思考の源である算数的な価値観を身につけさせたいと思い、振り返り(本校では「あしあと」とよんでいる)のひな型も夜なべをしてつくったなあ。(写真)これが、正しいかどうかはわかりませんが、このひな型をもとに、それぞれの先生方が授業に取り組む手だてにしてもらえたらと思って、つくっています。

松井 恵子(まつい けいこ)

兵庫県公立小学校勤務


兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。

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