2011.12.20
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大豆が水を吸う 【食と科学】[小5・理科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第六十四回目の単元は、「大豆が水を吸う」。大豆の吸水力を使った実験です。

大豆には、豆腐、納豆、厚揚げ、おからなどなど様々な加工品があります。加工されても栄養的な価値は変わらず、むしろ大豆そのままよりも消化吸収が良くな りますし、手軽に食事に取り入れることができて便利です。加工の際、固い豆のままでは難しいので、吸水させ蒸してから加工します。第5学年「植物の発芽・ 成長」では、発芽の時にタネが水を吸うことを取り上げます。そこで大豆の吸水力を使った実験を印象的に行ってみました。

大豆で缶を割く?

子どもたちに大豆とアルミ缶を見せます。
「この大豆でアルミ缶を割くことができると思う?」
 と聞くと、子どもたちは
「そんなの無理だよ」
 と答えます。そこで次のような方法で実験をしてみます。

【用意するもの】
■豆(乾燥したもの):500g程度
■アルミ缶:350mlがちょうどよい
■水槽(缶の高さより10cm以上高いもの):1つ

<実験の手順>

(1) 缶に水を半分ほど入れる。
(缶に大豆を入れた時に缶の中の下部の豆も水に浸かるようにするため)

(2)大豆を7割程度入れる。
(3) 水槽に缶を置き、水を入れる。
(大豆が水を吸うため水は多く入れておく必要がある)
(4) 水槽の水位をビニールテープなどで示しておく。
(大豆が吸った水の量をわかりやすくするため)

アルミ缶のふたが!

翌日、アルミ缶を見てみるとパンパンに膨れ上がっています。飲み口の部分が割けています。

大豆は水を吸うと体積が2.5倍ほどに膨れ上がるので、アルミ缶には7割程度の大豆を入れる方 が成功します。比較することが大事なので、水につけない大豆を置いておいたり、実験前の写真を残したりするといいでしょう。大豆が水を吸ったことがよくわ かります。その時に、大豆の袋に小さい空気穴があるのは、豆が呼吸し生きている証拠であることも紹介します。

大豆は必ず新品を使います(よく乾燥しているため吸水しやすい)。缶が割れることがあるため、割れた時の取り扱いに気をつけてください。

子どもたちには、豆腐作りでは、なぜ水に浸すのかを話します。豆を水 に浸して水分を十分吸わせると、ゆでる際に熱が豆全体に伝わりやすく、煮えむら(固さの違う豆が混じること)がなく、ふっくらと、しかも早くゆで上がるた めです。大豆の量の4倍程度の水を入れて、十分に水を吸わせます。春~秋は6~10時間、冬は1日くらいが目安です。小豆は表皮が硬く吸水しにくいので、 水洗い後直接ゆでる方法がおすすめです。

授業の展開例
  • おいしいご飯を炊くには吸水がポイントです。どのようなコツがあるか調べてみましょう。
  • 干しワカメや干しシイタケを水につけておくとワカメやシイタケに戻ります。干した食品(乾物)には他にどのようなものがあるでしょうか。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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