2007.03.27
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子どもと携帯電話 おやじが子どもにできること

今回は、子どもと携帯電話について学び、子どもを守るために何ができるかを考えることをテーマに掲げて開かれた「携帯フォーラム イン 千葉 おやじ!知ってくれ~子どもの携帯~」というイベントのリポートをお届けしたい。このイベントの主催は、「おやじ日本」というなんともユニークな団体。会場を埋め尽くした参加者のほとんどが、教育に熱い"おやじ"たちだった。

おやじ日本

 あなたは子どもに携帯電話を買い与えて、「これで、もしもの時も大丈夫!」と安心していないだろうか。今や、子どもたちを脅かすのは目に見える不審者だけではく、目には見えないバーチャルな世界にも、危険はたくさん潜んでいるのだ。今回は、子どもと携帯電話について学び、子どもを守るために何ができるかを考えることをテーマに掲げて開かれた「携帯フォーラム イン 千葉 おやじ!知ってくれ~子どもの携帯~」というイベントのリポートをお届けしたい。このイベントの主催は、「おやじ日本」というなんともユニークな団体。会場を埋め尽くした参加者のほとんどが、教育に熱い“おやじ”たちだった。(取材日2007年3月4日)

 今回のフォーラムでパネリストを務めたのは、白石靖氏(千葉市立草野小学校PTA/おやじの会代表)、西田光昭氏(柏市立土南部小学校教諭)、高原牧子氏(佐倉市立山王小学校保護者)、永井正直氏(e-ネットキャラバン運営協議会事務局)の4名。そして、千葉大学教育学部助教授の藤川大祐氏がコーデイネーターとして、全体をまとめた。

 まず、各パネリストがそれぞれの視点から、子どもと携帯電話について意見を交わした。

 白石氏は、子どもの携帯代金の請求書を見て感じたことを述べた。「インターネットやメールが使い放題になるプランに申し込んでいるが、請求書に『使い放題のプランに加入していなければ、請求金額は5万円でした』と書いてあるのを見て疑問に感じた。お得なことをアピールすることよりも、フィルタリング機能のような、ユーザーにとって有益になるような情報を伝える努力をする方が先決だろう。」と子どもが安全に携帯電話を使えるように、もっと携帯事業者の方にも配慮をしてもらいたいという点を熱く語った。

 西田氏は、「近年、学校現場で携帯電話の使用法を指導してほしいなどの要求が増えていると思う。教員が、携帯電話について正しく理解しているわけではないために学校での指導は難しい部分もあるが、実際に授業で取り上げてみると、子どもは多くのことを感じ取ってくれるようだ。45分の授業でも、子どもの意識を変えることができた」と、自身の授業実践を通して実感した、大人が子どもに正しい情報やルールを伝えていくことの大切さを訴えた。

 高原氏は、「最近は、持ち運びのできるゲーム機器にも、携帯電話と同様の危機感を覚えている。電車内、公園、テーマパーク、小児科でもゲームに興じる子どもを多く見かける。日々の生活の中にある、ちょっとした隙間時間にもゲームが入り込んできているようだ。まずは、すでに子どもにとって身近なゲームに関して、各家庭でルールを決める必要があるだろう。それが、携帯電話の利用にも相通じるものがあるのでは」と、母親ならではの目線で語った。

 永井氏は、「子どもが携帯電話を通して危険な事件に巻き込まれるケースが増えている。一度負ってしまった心の傷は、ずっと残ってしまう。まずは、自分の子どもをどうやって守るのかを考えることが大切だ。ネットだからといって、特別なことは何もない」と、子どもとインターネットの関わりなどについて多くの実例を見てきた当事者としての見解を述べた。

「携帯電話の使用の仕方は、日常モラルの延長上にあるものだ」と語る藤川氏
「携帯電話の使用の仕方は、日常モラルの延長上にあるものだ」と語る藤川氏

 インターネットを活用できる環境が良くなり、それを利用する人は老若男女問わず莫大な情報を得ることが可能になった。しかし、その情報の受け手である我々は、それらの情報を正しく利活用する力、つまりメディアリテラシーがまだまだ低い。そんな未熟な利用者は、自分自身がある意味で脅威となってしまう。

 パネルディスカッションの中で永井氏が、ある若者向けのSNS(ソーシャル・ネットワークキング・サービス)サイトを紹介した。そのサイトでは女子中高生が自らの裸の写真を載せるような、常軌を逸する情報発信もされているというから驚きだ。緊急時に助けを求めたり、GPS機能で居場所を特定できるような機能を持つ携帯電話は確かに便利な道具ではあるが、「与えることで生まれる危ないこともたくさんある」という西田氏の意見にもうなずける。

グラフ12007年2月 おやじ日本調べ
グラフ1 2007年2月 おやじ日本調べ

 おやじ日本が今回のフォーラムに向けて事前に行ったアンケート(*1)によると、フィルタリング機能を知っているおやじは54%で、携帯電話の購入時に、フィルタリング機能について説明があったと回答したのは1%であった(グラフ1参照)。どんなに便利な機能でも、知らなければ利用することはできない。携帯電話のユーザー数を増やす努力をするのと同様に、携帯電話会社には子どもが安全に携帯電話を利用できるように意識して取り組んで欲しいところだ。

 しかし、先に挙げたフィルタリングのような、危険なものを排除するようなシステムがあれば、それだけで安心して子どもに携帯電話やインターネットを利用させることができるのだろうか。西田氏が言うように「新たなシステムを作っても追いかけっこになる」のは確かだろう。「大人が今までの生き様を示すようにして、ダメなものはダメだと伝え、いいものはいいと伝える必要がある」と白石氏が語るように、やはり子どもを守るには、子どもの安全を心から願い、行動に移せる大人の力が必要不可欠だ。

 今回のフォーラムを主催したのは「おやじ日本」という団体だが、会場には女性の参加者も数人いた。ある女性の参加者から、「子どものことは母親任せの父親も多い中、このような団体はいいと思う。今は孫のことが心配だから、今日の話を子どもに教えてあげたい」という意見を聞くこともできた。

今回の携帯プロジェクトリーダーの上田氏は、フォーラムアピールとして「みんなで考えていくことが大切」と強く訴えた
今回の携帯プロジェクトリーダーの上田氏は、フォーラムアピールとして「みんなで考えていくことが大切」と強く訴えた

 実際に、おやじ日本が行ったアンケートの中では、子どもに携帯電話を持たせる際に、母親に任せるなどして関わらなかったおやじが4分の1ほどいたという。このフォーラムのような場で示唆に富んだ意見に触れ、その場で「なるほど」と感嘆するだけではもったいない。得た情報を身近なところでうまく利用できるような、高いメディアリテラシーを持ったおやじの輪が今後広がっていくことを期待したい。

(取材・文:須藤綾子)

(*1)
実施者:おやじ日本 携帯フォーラムプロジェクト
実施期間:2006年12月~2007年2月
回答者:子どもを持つおやじ
調査総数:こども468人分のデータ
調査方法:Web入力及びFAXアンケート
子ども1人に一葉づつ回答

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