2005.09.06
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科学大好き!!みんなで学ぼう 科学教育連携シンポジウム2005

3日間連続して行われた「科学教育連携シンポジウム2005」。2日目、3日目は、学びの場.comに、インターンシップとしてお手伝いに来てくれた学生2名にレポートしてもらいました!! 今回は、福山由紀さんの登場です。


SSH・SPPの結果研修を発表


白熱したディスカッションが繰り広げられた。

 理科離れが叫ばれている昨今ではあるが、適切な指導や工夫で、子供たちの興味・関心を引き出すことで、学ぶ意欲は高まるはず。このような主旨から、教科書や学校の枠を超えて、さまざまな科学教育を行っている学校の事例を紹介する、今日の「科学教育連携シンポジウム2005」。初日には、SSH(Super Science High school)・SPP(Science Partnership Program)に参加した中学生・高校生を中心に成果発表が行われた。生徒たちは最先端の科学技術に触れ、研究者たちの情熱に触れた感動を語ってくれた。
 2日目の24日は教員による発表会。昨日、目を輝かせて発表をしてくれた生徒たちの指導者側の苦労や成果の発表である。生徒の興味を引くにはどのように取り組んだらいいか、科学館との連携をとりながら教員視点で進められた。どんよりとした天気にもかかわらず、生徒たちに新しい刺激を受けさせ関心や意欲を高めてもらいたいと思っている教員や、科学に興味がある学生たちを含め、多くの人が来場し、熱気あふれる会場となった。

 今回のイベントの中心でもある代表発表・ディスカッションは共に、SSH・SPPの参加校の発表が中心となった。

 「生徒たちが進みたいと思っている進路も、実は未知の世界であり、しっかり見極め考えてもらいたい。」、「学校の授業では、教える内容は限られてくる。しかし実際は複雑であり、分からないことも多い。自分で問題提起をし、悩みながらも自分で考えていくことが何より大切であるということを学んでもらいたい。」など先生は、各自このイベントに参加した目的を語った。

 その思いはしっかり生徒に伝わり、前日 壇上に上がっていた生徒の半分は「今後も科学に携わっていきたい。」と答えた。その他の生徒も、自分にとって科学は身近なものであると認識し、視野を広める上ではとてもいい経験になったようだ。

 しかし、いくつかの問題が浮き彫りになった。たとえば個別に対応できる指導者の数や機材の数の不足、理科担当教員だけでなく他の科目の先生の認識・学校側への理解がなければ実践は難しいが、学校側の認識が薄いこと、また連絡先の研究所や科学館などとの折衝に時間がかかる、そもそもどこに協力依頼したらいいのか分からない、など。校外の施設と連携、と一口に言っても、現実的にはなかなか難しいようだ。

 どの先生も連携活動には苦労をされたようだが、生徒各自が改めて自分を見つめ直し 新たな視野を広げ、将来を真剣に考えるようになるなどの、生徒たちの変化に大きな手ごたえを感じたようだ。生徒たちのポジティブな変化が、次の活動の原動力となるに違いない。

 


ディスカッションに参加した毛利館長。
 

ディスカッションには宇宙飛行士であり、また日本科学未来館の館長でもある毛利衛氏も参加し、現在の教育、特に「子供たちに興味をどのように持たせたらいいのか。そのために教師にとって大切なこと」について白熱した討論も見せてくれた。
 高校生からの「今、私たちは、どのように社会に貢献したらよいのか?」という質問に、毛利館長は「将来、社会への貢献ができるように、今は視野を広げて、いろいろなことにチャレンジすることが大切だ。少しでも興味のあることを見つけ、能力や意識を高めてください。」と答えた。これからの将来を自分の足で歩むためにはいろいろな判断材料が必要になる。その上で視野を広げておく必要性があるということを高校生に気づかせてくれた。

 


実際に作った藍染めを見せてくれている岩藤先生。
 同時開催の「未来の教室」・「科学実験教室」では、科学を身近に知ってもらおうと中学生以上の生徒を対象に4回にわたって授業が行われた。
藍染めから学ぶ化学や光学異性体では、自分たちが主体になって実験に参加できることもあり、生徒たちは授業前から興味津々で机の前にかじりつくように集まっていた。

◆薬品を使用して藍染めを体験してみよう

 藍染めの授業では合成染料による藍染めを東京学芸大学付属高等学校の岩藤英司先生が説明してくれた。
生徒たちは、藍の葉を指で揉むことにより起こる酸化を体験したり、薬品を藍の液に入れ化学反応の結果、布を染めることが可能になる過程を分かりやすく理解した。授業終了後に生徒たちは「今まで知らなかったことが分かってよかった。」、「今日は薬品を使って染めたが、伝統的な藍染めでは何を使うかを知りたくなった。」などの感想がきかれた。藍染めを通し今まで触れたことのない世界に興味をあらわにしていた。


生徒たちは自分の布が染まるところを見ようと机の前に集まっている。

 

 

◆手にとって学ぶ、光学異性体

 光学異性体では分子模型を使って対になっている原子団の位置により、対となる分子が存在する原理や、対となる分子の一方がすぐれた薬品なのに他方が毒性を持っている場合がある、などの特徴を、生徒たちに理解しやすく森村学園高等学校の市川朋美先生が説明してくれた。
実際に、生徒たちは光学異性体の一種であるリモネンなどのにおいを嗅いだり、分子模型組み立てをした。高度な内容ではあったが、先生が1つ1つの机に回り丁寧に説明をしてくれたため、生徒たちは理解を深め、意欲的に質問をする姿が見られた。
    
     分子模型を持ち説明している市川先生。

 


科学を英語で熱心に説明している今野先生。

◆英語から身近な科学を学ぶ

 最後に埼玉県立川越女子高等学校の今野文彦先生による英語の授業を紹介しよう。なぜ科学中心のイベントに英語が?と疑問に思う方も多いだろう。今野先生は、教材として、海外の科学雑誌のサイトの記事を活用している。そこには、まだ教科書にも載らないような最新の科学情報があふれている。「英語は苦手だけど、科学が好きだから英文が読めるようになった。」逆に「科学は嫌いだったけど、記事を読むうちに興味が出てきた。」など、最先端の情報への興味が学ぶ意欲につながったという。

 今野先生はとても熱意がありエネルギッシュな方で、生徒が興味を持ちそうな題材「なぜ空は青いのか?」などを取り上げていた。授業は生徒たちのレベルに合わせた説明をしてくれたおかげか、英語を聞いて拒否反応を起こすどころか不思議なほどにどんどん惹きつけられていく授業であった。
(教材使用サイト→http://www.nature.com/news/index.html

 今回のイベントは、夏休み中ということもあり生徒にとってとても貴重な時間ではあったが、イベントの参加によって普段学校では味わうことのできない体験を通し、科学を身近に感じて科学というものを改めて考え直した生徒も多かったようだ。
 科学教室などはとても興味をそそる内容であったため、生徒たちに関心が持てたと思われる。実際私が見ても楽しく、科学をもう一度学びたいと思わせるような授業だった。
 理科離れが叫ばれている中、このように科学を実際自分たちで体験することによって学べるということはとても貴重な機会であるということを改めて実感させられた。

 今後もさまざまな人たちに新しい刺激を受けて視野を広げてもらおうと考えている日本科学未来館ではたくさんのイベントを用意している。
 今回のシンポジウムに参加できなかった人たちにも是非科学を自分にとって身近なものと感じてもらういいチャンスであるため是非日本科学未来館を訪れてもらいたい。
(日本科学未来館→http://www.miraikan.jst.go.jp


(取材・文:福山由紀)

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