2010.04.20
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科学教育イベント体験リポート 企画展「お化け屋敷で科学する! 2 恐怖の実験」で怪奇現象の正体を学ぶ―日本科学未来館―

科学教育のヒントなるイベント、企画展「お化け屋敷で科学する! 2 ~恐怖の実験~」が日本科学未来館にて5月31日まで開催している。同展は昨春、好評を博した「お化け屋敷で科学する~恐怖の研究~」に続く第二弾であり、人魂やポルターガイスト等の怪奇現象の正体を科学的に証明し、さまざまな謎に答える構成となっている。子どもたちの理科の学習にどう結びつけられるか、一足先に体験してみた。

科学教育イベント体験リポート 企画展「お化け屋敷で科学する! 2 ~恐怖の実験~」で怪奇現象の正体を学ぶ―日本科学未来館―

科学教育のヒントなるイベント、企画展「お化け屋敷で科学する! 2 ~恐怖の実験~」が日本科学未来館にて5月31日まで開催している。同展は昨春、好評を博した「お化け屋敷で科学する~恐怖の研究~」に続く第二弾であり、人魂やポルターガイスト等の怪奇現象の正体を科学的に証明し、さまざまな謎に答える構成となっている。子どもたちの理科の学習にどう結びつけられるか、一足先に体験してみた。

“恐怖の実験”体験リポート

知識と感覚の両面から恐怖を学習

イベント会場は「体感」「学習」「観察」「体験」の4つのエリアから構成されている。一体どんな展示内容で恐怖を実験、解明しているのか、記者の体験リポートをお送りする。

お化け屋敷エリア
暗闇の中で、音と映像による迫力の恐怖を体感!

 まずは「体感」をテーマにした「お化け屋敷エリア」。「怪しい光を見た」、「奇妙な呻き声を聞いた」という噂の絶えない村はずれの一軒家。そんな“幽霊屋敷”に記者も足を踏み入れてみると――。

科学教育イベント体験リポート 企画展「お化け屋敷で科学する! 2 ~恐怖の実験~」で怪奇現象の正体を学ぶ―日本科学未来館―
壁に浮かび上がる女性の幽霊の顔。光の効果を利用した現象の一つだそう

 築60年以上の木造平屋建ての住宅。門の前から既に何か異様な雰囲気が漂っている。扉を開けて玄関を入っていくと目の前に靄が立ち込める。どこからともなくも風が吹いてきたかと思うと、ふいに目の前の靄が渦巻き始める……。

科学教育イベント体験リポート 企画展「お化け屋敷で科学する! 2 ~恐怖の実験~」で怪奇現象の正体を学ぶ―日本科学未来館―
青白く光る“人魂”。空気中のリン化水素やメタンガスが自然発火しているのだという説もあるが、その真相は……?

 玄関から廊下を進むと、割れた窓ガラス越しに庭が見える。と、突然「ゴロゴロ、ドーン!!」、外で雷の大音響と稲光が起きる。庭に生い茂る草木の中には古井戸。その上には青白く光る玉が。これは……人魂!

 廊下の角を曲がると、旧型のラジオやテレビ、ちゃぶ台等が置かれた居間。入ってしばらくすると、ラジオから「ザー、ザー」というノイズ音が勝手に流れ出す。なぜスイッチがONに? すると今度は奥のテレビのスイッチも入る。映し出されたのは人影……。

科学教育イベント体験リポート 企画展「お化け屋敷で科学する! 2 ~恐怖の実験~」で怪奇現象の正体を学ぶ―日本科学未来館―
ポルターガイスト現象が起こる台所。圧力や共振などの“音・力・運動エネルギー”と関連するらしい

 台所 には埃をかぶったコンロや鍋、食器棚、冷蔵庫等が並ぶ。ビクビクしながらコンロの横を通り過ぎようとすると、突然ヤカンが「ピーッ」と大きな音を上げ、流し台はガタガタと振動し始める。びっくりしてその奥の部屋へ急ぐと、打って変わって静まりかえった納戸だ。乱雑に置かれたマネキンや家具の奥に何か動くものがいる。人? 人形? 一体何なんだ!?

 

科学トピックエリア
基本的な理科の知識で恐怖の正体を学習できる!

科学教育イベント体験リポート 企画展「お化け屋敷で科学する! 2 ~恐怖の実験~」で怪奇現象の正体を学ぶ―日本科学未来館―
低周波を当て続けて割れたワイングラス。音波も不思議な現象の原因となる

 お化け屋敷エリアを抜けると、次は「学習」をテーマにした「科学トピックエリア」。今体感したばかりの不可解な現象について、科学的視点から紹介する。

科学教育イベント体験リポート 企画展「お化け屋敷で科学する! 2 ~恐怖の実験~」で怪奇現象の正体を学ぶ―日本科学未来館―
人毛の伸縮によって湿度を計測する「毛髪湿度計(Hygrometer)」。日本人の黒髪より白人女性の金髪の方が正確に観測できるそう

 会場は、お化け屋敷の各部屋に設定されていた学習課題ごとに大型パネルが掲示され、そこに怪奇現象の謎解きや解説が書かれている。

 たとえば、不思議な気配を感じる寝室は、実は「脳」が学習課題。パネルを読むと幽体離脱や霊感は、脳の働きと密接に関連することがわかる。居間は「電気・磁気」。テレビやラジオなどの電源が独りでに入るのは、霊界からのメッセージではなかったんだ! 納戸は「生命」。“お菊人形”の髪はなぜ毎年伸び続けるのか?  真相を知り、驚く。

 どれも意外な謎解きが展開され、興味をそそられた。

観察エリア
客観的な視点で恐怖を観察。なるほど納得!

 次の「観察エリア」は、科学トピックエリアで学んだことを他者の行動で検証する場所。お化け屋敷エリアで人々が恐怖を体験している様子を、モニターを通して見ることができる。こうしてみると、恐怖心を和らげる近道は、隠された真実を正しく理解することなんだなあと、一人肯く。

体験エリア
もう一度心霊体験。ここまでの学習のまとめ!

科学教育イベント体験リポート 企画展「お化け屋敷で科学する! 2 ~恐怖の実験~」で怪奇現象の正体を学ぶ―日本科学未来館―
展示最後に再び心霊体験。この箱の中で何が行われるかは、体験してみてのお楽しみ

 最後の「体験エリア」は、恐怖心を引き起こす不思議な現象を、改めて疑似体験 できる場所。いわば“恐怖のおさらい”だ。恐怖の実験イベントらしい思い出づくり(?)ができ、もう一度会場を回ってみたくなった。

 

 

展示のねらいと学習ポイント

物事の裏に潜む本質を見抜く目や探究心を育む場として活用してほしい。

日本科学未来館 科学コミュニケーター・理学博士 池辺 靖 氏
日本科学未来館
科学コミュニケーター・理学博士
池辺 靖 氏

「前回よりも学習と体験のリンクをさらに高める工夫を施した」という同展。では、子どもたちにぜひ学んでほしいポイントはどこか、また授業ではどの点が応用・活用できるか等、同館科学コミュニケーターの池辺靖氏 に伺った。

恐怖は人類の進歩にとって欠かせないセンサー

学びの場.com(以下、学びの場) 本展のねらいを教えて下さい。

池辺靖(以下、池辺) 大きく二つあります。一つは世の中のあらゆることには理由があり、普段見逃しがちな現象にも隠れた本質があるということに気づいてほしいということです。

 もう一つは、恐怖と科学の関係についてです。不可解な現象は我々に恐怖を抱かせますが、その謎を人類は科学の力で解明しようと進歩を遂げてきた面もあります。つまり、恐怖とは問題や謎の存在を我々に気づかせてくれる重要なセンサーであると言えるでしょう。そういう恐怖という感情の意味について再認識してほしいというねらいです。

子どもも大人も満足、最先端から身近な科学までを解説

学びの場 今回の展示内容は何年生くらいを対象として想定していますか?

池辺 小学校中学年から大人までです。本展は先端の科学だけでなく、日常の中の意外と知らない疑問点への解説があるので、大人の方にも、「あ、そういうことだったのか」と楽しんでもらえると思います。

学びの場 体験前に子どもたちが知っておくと、より楽しめる学習内容などはありますか?

科学教育イベント体験リポート 企画展「お化け屋敷で科学する! 2 ~恐怖の実験~」で怪奇現象の正体を学ぶ―日本科学未来館―

池辺 いくつかあります。たとえば小学生でも電磁気や音波など波動に関する基本くらいは学んでおくといいでしょう。動物と人間の可聴領域の違いに関する展示がありますので、とても面白いと思いますよ。ぜひ、体験してほしいですね。

展示はあくまで入り口、応用発展は先生方に期待

学びの場 今回の展示を通して、学校の先生方にはどんな指導を期待しますか?

科学教育イベント体験リポート 企画展「お化け屋敷で科学する! 2 ~恐怖の実験~」で怪奇現象の正体を学ぶ―日本科学未来館―

池辺 日常生活では、怪奇現象をはじめ不思議なことに出会っても追究せず、そのままにしてしまう場合がよくあります。しかし、あらゆるものには理由があり、目に見えない“本質”をあぶり出していくのが科学。ですから、先生方は子どもたちに「目の前の現象と背後にあるメカニズムは全て科学的に説明ができるのだ」ということを教えてあげてほしいですね。本展はそのきっかけ作りにしていただければと思います。そこから先は先生方の指導力に期待します。
 科学現象に限らず、政治や社会問題でも同じでしょう。なぜこんなことが起きたのか? 日常生活を学びの場と捉え、出来事の裏にある理由について探求していこうという姿勢を、子どもたちに身につけさせてあげるといいでしょうね。

記者の目

子どもの興味を引く不思議な現象と科学の学習を融合させようという試みはとても興味深い。楽しみながら、難しい科学の現象や用語についての理解を深めていくことができるだろう。残念なのは「科学トピックエリア」の展示法。解説手段がパネル掲示だけでなく、もう一工夫あれば、もっと子どもの興味・関心を高められるのではないだろうか。ただ“理科離れ”傾向もある中、子どもたちを科学の世界へ導くきっかけづくりとしては十分だ。

取材・文:後藤 真/写真:言美歩 ※写真の無断使用を禁じます。

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