2005.08.09
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細胞の不思議を探求する『子どものゆめサイエンス セルフェスタ2005 in 東京』開催!

7月23日と24日の2日間にわたり『子どものゆめサイエンス セルフェスタ2005 in 東京』が日本科学未来館で開催された。セル、つまり細胞の不思議を解き明かすための、最先端の研究に無料で触れられるとあって、両日とも夏休みに入ったばかりの子どもたちであふれ、大盛況だった。主催は日本学術会議細胞生物学研究連絡委員会、日本学術会議若者の科学力増進特別委員会。共催は日本科学未来館。


細胞が複雑化していく様子を廊下に写真展示

 細胞、それは最初の命のカタチ……。生命のすべての根源である「セル」=細胞にスポットをあて、子どもたちにそのおもしろさを味わってもらおうと、体験型の展示がふんだんに盛り込まれた『セルフェスタ』。夏休みに入ったばかりの7月23日・24日限定で、東京のお台場地区にある日本科学未来館で開催された。来場者数は2日間で2000名ほど。さまざまなイベントが開催されている夏休みのお台場にあって、これだけの来場者数はたいしたもので、どの展示も子どもたちであふれ、盛況だった。また、小学校高学年から中学生ぐらいが対象だというが、低学年から中学年の小学生たちも多く来場し、飽きることなく体験を楽しんでいたのが印象的だった。

 会場に入って最初に目に入るのは、廊下に展示された細胞の写真の数々。細胞が複雑になっていく過程が展示されている。命は細胞からできている、そう伝えるこの展示を抜けると、「ぼくらはセルだけ!セルだらけ!」という自分の細胞を観察できる部屋へ。ほっぺたの内側を綿棒でこすり、それをプレパラートにつけて染色すると、顕微鏡で自分の細胞をつぶさに見ることができるのだ。高倍率にすると細胞の核まで見ることができ、子どもたちは不思議そう。プリントアウトされた細胞の写真を見ても、自分がこうした細胞の集合体であることにまだピンとはこないようす。


キットが用意されており、自分で簡易顕微鏡を作る参加者たち

 この部屋には細胞に関するクイズや、植物と動物の細胞の模型もあり、現役大学院生らによる説明を受けることができる。このフェスタ全般に大学院生らを起用しているのは、実際に研究をしている人が、その研究のおもしろさを伝えるべき、という考えから。平日は彼らが研究で忙しいため、土日のイベント開催となったようだ。

 
ほっぺたの裏側を綿棒でこすり、 染色して顕微鏡で観察 顕微鏡で自分の細胞を見た後は、 細胞の画像をプリントアウトしてもらえる

次なる部屋は、「ふやセル、ためセル、みセル セル!」と題された発生観察と顕微鏡が作れる部屋。受精卵から始まるウニの発生段階を顕微鏡でのぞいたり、ペットボトルや紙でその場で作れる顕微鏡で、タマネギの細胞を見てみたり。簡単に作れるのに、ピントを合わせるとしっかりと細胞壁を見ることができる顕微鏡作りは、理科の実験教室のようで、夏休みの課題提出にしてもOKなレベル。もちろん、作った顕微鏡は持ち帰ることができる。ここには子どもが中に入れるほど大きな細胞のビニール模型もあり、子どもたちが実際にそれらに触れながら科学に親しんでいく様子がうかがえた。

3Dメガネをかけて見ると、細胞が立体で見える研究室は遊び感覚で楽しめる

 自分たちの体は細胞でできている、ということに少しはなじんだ時点で、最後に現れるのが大学の研究室が4つ集まった部屋。メダカの卵に光る細胞を移植し(子どもたちが体験できる)、メダカの発生をわかりやすく見ることができる研究室や、花粉や植物の細胞壁を最先端のレーザー顕微鏡で見られる研究室、バーチャルリアリティーで細胞の中に入れる研究室、3次元メガネで立体的に細胞を見ることができる研究室と、各研究室の研究内容を実際に体験することができるもの。教授や学生たちが直に指導してくれ、子どもが大学の研究に触れることのできる貴重な場だ。本来子どもたちには難しい研究のはずだが、研究のエッセンスを子どもたちも楽しめるようにそれぞれよく工夫されており、子どもたちもまた、教わりながら楽しんで参加していた。

大学の研究室で飼っているメダカには、
研究用に体が透けて見える「スケルトン」なメダカも

 このほかにも、ホールを使用しての講演会「めざせノーベル賞!セルから見た世界」と題し、世界を代表する研究者たちの公演が聴けて、直接インタビューができる場も。「理科離れ」という言葉がどこに行ったのかと思うほど、多くの子どもたちが事前申し込みで参加しており、引率に疲れて眠りこける親御さんらがいるなか、真剣に聞き、積極的に質問する子どもたちの様子が頼もしい。しっかりと展示内容も吸収しており、人間の細胞はいくつあったのかな?といった質問にも「60兆個!」とバッチリ回答。  

 同ホールの大画面を使用したウニの発生のビデオ上映会もあり、一貫して子どもたちが飽きずに楽しめるイベントとなっていた。実際、来場者の滞留時間はかなりのもので、平均3時間程度とか。主催者側のイベント意図も素晴らしいが、子どもたちが無料で科学の世界に触れられるこうした機会を、逃さず活用する親御さんらも素晴らしい、そう思えた有意義なイベントであった。

(取材・文:小股千佐)


巨大な植物細胞の模型はビニールで作られているので中に入って遊ぶことができる


最先端の研究を、研究者から聴くことができる講演会。質問タイムには積極的に手が挙がった

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