最新の科学を身近に感じる 国立科学博物館新館を訪ねて
「かはく」の略称でおなじみの国立科学博物館。昨年(平成16年)11月に新館が完成し、上野の新名所として多くの来館者が訪れている。学びの場.comの会員で、大妻女子大学の教授を退官され、現在は国立科学博物館で教育ボランティアをされている伊平保夫さんが、「かはく」の見所をご案内くださるというので、さっそくうかがった。
取材当日は、企画展「恐竜博2005」が開催中とあって大変な賑わい。親子連れや、修学旅行、校外学習と思われる子どもたちも多く訪れていた。今年4月から小中高校生は、常設展のみなら入場料無料。これで一層博物館が身近になった。 工事中の本館の横の機関車を横目に見ながら入り口を入り、ミュージアムショップを通り抜けると新館の入り口。新館は、地下3階から地上3階の6階建て。1フロアの天井高は最大7メートルとマンションの2階分もあり、とても広々とした空間だ。もちろんバリアフリー設計。 新館の展示は、大人の鑑賞にも耐えうるものを目指したと言うだけあって、幼児や小学生が楽しめるコーナーも多数あるものの、高校生や大学生くらいでなければわからない展示が少なくない。 「大学で一般教養を学ぶ機会が少なくなった今、このような、生物、物理、化学、地学、などサイエンス全般を一望できる施設をぜひ学習の場として欲しい。学生でなくても、教養としてのサイエンスを身近に感じる場として利用してください。」と伊平さん。 「学校にも積極的に利用して欲しい。まずは、先生が来館して『かはく』を楽しんでください。かはくを使って、どのような授業を展開するかは、先生が相談できる『ティーチャーズセンター』があるのでこちらを積極的に利用してください」とのメッセージをいただいた。 |
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■とっておきの見所は!? 最新の論文や、映像が紹介されているのも自慢だ。また、土・日・祝日に国立科学博物館の研究者が交代で、展示や研究内容などについての解説や質疑応答などを行う「ディスカバリートーク」が行われており、こちらも盛況。日進月歩のサイエンス事情をキャッチアップするいい機会だ。 ●地球環境と生命の進化、地球上の生き物たち ●身近な科学~科学技術の歩み
奥に行くと、日本の科学と技術の歴史が一望できるコーナーが。一番最初に目にとまるのは、精巧な和時計。ぜんまいにはくじらのひげが使われていて、1回巻くと200日間止まらない。その複雑な仕組みは現代の技術者をも驚嘆させるものだという。 続く展示は、江戸時代の最先端技術。和算、天文、測量技術、本草学、解剖学、医学など、高度な技術がすでに培われていたことがわかる。世界と比較しても特徴的なのは、これらの研究の多くは町人によるものだということ。西欧では、学問は身分の高い人のためのものだったが、日本では身分に関係なく、広く門戸が開かれていたのである。 ●自然や生き物に触れる
その奥の「大地を駆ける生命」のコーナーは、動物の剥製が展示されており、115体もの剥製が、ガラス越しにこちらを見ている。動物の皮膚のしわ、血管の浮き出たようす、湿った鼻。今にも動きそうな迫力だ。展示されている剥製のうち84体は、海外の収集家から寄贈されたもの。すでに絶滅したもの、あるいは、捕獲が禁止されているものも少なくなく、大変貴重なものである。 |
ご案内くださった教育ボランティアの伊平さん |
■教育ボランティアが博物館をより楽しいものにしてくれる ほかにもたくさんの展示があり、パンフレットには載っていないエピソードも交えながら伊平さんにご案内いただいた。国立科学博物館の収蔵物は全部で300万点にものぼるが(なんと、忠犬ハチ公の剥製もあるという!)、展示されているのはそのうちのわずか1万点あまり。それでも一日ではとても見て回れないほどのボリュームだ。しかも、ひとつひとつについて、詳しい解説が、タッチパネルで表示されている。同じものが、インターネット上でも公開されているから、事前学習は事後学習にも大変便利だ。 (取材・文:学びの場.com 高篠栄子) 国立科学博物館URL
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