17th New Education Expo 2012 in 東京 現地ルポ(vol.3)
「New Education Expo 2012 in 東京」が6月7~9日の3日間、東京・有明の東京ファッションタウンビルで開催された。連日、「教育の情報化」を始め多種多様なテーマを掲げたセミナーが行われ、いずれも好評を博していた。現地ルポ第3回目は、この中から特に参加者から人気の高かった「サイエンス」、「震災と防災」という旬なテーマによるセミナーをそれぞれリポートする。
教育現場の旬なテーマ「サイエンス」・「震災と防災」のセミナーに、参加者の熱い視線が注がれる流れ星を追って ~理科の入り口としての天文現象~ わからないから、おもしろい自然科学研究機構 国立天文台 副台長 教授 渡部 潤一 氏 「2012年は、天文現象の『金』の年です。5月には金環日食、6月には金星の太陽面通過があり、8月には金星食が起こります。特に、金環日食はとても盛り上がりました。私たち国立天文台のホームページにもアクセスが殺到し、1日間のアクセス数が200万ページビューにも達しました」 「日食や月食は、予測が可能です。だから今回の金環日食のように、みんなで時間を合わせて一緒に観測を楽しむことができます。しかし予測が難しい天文現象もあります。その代表が、『流星』や『彗星』です」 子どもも大人も、宇宙を楽しもう!その夢を叶え、国立天文台に入った渡部氏は、オースチン彗星や百武彗星など数多くの予測や観測に携わってきた。その一つひとつを、美しい彗星の写真とともに丁寧に解説してくれた。富士山の上を巨大な彗星が尾を引いて飛ぶ写真は幻想的なまでに美しく、参加者はため息とともに見とれたほどだ。 最後に、渡部氏は宇宙の魅力について語ってくれた。 |
東日本大震災 被災地の学校 復興への歩み PTSDはこれから?東京学芸大学 教育実践研究支援センター・教職大学院 教授 小林 正幸 氏 東日本大震災から1年4か月経ったが、被災地の学校はまだまだ困難を極めている。本セミナーでは、被災地で奮闘する教員らを招き、これまで、現状、そして今後について話し合った。 コーディネータ役の小林正幸・東京学芸大学教授は、被災地で子どもの心のケア活動に取り組んでいる。被災後3か月は子どもたちがストレスから過剰に活動的になったり不安が高まったりしたが、実は 「子どもたちには今後、学校不適応の問題として表れてくる。これから症状が深刻化してくると思っている」 体を張って校庭を守る宮城県南三陸町立歌津中学校 元校長 阿部 友昭 氏 宮城県南三陸町は地震による被害はほぼ皆無だったが、津波により902人が死亡または行方不明になる「津災」だった。町立歌津中は高台にあったものの、阿部友昭元校長は1960年のチリ地震を小学生の時に経験していたため、やがて来る津波の大きさを直感。同中より10メートルほど低地にあった伊里前小学校の校庭に向かって「上に上がれ―!!」と怒鳴ったという。小学生が中学校の校庭に避難して5分後、予測通り10数メートルの津波が襲ってきた。 体育館に避難後、ある男子生徒がやって来て「水が湧いている所を知っている、と担任の先生に言ったが、行くなと言われた」と訴えてきたので、阿部元校長は即座に「行ってこい! ただし3人で。そして水は最初に俺に飲ませろ」と指示。つまり毒味の上でみんなに配るという意図だ。その後、男子生徒に「なぜ担任は最初ダメだと言ったか分かるかい。せっかく助かった命を余震で失ってはいけないと言いたかったのだよ」と諭したという。男子の水くみ部隊は人数も増え、女子は半分に分けたおにぎりを住民に笑顔で配り、大変な3日間を乗り切った。 しばらく後、校庭に仮設住宅を建てたいという申し出が業者からあった。しかし、阿部元校長はチリ地震の経験から「あと5~10年、校庭で運動したことのない子を作るのか」と譲らず、自分の乗用車を校庭の真ん中に置いて抵抗。最終的には住民の理解も得られたという。 学校同士も助け合い岩手県宮古市立宮古小学校 校長 相模 貞一 氏 岩手県宮古市立宮古小学校の相模貞一校長は阿部元校長の発表を聞きながら、県内の実家や親戚なども被災したこともあって 「やはり助け合いなのだと、つくづく感じた」 被災地の体験を教訓に岩手県沿岸南部教育事務所 巡回型スクールカウンセラー 渡部 友晴 氏 京都府に在住していた臨床心理士の渡部友晴氏は昨年5月から東北沿岸各地のカウンセリングに入り、その縁で9月から現地に常駐。最初は遊びを通して徐々に子どもの心を開いていったという。面接では泣き出す子に「泣いていいよ」と話し、ため込んでいる感情を表出させていった。カウンセリングだけでなく授業の補助、ストレスマネジメントや表現活動にも取り組んでいる。ストレスマネジメントと言っても難しいものではなく、例えば、肩の上げ下げや、廊下ですれ違う子どもとの顔じゃんけんなど、日常生活にリラクゼーション法を浸透させようとするものだ。 この後、会場からの質問に答える形で阿部元校長は 写真:言美 歩、赤石 仁/取材・文:長井 寛、渡辺敦司 |
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