国語授業
学年・教科:3年生 国語科
単元:「すがたをかえる大豆」(光村図書3下)全10時間
本時(第6時)の目標:(1) 6、7段落の事例の内容を読み取ることができる。(2) 事例の順序性を考え、自分の考えを根拠を明らかにしながら話すことができる。
指導者:青山 由紀 教諭
使用教材・教具:タブレットPC、IWB、光村「国語デジタル教科書」、プロジェクター
授業の導入だけで見えてきた、これまでの学びや普段の鍛錬
筑波大学附属小学校
青山 由紀 教諭
続いて行われたのが、3年生の国語の授業だ。使用する教材は、説明文の「すがたをかえる大豆」。10時間の授業計画のうち、本時は第6時に当たる。授業はまず、前時の振り返りからスタートした。
「前時に学んだ豆腐のことを振り返りましょう」
と、青山教諭はIWBでデジタル教科書を操作し、豆腐作りの工程を写した3枚の写真を表示した。これは教科書に掲載されている写真だが、デジタル教科書なら写真だけを大きく表示できるので観察しやすい。
「前の時間に、この3枚の写真の順番を考えましたね。どういう順番になりましたか?」
と発問すると共に、青山教諭は大事な一言を付け加えた。
「理由も一緒に説明してください」
と。
IWBに映し出された写真を見て、児童たちは前時の学びを鮮明に思い出したようだ。
「右上、左上、下の順です。なぜなら5段落目に、『ぬのを使って中身をしぼり出し』『しぼり出したしるに、にがりというものをくわえる』と書いてあるからです」
と、明快な答えが返ってきた。児童たちが普段から、同教諭の授業を通して鍛えられていることがひしひしと伝わってくる。
続いて、デジタル教科書をIWBとプロジェクターで表示。映し出された本文は、何色ものマーカーで色分けされていた。
「教科書には、何が書いてありましたか?」
と青山教諭が促すと、児童たちは
「食品名!」
「作り方!」
「工夫!」
と即答した。打てば響く小気味良さだ。映し出されたデジタル教科書を見てみると、食品名は緑色、作り方は水色、工夫はピンク色というふうに本文を塗り分けていることがわかった。文章を細かく読み解き、内容を分類し、その学びをデジタル教科書に記録しているのだ。だから復習問題にも即答できるのだろう。
論理的に文の構成を読み解く力、根拠と共に意見を述べる力
「今日は6段落目から読みましょう」
と今日の学びがスタートするや否や、一人の児童が、
「この段落は二つに分かれてる!」
と“発見”をした。
「ではTPCを使って、作り方について書いた箇所を水色のマーカーで塗ってください。そして二つに分かれているならどことどこなのか、グループで考えてみてください」
と、青山教諭は児童の“発見”を上手に拾って、指示を出した。
「納豆の作り方と、みその作り方の二つが書いてあります」
との発表に、多くの児童たちはうなずいたのだが、青山教諭は疑問を投げ掛けた。
「なぜ二つ? 6段落目に書かれている食品名は、納豆とみそと、しょうゆの三つだよね? 三つの作り方が書いてあるんじゃないの? グループ内で考え、説明して下さい」
と、掘り下げてきたのだ。3年生にとっては、かなり高度な発問だ。だが、児童たちは見事に答えてみせた。
「6段落目の“つなぎ言葉”は、『目に見えない小さな生物の力をかりて』と書いてあります。だから、ナットウキンの力を借りた納豆と、コウジカビの力を借りたみそとしょうゆの二つに分けることができると思います!」
学びの振り返りに、デジタル教科書が活躍
続いて、7段落目の学びへ。先程と同様、作り方について書いた箇所を水色のマーカーで塗ることになったのだが……。ここで、児童たちから議論が巻き起こった。
「この段落は、作り方について書いてない」
との指摘があり、意見が割れたのだ。
青山教諭は、まず「作り方について書いてある」と思うグループに発表させた上で、「書いてないと思う派」に反論させた。
「7段落目の最初に、『とり入れる時期や育て方をくふうした食べ方』と書いてあるので、これは作り方ではない」
議論は紛糾。どう着地させるのかと見守っていると、一人の児童がすばらしい“発見”をした。
「『だいず』の字が違う!」
「7段落目は、漢字の『大豆』ではなく、カタカナの『ダイズ』になっています。カタカナの場合は植物のことで、漢字の場合はダイズの種のことだと、2段落目で学びました。だからここは、植物であるダイズの育て方について書いてあるのだと思います!」
何時間も前の学びを忘れず、知識として活用するとは、感嘆の一言。全員にその学びを再確認させるために、2段落目の学習時に使ったダイズと大豆の写真を、青山教諭はIWBに表示した。画像には当時の書き込みも残っているので、全員が確実に学びを振り返ることができた。
しっかりとした授業計画があってこそ、ICTは効果を発揮する
いよいよ授業も最終段階。最後の8段落目をみんなで音読すると、青山教諭は重要な発問を次々と投げ掛けた。
「この作者が、一番言いたかったのは何でしょう?」
8段落目をしっかり読み解いていた児童たちは、この難問にも明快に答えた。
「二つあります。大豆はたくさんの食べ物に形を変えてすごいこと。大豆のいいところに気づいて、食事に取り入れてきた昔の人たちはすごいこと」
作者の伝えたかったことを押えても、授業はまだまだ終わらない。青山教諭は
「作者はどうしてこの順番で書いたのだろう? この順番に書いた理由は何だろう?」
と問い掛けたのだ。
この構造解析でも、デジタル教科書が活躍した。マインドマップを表示して全体の内容を俯瞰させるとともに、教科書に載っている写真を掲載順にスライドショーさせ、考えの手助けとしたのだ。
そして児童たちは、素晴らしい意見を次々と発表し始めた。
「3段落目に『いちばん分かりやすいのは』と書いてあるように、最初は簡単な例から書いて、後に行くに従って作り方が難しくなっています」
「後ろに行くに従って、手を加える量が増えています。だから、水色でマークした箇所が、後ろに行くに従ってどんどん増えています」
マーカーで色分けすることで、文章の構成を視覚的に把握しているからこその発見だ。
ここで、今日の授業は終了。わずか45分の授業見学だったが、これもかなり濃密な時間だった。しっかりとした授業計画や発問が土台にあってこそ、TPCやデジタル教科書は効果を発揮する。そして日々の指導の積み重ねが、確実に児童を成長させる。改めてそう実感できた授業だった。
写真:言美 歩/取材・文:長井 寛 ※文・写真の無断使用を禁じます。
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