2011.07.12
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16th New Education Expo in 東京 現地ルポ(vol.2)

「New Education Expo in 東京」が6月2~4日の3日間、東京・有明の東京ファッションタウンビルで開催された。先週に引き続き、その模様を紹介する。第二弾は「フューチャースクール」をキーワードにしたセミナーと展示。近未来の教育の姿を本イベントでの発表から見てみよう(なお、セミナーは事前に行った「あなたが見たい! New Education Expo 2011セミナー投票アンケート」結果より、上位ランクを取材しました)。

1人1台PCで互いに学び合い・教え合う「協働教育」へ

総務省は平成22年度より「フューチャースクール推進事業」を行っている。本事業では、教育現場においてICTを利活用した「協働教育」を推進するため、ICT機器によるネットワーク環境を構築し、学校現場における情報通信技術面を中心とした課題を抽出・分析するための実証研究を実施している。具体的には東日本、西日本、それぞれ5校ずつの小学校で、全児童に1人1台のタブレットPC(TPC)を配布。インタラクティブ・ホワイト・ボード(IWB=電子黒板)や校内無線LANを整備し、整備前後で教師、児童にどのような変化が表れているのかを調査する。本イベントでは、この実証実験の経過報告が各校から行われた。また展示会場には、未来型教室の提案「フューチャークラスルーム」が設置された。

セミナー
1人1台PCを活用した協働教育の取り組み
~フューチャースクール実証校の事例から~

【コーディネータ】
東京工業大学 名誉教授 清水 康敬 氏
総務省情報流通行政局 情報通信利用促進課 課長補佐 小林 知也 氏
【フューチャースクール実証校5校(小学校)】
石狩市立紅南小学校 教諭 加藤 悦雄 氏
寒河江市立高松小学校 教諭 石澤 紀雄 氏
内灘町立大根布小学校 情報教育・FS推進担当 川井 勝弘 氏
長野市立塩崎小学校 教諭(研究主任) 近藤 諭 氏
葛飾区立本田小学校 校長 筒井 厚博 氏

全児童・全教師がICT機器活用にチャレンジ

東工大の清水氏、総務省の小林氏による「フューチャースクール推進事業」実証研究の概要の説明後、東日本での実証校5校の担当者より報告があった。どの学校も、これまで特別にICT機器について積極的に導入・活用を行ってきたわけでも、情報通信技術に詳しい教師が多くいるわけでもない、ごく普通の公立小学校だ。当初は教師内にTPCやIWBの使用への戸惑いが大きかったようだが、「とにかく使ってみよう」ということでスタートを切り、各校に毎日常駐しているICT支援員の協力もあり、徐々に利用へのハードルが低くなってきているという。

大根布小 川井勝弘 教諭/本田小 筒井厚博 校長/塩崎小 近藤諭 教諭/紅南小 加藤悦雄 教諭/高松小 石澤紀雄 教諭
上から時計周りに 大根布小 川井勝弘 教諭/本田小 筒井厚博 校長/塩崎小 近藤諭 教諭/紅南小 加藤悦雄 教諭/高松小 石澤紀雄 教諭

TPCの利用方法として、録画機能を利用して体育のマット運動を録画、再生をしてポーズなどの検討を行う(高松小)、スカイプを利用して社会で沖縄の小学校にインタビュー活動を行う(塩崎小)など、機器の特性を活かした実践内容が報告された。各校共通で出された成果としては、児童の学習意欲の向上、課題としては、機器操作にかかる時間ロスやトラブルなどが挙げられた。

途中経過とはいえ、現場からの実感の伴った報告に、満席の参加者たちは一心に耳を傾けていた。平成22年度に開始された本事業は、23年度も引き続き同じ学校で実施されている。

展示ゾーン

[フューチャークラスルーム] 学びの形に合わせ、教室環境が柔軟に対応

フューチャークラスルーム

展示会場には今回初登場となる「フューチャークラスルーム」が設置された。普通教室をICT空間に変えられるシステム「スマートインフィル」を利用して作られた教室は、三方にプロジェクターが設置され、照明はLED。こうした機器はすべてスレートPC1台で制御が可能となっている。椅子と机が一体型の「ノードチェア」はキャスターで自在に移動できる。生徒はここに座り、前を向いて教師の授業を聞いた後、すぐ小グループに分かれ、ディスカッションに移ることも可能。このような「協働教育」の実現に向けた工夫が随所に見られた。

[最新スレートPC・タブレットPC] 「1人1台」の実現に向けて各社工夫を凝らす

「最新スレートPC・タブレットPC」ハンズオンコーナー

今年は、富士通をはじめ各社のスレートPC、TPCが勢揃いした「最新スレートPC・タブレットPC」ハンズオンコーナーがお目見えした。総務省の「フューチャースクール推進事業」でもTPCが実証校の全児童に配られたが、こうしたPCの学校現場での活用がいよいよ現実的になってきたことも、同コーナーでの複数企業による展示につながっているようだ。

富士通・シャープ・ソフトバンク各社のスレートPC右:子どもにも簡単に扱えて、持ち運びも容易な富士通のスレートPC
左上:シャープはGALAPAGOSを展示。小型化もすすむ
左下:スレートPCの先駆け「iPad」を展示したソフトバンク

富士通は学校で児童が利用するだけでなく、自宅へ持ち帰ってからも、PC上で宿題や授業の復習ができる「学びの連続」を重視したソフトウェア開発を行っている。時間割表からそれぞれのノートや教科書、ドリルへリンクが張られ、小学生でも簡単に操作ができるよう工夫されている。また、低学年の体力を考慮し、TPCではなく、スレートPCにこうしたソフトを内蔵し、持ち運びも容易にと考えられている。

写真:言美歩/取材・文:菅原然子
※写真の無断使用を禁じます。


 

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