2019.10.24
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不自然な対話にしないために

小学校英語での変な対話って結構あるんですよね。日本語に直して初めて気付くのですが。「そのシチュエーションで,そういうこと言う?」「そんな唐突に言われても......」と思ってしまうような不自然な対話をしているということに,英語だと気付かないことがよくあります。不自然でなく,自然な対話にするために何が必要なのでしょうか。

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭   常名 剛司

小学校英語の言語活動では,場面や状況設定が与えられた中で,教師と子ども,子どもと子どもでの対話による意味のあるやりとりをする中で,英語表現を身に付けていくことが求められています。
教師は,授業の中で様々な新出表現を導入して,子どもたちの対話を作りだそうと単元や授業をデザインしていきます。
教師としては,子どもたちが新出表現を使って活発にやりとりをしてさえいれば,その時間のねらいには迫れているだろうと思って,やりとりをしている状況だけで満足してしまいがちですが,そのやりとりを日本語に置き換えて冷静に考えてみると,不自然でちょっと変な対話になっていることに気付くことがあります。
また,不自然な対話ばかり練習していると,実際の場面や他の場面に学習が転移しないのです。
その活動が「新出表現の練習だけ」になっていないかどうかが不自然な対話になるかならないかの分水嶺ですよ。

【不自然な対話の例】

A: What sport do you like?

B: Oh, I like rugby. Do you like rugby?

A: Yes, I do.

B: What sport do you like?

A: I like tennis.

これだけを見ると,どこが不自然なのか分からない方が多いと思いますが……

①買い物に行く途中で,「好きなスポーツなに?」という話は始まらない

不自然な対話とは,場面や状況がなく,キーセンテンスをただ使っているような対話です。
例えば,友達と電車に乗って買い物に行く途中,空いている席に二人で座りました。
そこで,何の前置きもなく「What sport do you like?」と聞かれるようなものです。
授業では,子どもに「I like rugby.」などと答えることを期待しますが,二人で電車に乗って買い物に行く場面で,いきなりそんなことを言われてもびっくりしてしまいます。だから,
普通の感覚の人が答えるなら「Why?」(何でそんなこと聞くの?)でしょう!

②自分の思いや考えだけだと,思いやりのない対話になってしまう

意外と不自然な対話になってしまうのが,自分の思いや考えのみを言い合うような思いやりのない対話です。
具体的には,好きなスポーツについて2分間話し合う場面で,「What sport do you like?」と聞かれて「I like rugby.」というところで教師からの「はーい。やめ!」などという指示で,対話がブツッと切れる言いっぱなしで終わるような対話のことです。
そのような不自然な対話では,他の場面や社会で生きて働くような自然な対話にはなりません。小学校英語で自然な対話にするには,ポイントが2つあります。

【自然な対話の例】

T: I watched a game of rugby world cup. It’s exciting. (教師による場面や状況設定)

A: Let’s talk about sport. (話題を振る表現)

A: What sport do you like?

B: Oh, I like rugby. Do you like rugby?

A: Yes, I do.

B: What sport do you like?

A: I like tennis.

B: Nice talking to you. (対話を終える表現)

①場面や状況を設定する

子どもたちに対話をさせる前に,場面や状況設定を与えましょう。「昨日のラグビーの試合見た?」と言ったちょっとした前振りでもいいのです。場面や状況があれば,唐突な話題でびっくりすることもありません。

②あいさつや話題を振る表現を付け加える

私がいつもsmall talkの時に子どもに使わせているのが「Let’s talk about 〜.」という話題を振る表現です。この言葉一つで対話の場面や状況がはっきりするものです。また,対話の最後が言いっ放しにならないように,対話を終える表現である「Nice talking to you.」(話せてよかったよ。)を付け加えさせることも忘れません。独りよがりな対話にならないように,思いやりのある対話をさせたいものです。

自然な対話例における太字の発話は,毎回のsmall talkで使いまわして,それらで本時に学習したいキーセンテンスを含んだ対話をサンドイッチさせるようにしたいものです。
先日,今年度の公開授業研究会が終わりました。木曜日の6時間目に設定された私の外国語活動の公開授業は,子どもたちにとっては当日だけで3回目の公開授業で,集中力がもたないのではと想定していました。授業前に風であおられたカーテンでこの日だけ特別に用意した花瓶が倒れて,スーツの上着がビショ濡れになり,「『風が吹けば桶屋が儲かる』はずじゃなかったのか!」という思いが一瞬のうちに脳裏をよぎりましたが,ちょうど暑かったので,上着を脱ぐ良い口実になると開き直って授業ができました。私の経験則では,暑い時期の疲れが溜まる週末の午後の時間帯に,「子どもたちが鼻血を出す」もしくは,「ハイになってケンカが起こる」くらいの想定はしていて,それに近い状況にはなりましたが,最後まで集中して学習した子どもたちの底力には恐れ入るばかりです。子どもとともに,真剣勝負で授業を作れる喜びを感じさせてもらえました。そのような場を作ってくれた子どもたちや参観者の皆さんにお礼を言いたいです。ありがとうございました。

次回も英語にまつわる身近な話題を提供していきたいと思います。よろしくお願いします。

常名 剛司(じょうな つよし)

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
小学校英語教育の研究を担当しています。自律的に取り組む本物の文脈の中で,子どもの資質・能力を育む小学校英語教育のあり方について考えていきます。

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