2019.08.27
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英語が苦手な先生でもできる!担任の小学校英語授業

いよいよ来年度から新学習指導要領が本格実施されます。それに伴い小学校英語の授業も3年生からになります。10年前に外国語活動が入ってきたときに,もともと高学年の担任はハードルが高いと感じている先生がいる上に,さらに英語もとなると高学年の担任の希望者がいない!と管理職の先生が嘆いていました。英語に苦手意識のある先生は小学校英語の授業をどうすればいいのでしょうか。

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭   常名 剛司

「もしも高校四年生があったら、英語を話せるようになるか」

という題名の金沢優の本を昨年読みました。上智大学法学部在学中に英会話スクールに数年間通ったものの英語を話せるようにならずに挫折を味わったという本人の体験がもとになっている小説です。作者が考えるこれまでの英語教育の問題点がストーリー仕立てで書かれた本です。

なかなか刺激的な題名ですよね。今ならそんなことはないと言えるかもしれませんが,一昔前なら確かにその通りだったのかもしれません。私の高校時代なんて,絶対にその通りです。

しかし,なにもその当時の英語教育を批判しているわけではありません。日本で第2言語として英語教育をするというのは,他の国のやり方がそのまま当てはまるはずがありません。日本人の特性に合わせた教育は,他のどこかの国と同じやり方がそっくりそのまま使えるはずはないのです。

これまでの英語教育者の方々が試行錯誤を重ねて,今があるのです。苦しい時代を乗り越えてきたのです。もちろん,今も苦しい時代なのかもしれませんけれど。いや,やっぱりちょっと苦しいかも知れませんね。今,私たちが必死になって英語教育研究をしていますが,20年後の人たちには,「一昔前はひどかった」なんて言われてしまうのかも知れません。しかし,それでいいんです。20年後には大きく進歩しているということだから。

教師や研究者が子どもたちと必死になって1つ1つ小さな石を積み上げるようにして実践や研究を積み重ねていく。そうして,気づけば万里の長城になっているはずです。いや,英語だから自由の女神といったところでしょうか。

ベテラン教師や英語が苦手な教師のための簡単に英語を教える方法

その一昔前の教育を受けて小学校教師になった人たちは,英語に苦手意識をもっていても何も不思議ではありません。私自身もそうでしたし,私は今でこそ小学校英語教育の研究をさせてもらっていますが,もともとの専門は社会科です。

大人になってから自分で勉強して英語を少しは使えるようになりましたが,使えるようになるまでは,長い道のりでした。だから,英語が苦手なベテラン教師の気持ちはよく分かります。

逆に言うと,若い先生たちの英語へのハードルの低さにびっくりすることすらあります。何人もの教育実習生が「実習で英語の授業をやりたいです!」と勢いよく言うのを聞くと,純粋にすごいなあと思って「よし。やってみなよ!」と言っています。でも,ここだけの話,内心は「やったことないのだから,どうせ小学校英語なんて簡単だと思っているんだろう。そんなに簡単じゃないよ」とも思ってるんですけどね。でも,今日はベテラン教師や英語が苦手な教師のために簡単に英語を教える方法をお話しします。苦手な人はこれでいいんです!というお話です。

①自分は話さない!話すのは子どもやALTやICT

小学校英語の授業をしたがらない大方の教師は,自分の英語力に自信がなく,下手をすると変な英語を話していると子どもにバカにされるくらいに思っています。

でも,ちょっと待って下さい。なんでもかんでも自分で英語を話さなくてもいいんですよ。体育の授業だって,鉄棒もマット運動もサッカーもだいたい自分でやらずに子どもの中の上手な子に「○○くん上手だから手本見せてね!」と上手いことを言ってやらせた後に,「すごーい!上手!じゃあ,みんなもやってみようか」となりますよね。

大事なことは,教師である自分が英語を話すことに四苦八苦して,「やった!ちゃんと英語を話せた!」と思うことではありません。教師が英語を話すことが大切なのではなく,子どもが英語を話せるようになることが大切なんです。四苦八苦しないように子どもやALTやICT(デジタル教材)の力をどんどん借りましょう。そのためにALTがいるし,ICTがあるんですから。

②英語は話さない!読めばいい

英語が口からポンポン出てくるのはなかなか難しいものですが,書いてあるものを読むならそこまで難易度は高くないはずです。ですから,授業で使うフレーズや教室英語などは,慣れるまでは教室後方の壁面に「みんなのために作ったよ。外国語の授業で使う英語だからね!」と言って紙に書いて掲示物として貼っておけばいいんです。

そう言いながら,教師は授業中に,何も見ずに英語を話しているフリをして,それを読めばいいんです。Small TalkやTeacher Talkでは,写真に吹き出しを付け足したプレゼンを見ながら話をすればいいんです。文字や写真があれば,教師も話しやすいものです。そうして読んでいるうちに,いつの間にかその英語が自分のものになっていきます。

③外国人になりきらない!いつも通りでいい

最近は,減ってきたように感じますが,外国人から見たらちょっと日本人は大人しく見えるのか,時々すごくハイテンションで授業を盛り上げようとするALTがいます。それを見て,「英語の授業は元気よく,大きな声で,ハイテンションで,外国人になり切って盛り上げないといけない」と勘違いしてしまう教師がいます。

でも,なんで国語や算数などは落ち着いてじっくりと学習をするのに,英語の授業だけは「イエーイ!」なのでしょう。他の教科と同じようなテンションで授業をすればいいのです。

私は,これまでに海外のインターナショナルスクール,アメリカンスクール,スウェーディッシュスクール,アフリカの公立校,中国の公・私立校などの授業を自分の目で見てきましたが,なにかにつけて「イエーイ!」とやっている学校は1つもありませんし,アメリカやイギリスの学校では,すべての授業で「イエーイ!」とやっているはずがありません。

他の各教科と同じようなテンションで,日本人の自分らしい授業でいいんです。無理に昔のステレオタイプな外国人教師になる必要はありません。もちろん,教師も子どもも共に楽しんで自然に盛り上がるのはいいですよね。

英語ができることよりも授業ができることの方が大事

英語が苦手でも,話せなくても,よい英語の授業をする先生はいます。大抵そういう教師は他の教科の授業も上手なのです。ただ英語ができるだけで授業ができない教師よりも,英語はできないけど授業が上手い教師の授業の方が何倍も面白いものです。

授業が上手い教師は,子どもの機微を読み取って臨機応変に授業を組み立て子どもの力を伸ばしていくので,子どもには教師が使っている英語なんて気になりません。子どもは英語ができるようになるのが楽しいのですから,教師が英語ができるかどうかなんて関係ないのです。

さあ,2学期に向けて

終わってみると,「あっという間」の夏休み。もう終わっている学校も多いかもしれません。セミの鳴き声もいつまで聞こえるのでしょうか。

梅雨明け前に子どもから教えてもらったモノマネ。まだ梅雨明け前で雨が降ったり止んだりで天気はどんよりしていた頃。真面目に算数の授業をしていましたが,暑さにへばって一段落していると,一番後ろの席に座っている子が,「先生!セミ!」と言って後ろを向きました。耳を澄ませていると確かに一匹のセミの鳴き声が聞こえてきました。まだ梅雨も明けてないのに,もうセミが出てきたんだなと思って「もうセミか~」と言うと,ニヤニヤしながらその子が前を向きました。手で自分の下唇を摘まんで左右に揺らしながら「シー」と言っています。セミそっくりなセミの鳴き声のモノマネに大笑いしてしまいました。今度は,夏の終わりに私が「まだセミがいるよ!」と言って誰かを笑わせようと思っています。

次回も英語にまつわる身近な話題を提供していきたいと思います。ちなみに「セミ」は英語でcicadaです。よろしくお願いします。

常名 剛司(じょうな つよし)

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
小学校英語教育の研究を担当しています。自律的に取り組む本物の文脈の中で,子どもの資質・能力を育む小学校英語教育のあり方について考えていきます。

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