2016.02.16
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日本独自のメニューを考えよう~ランチメニューを作ろう 【食と文化】[小5・外国語活動]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第112回目の単元は「日本独自のメニューを考えよう~ランチメニューを作ろう」です。

食は生活と深く関係するため、外国語であっても食に関する言語は、子ども達が抵抗なく取り組めます。この点が外国語活動での食育の可能性を示しています。外国のゲストティーチャーにお勧めの「日本のランチメニュー」を紹介する場を設定し、日本の食事の良い点を考え、自国の良さに気づくことができた授業5時間(授業計画は下記参照)のうち、2時間目の「日本の食事について考えよう」を紹介します。

1時間目:食べ物や料理名の英語での言い方を知る。
2時間目:日本の食事について考えよう。
3時間目:オリジナルメニューを考えよう。
4時間目:オリジナルメニューの発表会をしよう。
5時間目:ゲストティーチャーにオリジナルメニューを伝えよう。

旬の食材を知り、外国語で発音するゲームをする

授業は、外国語で挨拶をすることから始まりました。
日直当番「Let’s start our English class. Shall we?」
全員「Yes. Let’s!」
日直当番「How are you? What’s the weather like today? What day is it today?」
 と、日直当番がリードして始まりの挨拶をすることで、外国語の学習への意欲を高めます。

まずは前時に学習した、日本と外国の食作法の違いを思い出し、本時では日本の料理・食材に着目することを伝えます。そして、外国語の勉強と共に日本について知り、最後に外国のゲストティーチャーに日本を紹介するという目標を確認します。

次に、旬の食材を知り、外国語で発音するゲームをします。これは、「I’d like ○○」と、目的語に野菜名を入れて発音し、同じ班の友達と旬の時期が重ならないように留意するゲームです。子ども達はリズムに合わせてチャンツを行い、元気良く声を出しました。

このゲームの後、子ども達からは
「旬の食材という言葉は聞いた事がある」
「家庭科の授業でも学習をした」
「この野菜(ニンジン)の旬は、この時期(冬)なのか!」
 といった感想が出てきましたので、
「旬の食材は、一番美味しく栄養たっぷりなのです」
 と伝えました。

行事食について知る

給食の献立表から、旬や行事に関係する料理を確認する

給食の献立表から、旬や行事に関係する料理を確認する

続いて、
「行事にはごちそうが付くことが多く、それぞれのごちそうには意味が込められています」
 と説明し、給食の献立表を見て、季節によって旬の食材が使われていること、行事と関係している食事があることを確認します。
「何かのイベントの時に、こんなものを食べるということはありますか?」
 と聞くと、子ども達からは
「誕生日にケーキや好きなものを食べる」
 という言葉が返ってきました。さらに、
「お祝い以外にありますか?」
 と尋ねると、
「お正月のおせち料理。食べ物に意味があると聞いたことがある」
「クリスマスにケーキを食べる」
「この前、月見団子を食べた」
「毎年、恵方巻きを食べる」
 などの発言がありました。

こうした活動を通じて、子ども達は、行事にはごちそう(行事食)が付き、それぞれに意味が込められていることに気づいたようです。
「自分達の生活を豊かにする行事を大切にし、行事食を楽しみましょう」
 とまとめました。

給食の献立表から

次に、栄養士の先生が毎月出している献立表の中から、旬の食材と行事が関係している料理を見つけます。この時、月ごとに担当班を決め、班でその月を調べる責任感を持たせるようにしました。

子ども達からは
「この料理も行事食なんだ」
「 ○月が旬なの?」
「この料理、大好き。もっと給食に出てほしい」
「こんなにたくさんあるの」
「これおいしいよね」
 といった感想が出ました。

教師からは
「一年中食べたいものを手に入れることは出来ますが、それぞれの地域でよく育ち、よく採れる季節があります。このように、おいしく栄養たっぷりの時期を『旬』と言います」
 と説明しました。

各月の旬や行事に関係するお勧めの料理を伝える

旬の野菜の一覧表

旬の野菜の一覧表

そして、先ほど調べた月ごとの旬や行事に関係する料理から、お勧めのものを班ごとに発表しました。その際、
「What food would you like in(季節)?」
「I’d like ○○ in(季節)」
 というように、外国語の表現の最後に「in(季節)」を必ず入れるようにして、季節を意識させるための質問と答え方の練習をしました。

子ども達は、皆の発表を聞く度に、
「その献立、私もお勧め!」
「コロッケの材料はジャガイモだ。大好きな岩小コロッケは、春の旬の食材で作った献立だったんだ!」
 などと、一つ一つのメニューに対して共感し、献立を思い浮かべ、
「給食を早く食べたくなってきた…」
 というつぶやきまで聞こえてきました。

班ごとに調べた、各月の旬や行事に関係する料理

班ごとに調べた、各月の旬や行事に関係する料理

本授業の子ども達の感想です。
「好きなメニューばかり。やっぱり給食は美味しい」。

「給食には、旬や行事に関係するメニューがいっぱい」。

「すべておいしいメニューなのは、旬と関係しているのか、そのメニューが好きなのか、どちらかと思った」。

「毎月、必ず行事食があるということがわかった。行事食とわからずに食べているメニューがあった」。

子ども達は、季節がある国だからこそ、美味しく栄養のある旬の食材を食べていることに気づくことができたようです。また、日本独自の行事食があることによって、より豊かな食生活を送ることができることにも気づくことができました。

授業の展開例
  • 外国のゲストティーチャーに紹介したメニューを、実際の給食に出してもらう(給食の時間)。

藤田 雄也(ふじた ゆうや)

芦屋市立岩園小学校 教諭
研究大会を機に、「ちょこっと食育」を取り入れ、様々な教科で食育を進めることができないか、日々研究を積み重ねている。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文・藤田雄也/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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