2011.09.20
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ぱっと凍る過冷却 【食と科学】[小4-6・クラブ活動]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第六十一回目の単元は、「ぱっと凍る過冷却」。過冷却の様子を実験で確かめます。

ガラスびんの水の中に氷のかけらを入れます。すると、目の前で水がみるみる氷になっていきます。一瞬のできごとですから見逃さないでください。これは物質 が液体から固体に変わる温度(凝固点)以下の温度でも液体のままでいる状態(過冷却-かれいきゃくといいます)を利用した実験です。クラブ活動で取り上げ てみました。1時間の授業です。

水をぱっと凍らせる――過冷却の実験

【用意するもの】
・氷
・ボール
・塩
・ガラスびん
・温度計
・ラップ
・輪ゴム
・ハンマー
・タオル
実験の手順は次の通りです。

(1)ガラスびんに水を8分目くらい入れ、ラップでふたをし、輪ゴムで止めます。
(2)ハンマーで細かく砕いた氷、水、塩をボールに入れかき混ぜて、氷水を作ります(氷水の量はびんが完全に隠れるくらいを目安にしてください)。
(3)氷水の中に(1)のびんを入れ、静かに約40分間そのままにします。
(4)びんを静かに取り出します。このとき中の水が少しでも凍っていたら失敗です(もう一度初めからやり直します)。
(5)凍っていないことを確認したら、ラップを取り、小さな氷のかけらをびんの中に入れると、一気に凍っていきます。
  • 氷をハンマーで砕く

  • 砕いた氷、水、塩を混ぜる

  • 氷水の中に、水の入ったびんを入れる

  • びんを静かに取りだす

  • 氷のかけらをびんに入れる

  • 水か一気に凍った

なぜ一瞬で凍るの?

通常、水は零度以下になると凍ります。ところが水を静かにゆっくりと冷やすと、マイナス12度ぐらいまで凍らずに液体のままの状態を保つことがあります。これを過冷却といいます。

これは、水が凍るきっかけを得られずに液体のままでいるようなものです。そこへ小さな氷のかけらのような凍るきっかけとなる物を入れたり、衝撃を与えたりすると、固体つまり氷へと一瞬で変化するのです。今回の実験のように、ほんの小さな氷の粒が入るだけでも凍ります。

ペットボトルに麦茶を入れて冷凍庫で数時間冷やし、ふたを開けると、同じ現象が起こります。ふたを開けたことが衝撃となったのです。

授業の展開例
  • 透明な氷を作ってみましょう。氷が白く濁るのは、急速に凍らせたことで氷の中に空気が残ってしまったことが原因です。製氷皿の下に割り箸や発砲スチロールなどを置いて、ゆっくりと凍らせたり、一度沸騰させて空気や不純物を取り除いた水を使ったりしてみましょう。
  • 凍らせて作る食品には寒天や高野豆腐などがあります。作り方を調べてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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