2017.03.15
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【東日本大震災を取り上げた授業】さいたま市立海老沼小学校 教諭 菊池健一さん (リポート2) 「震災を身近に感じるために」

被災地や被災校支援のために、学校や教員の皆さんが取り組んだ教育活動を紹介します。今回は、さいたま市立海老沼小学校 教諭 菊池健一さんの授業実践全4回のうち、第2回目です。

震災の実態を知るために新聞スクラップ

前回の取組で、児童は自分や家族が東日本大震災の当時に、どのような様子であったかを思い出したり、インタビューしたりして知ることができました。しかし、児童が住んでいる埼玉県では東北の被災地に比べたらそれほど多くの被害が出たわけではありません。また、震災から間もなく6年になりますので、児童の意識の中では震災がもう遠い昔の出来事のようになっています。そこで、被災地では今でも懸命に復興に向けて頑張っていることや、それでもまだ復興にはほど遠い現状があり、苦労されている方がいることを知ってほしいと考えました。そこで、東日本大震災を取り上げた記事をスクラップし、児童と話し合うことにしました。

取り上げた記事は、昨年12月にようやく遺骨が発見された女の子の記事です。福島県の大熊町で、行方不明になっている女の子をそのお父さんがずっと探し続け、ようやく見つかったという内容です。大熊町は原発の影響で立ち入りが制限されているので、なかなか見つけることができなかったそうです。この記事を児童とスクラップし、感想を交流しました。
「原発って何だろう?」
「どうして、街には入れないのかな?」
「〇〇ちゃんが見つかって本当に良かった」
「お父さんが5年以上ずっと探し続けていたのにびっくりした」
と、児童は感想を述べていました。

児童のスクラップシート 児童に示した関連記事

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児童は、この活動を通して、「原発とは何か」「福島県はどうなっているのか」「福島の人は今どうしているのか」などの疑問が湧いてきました。そこで、福島県の取材をずっと行ってきた新聞社の方にゲストティーチャーに来ていただき、福島県の現状について教えてもらうことにしました。

新聞記者から生の話を聞く

ゲストティーチャーに来ていただいたのは、朝日新聞社編集委員の上田俊英さんです。上田さんは、本社の科学医療部長などを務めた後、福島支局で東日本大震災の取材に当たりました。そして、編集委員になった今も、被災地の取材を続けていらっしゃいます。その上田さんから、福島県の今の様子を聞くことができました。上田さんの話は、以下のような内容でした。

  • 福島県ではまだまだ原発の影響で立ち入りができない地域がある(バリケードで囲まれた様子を見た時に、映画の世界のように思った)。
  • 福島県で原発の近くに住んでいた方は、全国に避難している(だから、原発の問題は福島の問題だけではない)。

  • 福島県は電気をたくさん作っている。私達が使っている3割は福島県の電気である(福島のおかげで電気が使える現実がある)。

福島の原発近くに住んでいた人達が、震災当時、自分達の住んでいるさいたま市(さいたま市にあるスーパーアリーナ)にも避難してきていたことを知って、児童はびっくりしていました。そして、福島の方達と色んな意味でつながっていることを意識することができました。

児童に話をする上田さん 上田さんが示した資料

児童に話をする上田さん                  上田さんが示した資料

震災が身近に捉えられていく

新聞社の上田さんの話を聞いて、児童は震災のことを自分の身近なこととしてとらえることができるようになってきました。そして、自分や家族の経験と照らし合わせて、震災の怖さを改めて感じることができたようです。

これから、児童は、自分や家族が経験したことや、新聞社の上田さんの話を聞いて感じたことを教科の学習で作文にまとめます。そして、3月11日に向けて、新聞スクラップも継続していきます。児童がこれから震災を忘れないために、しっかりと児童と震災に向き合っていきたいと考えています。

文・写真:菊池健一

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