2007.10.03
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「伸ばそうICTメディアリテラシー」親子セミナー開催リポート ケータイやネットの使い方を親子で考えよう

「『伸ばそう ICTメディアリテラシー』親子セミナー」が8月31日、東京・中央区の内田洋行東京ショールームで開催されました。携帯電話やインターネットなど身近なツールを題材に、ICTとの上手なつきあい方を考えながら、親子のふれあいの場としても活用してもらおうと企画された今回のイベント。参加した親子の表情とともに、セミナーで使用したICTメディアリテラシー教材の内容も紹介します。

「伸ばそうICTメディアリテラシー」親子セミナー開催リポート~ケータイやネットの使い方を親子で考えよう

インターネットの「わくわく」と「ハラハラ」を疑似体験

講師プロフィール

中尾教子(なかお・のりこ)

中尾教子
(なかお・のりこ)
株式会社内田洋行 教育総合研究所 教育情報化コーディネータ。鳴門教育大学学校教育学部中学校教員養成課程国語科卒業。 2001年から5年間、目黒区教育委員会指導課・情報教育指導員として、延べ6000人の児童と300人の教員の情報教育を支援する。 2006年3月静岡大学大学院情報学研究科修了。修士(情報学)。2007年4月より現職。

 夏休み最後の週末を控えたこの日のセミナーには、日焼けした顔の小学生とその父母が参加。講師の中尾教子さんのナビゲートで、身近なICTメディアへの理解を深めていきました。

 第一部のテーマはインターネット。「みなさんはネットでどんなことをしていますか?」との中尾さんの質問に、「アニメやゲームの動画を見ている」「情報を調べたり、旅行の予約をしたりしている」といった声が上がる一方、「急に画面が真っ黒になって、ガイコツの絵と人の叫び声がするページに変わった」(男子小学生)、「『おめでとうございます、この金額を振り込んでください』という画面に飛ばされて困ったことがある」(父親)といった体験談もあり、子どもも親もネットの「ハラハラ」を身近に感じていることがわかりました。

 そこで、インターネット上の教材コンテンツ「ICTシミュレーター」を使って、ネット利用に潜む危険への対処法を疑似体験しました。「こんなページが出てきたらどうすればいいか、一緒に話し合ってみてください」という指示を受け、それぞれパソコンの前に移動すると、画面には「プレゼントキャンペーン開催!」の文字が。ここで「申し込む」をクリックするとメールアドレスや名前、生年月日を入力する欄が表示され、情報を送信すると、大量の迷惑メールが届くというしくみになっています。

気軽に相談できる親子関係が重要


迷惑メールシミュレーターでは、ネット上に溢れる迷惑メールの典型的な事例を体験することができる。選んだ選択肢によって、「ウィルス感染」のアニメーションのほか、迷惑メールの内容や影響、正しい対応についての丁寧な解説文などが表示される。

 メールボックスには、「おもしろいゲームを見つけたよ」「すてきなお友達がいっぱい」など、子どもの興味をひきやすいタイトルのメールが並んでいます。メールを開くと「URLをクリックする」「無視する」「捨てる」などの選択肢が表示され、選んだ対応によって別のコンテンツに移ったり、正解と解説が表示されたりします。タイトルにつられてURLをクリックすると、さらに大量の迷惑メールが届いたり、架空請求のサイトに飛ばされたりするほか、興味本位で添付ファイルを開くとパソコンがウィルスに感染してしまうなど、実際に起こりうるトラブルも、安全な環境でリアルに体験することができます。

 今回参加した子どもたちは全員小学生だったため、パソコンでのメール利用はあまり経験がない様子。「日本語以外の言葉だと、文字化けしてこういうタイトルになる。こんなメールがきても捨てていいんだよ」と父親に教えられ、「お父さんのところにも変なメールはくるの?」などと聞いたりしながら、自分の選択結果を確認し、迷惑メールへの正しい対応をワークシートにまとめていました。

 続いて、架空請求のように子どもだけでは対応できないトラブルに遭ったとき、親子で話し合って解決する方法を学びました。ここでは親と子が別グループに分かれ、子どもは親にどう相談するか、親は子どもにどう答えるかを、相手のセリフも予想しながらワークシートに書き込みます。

 なかには、「自分でしたことだから自分で何とかしなさい」という親の厳しい反応を予想した子どももいましたが、父母からのメッセージは「それは架空請求のメールだから無視して捨てなさい」「放っておいても何もないから大丈夫だよ」といったやさしい内容。「メールアドレスや名前などの個人情報はなるべく送らないこと。もし迷惑メールがきてもお父さんお母さんは怒らないから、早めに相談しよう」との中尾さんの呼びかけに、子どもたちも安心した様子でうなずいていました。

便利なケータイのルールとマナーを学ぶ


おつかいシミュレーターでは、電車内でのケータイの使い方、書店でのデジタル万引きの危険、カメラでの撮影など、子どもたちにも身近なケータイの利用シーンを紹介。機能を理解し、マナーやルールを守って使うことの大切さを楽しく学ぶことができる。

 第二部のテーマは、参加した小学生の所有率も高かった携帯電話。中尾さんは、「ケータイでどんなことができるのか、気をつけることは何かを考えてみよう」と声をかけ、同じ教材コンテンツの「おつかいシミュレーター」を使った体験に移りました。

 教材は、母親のおつかいで隣町の本屋へ予約した品を取りに行くというストーリーを楽しみながら、携帯電話の使い方に関するさまざまな選択肢に答えるというもの。電車内での通話やデジタル万引きといったルールやマナーに関することだけでなく、QRコードを利用して予約した品物を受け取る、代金をクレジット機能で支払うなど、便利な使い方についても学ぶことができるようになっています。

 普段の用途は親子間の通話がほとんどという子どもたちは、携帯電話の最新の機能に興味を持った様子。子どもからの質問に答え、父親が自分の携帯電話を出してさまざまな機能の使い方を説明する姿も見られました。

 後半は、教材コンテンツで学んだことも踏まえ、親子で「ケータイ力クイズ」に挑戦。「着信履歴に知らない番号があったらどうする?」「許可を得て撮らせてもらった有名人の写真はどこまで利用できる?」といった問題に、親子で話し合いながら答えていきました。

 最後に、父母がこれからケータイを持つ子どもたちへのメッセージを手紙に書いて手渡しました。小学5年生の息子と参加した父親(45)は、「ネットやケータイの使い方を親子で話し合う機会はないので、貴重な体験になりました。今日学んだことも参考にしながら、これから子どもと一緒にケータイのルールづくりをしていきたいと思います」と感想を話していました。

 中尾さんは、「ケータイやネットは便利なものだけど、危険もたくさんあります。使い方の知識を知るとともに、ルールやマナーのベースになる心を育てることも大切」とし、参加者に対し、「これからもぜひ親子でこの問題に取り組んでください」と呼びかけ、セミナーをしめくくりました。

学校・家庭での話し合いの題材に
~教材「伸ばそうICTメディアリテラシー」を無償公開中~

 今回のセミナーで使用した教材「伸ばそうICTメディアリテラシー ~つながる!わかる!伝える!これがネットだ~」は、総務省の委託事業として内田洋行教育総合研究所が調査・開発を行ったもの。セミナーで取り上げた2つのテーマのほか、インターネットでの情報収集と発表、デジタルカメラでの写真撮影とブログの活用など全5テーマで、機器の操作方法だけでなく、メディアの特性を理解する力や、送り手の意図を読み解く能力、メディアを通じたコミュニケーション能力といったリテラシーを、学校や家庭で楽しみながら学べるようになっています。

 児童用(小学校高学年対象)のワークブック、指導ポイントや授業展開案を掲載した教師用ガイド、親子でともに学べる家庭学習用ガイドブックなどのテキスト教材と、インターネット上の補助コンテンツを組み合わせて活用します。セミナーで使った迷惑メールとおつかいのシミュレーター以外にも、ブログの作り方を学べるコンテンツや、メールでの言葉のけんかと仲直りを体験できる教材など、子どもたちにとって身近なテーマを取り上げています。

 教材は現在インターネット上で無償公開中で、テキスト教材のデータをダウンロードすれば、どの学校、家庭でも自由に利用することができます。中尾さんは、「学年に応じて内容をアレンジすることと、子どもの実態を把握し、実体験に即した指導を心がけることがポイント。学校や家庭で有効に活用してほしいです」と話しています。

 詳しくは 「伸ばそう ICTメディアリテラシー -つながる!わかる!伝える!これがネットだ- 」をご覧ください。

取材・文:栗林俊晴/写真:言美歩 ※写真の無断使用を禁じます。
 

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