ICT(インフォメーション&コミュニケーションテクノロジー)時代の教育方法とは!?
物理的に離れた場所にいる小中高生がネットを介して集まって、協力しあってゲームやアニメなどのクリエィテイブコンテンツを作成する。そんなブロードバンド時代の学習環境構築プロジェクト「BBCoach Project」の最終審査/表彰式が、3月27日、東京のアップルストアー銀座シアターで開催された。プロジェクト事務局長の柳沢富夫氏にその開催主旨についてお聞きすると共に、当日の様子をお伝えする。
BBCoarch Project 事務局長の柳沢富夫氏 |
IT(Information Technology)からICT(Information & Communication Technology)へ ブロードバンド環境を利用して「いつでも、どこでも、誰でも、どんなツールでも使えるコンテンツにチャレンジしよう」と始まったBBCoach Projectについて、まずは柳沢氏のお話から紹介する。柳沢氏が代表取締役を務める(有)ラウンドテーブルコムは、学校現場へのインターネット技術導入や企業向けインターネットコンサルティングなどを手掛ける。柳沢氏はインターネットを利用した在宅学習を基盤とするアットマーク・インターハイスクールの運営にも携わってきた。 |
審査委員を務める 茂木健一郎氏 |
北海道の小学生と鹿児島の中学生と東京の高校生が コーチはこの活動の趣旨に賛同する有志たち、主婦や企業の経営者、教師、技術者など様々な職業に渡っている。彼らは作り方を教えるというよりは、プロジェクトを遂行していくためのコミュニケーションのとり方を導いていくといった立場にある。ゲーム、音楽、アニメーション、プレゼンテーションなど、アクティブなWEBページを作り上げていくことと、その裏には、顔が見えない相手に対してのコミュニケーションのとり方が課題となるわけだ。本プロジェクトでは与えられたコンテンツを個別に利用するだけではなく、最終的には外に向けて発信していく大切さも教えたいと柳沢氏は語る。 プロジェクト運営の支援には、サン・マイクロシステムズ(株)、キヤノン(株)などIT企業が協賛企業として参加する他、静岡県映像CG協会、多摩美術大学といった教育、映像、情報に関係する団体が協力を行なっている。 |
チームでやれば夢がかなう! プロジェクトのテーマやチーム構成のエントリー登録は12月末。全体の応募生徒数は287人に上った。今回は、都立戸山高校が情報科授業の基本戦略として取り入れたため、一年生のほぼ全員が登録したという。2月末の作品締切り後、第一次審査で選ばれた7作品が3月27日最終審査に集まりプレゼンテーションを行なった。東大名誉教授の石田晴久氏や脳科学者の茂木健一郎氏らが審査員に名を連ねている。 |
teamヒロポンのシューティングゲームが大賞を受賞 |
BBCOACH最終審査ノミネート作品 チーム名「teamヒロポン」 作品名:「ZING」
高校一年生3人のチームでシューティングゲームを創り上げた。プログラミング、登場するキャラクター作り、挿入する音楽担当と3人それぞれの役割別にプロジェクトを進め、2月に入って最終的にそれぞれのステージを組み合わせた。
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チーム名「あげあげ」 作品名:「BADMINTON'S HOME PAGE」
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チーム名「素人映画評論会」 作品名:「THE☆MOVIE」
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チーム名「まめとも」 作品名:「マンガでことわざ!」
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チーム名「THE SHAKES」 作品名:「ZING」 音楽好きの高校生が3人集まって作った作品。自分たちの曲に映像を合わせて表現したもの。曲作りは、メールで交換しながら合成させた。ホームビデオ用映像機を使って新宿の街中を撮影し、曲に合わせた映像作成と加工作業などもそれぞれの持分を決めて行なった。
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チーム名「集まれ!!アニマルランド」 作品名:「集まれ!!アニマルランド」
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チーム名「KH+」 作品名:「KH+」 デザインやイラストを描くことに興味のある2人が自分たちの作品を発表する場としてホームページを作成した。「どのページも動きがあって、見ていて飽きない、楽しめるサイトをめざしました」。アクセスするたびに色が変わったり、文字が移動したりと工夫がたくさん。それぞれに個人のホームページを持つという2人だが、ホームページ作成に興味を持ったのは昨年の夏頃からという。
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当日は、審査員である多摩美術大学の佐藤皇太郎氏やビジュアルアーティストの金大偉氏が大学生やプロレベルの創作作品を紹介しながら、更なる表現の可能性と夢の実現に向けてプロジェクト参加者たちにエールを送った。 teamヒロポンが、歴代の大会を含めて初となる「大賞」を受賞。メンバーは、「プログラミングのことは何も知らなかったが、ゲーム作りには興味があった。詳しい友達と一緒になることで一人では実現できない夢がかなってうれしい」、「一人でやっていたら途中で投げ出していたかも知れない。みんなでやるから完成できた」など感想を述べた。 「デジタル映像では質感を表現することが難しい、質感が一番感じられた作品に与えたい」と茂木氏が「クオリア賞」をTHE SHAKESに送った。「映像の加工は始めて。こんなに時間が掛かるとは思っていなかった」、「それぞれのギターのパーツをメールでやりとりしながらつなぎ合わせるといった作業が大変だった」とコメントした。 大人が想像する以上に子どもたちは創造性を持ち、映像コンテンツやアニメーションといったものにも興味を寄せている。ネット上には良し悪し問わず様々なコンテンツが氾濫している中で、何の指導もないままで、ルールも決めないでネット環境のみを与えることは、孤立した危険な状態へと導き出すことにもなりかねない。彼らの創造性を形にできる場所を提供し、その課程を評価し褒めてあげることで、子ども達が陥りやすいネットの問題をも回避できるかも知れない。ネットを通じてのコミュニケーション能力や表現力を身につけさせることは、情報教育の場だけではなく、教育現場全体で必要となっていることだ。BBCoach の発想は参考になるのではないだろうか。 (ITジャーナリスト 遠竹智寿子) |
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