デジタルキッズが創造の未来を拓く!?
新交通ゆりかもめ「テレコムセンター」駅を降りると、小さな子どもを連れたお母さん、ベビーカーを押すお父さんたちが、日本科学未来館に向かってずんずん歩いて行く。普段は小中高校生や大人の来館者が中心の同館だが、今日は小さな子どもたちの歓声でいつになく賑やか。一体何が行われているのか!?
粘土でつくったオブジェが 加わりカラフルな惑星が できあがっていく |
1月22日(土)・23日(日)の両日、日本科学未来館で、「ワークショップコレクション2005」が開催された。今年2回目となった本イベントは、こどもの参加型創造・表現活動の全国普及と国際交流を推進するNPO法人CANVASが主催するもので、15の企業、団体、個人が、子どもたちの楽しめるワークショッププログラムを用意して参加した。 どんなワークショップがあるのか簡単に紹介しよう。 東京湾が一望できるガラス張りの会場に足を踏み込むと、カラフルなオブジェが天井からぶら下がっている。 ここは、造形絵画教室アトリエミュレットが出展する、粘土による工作コーナー。 自分の好きな食べ物、動物、植物などを粘土で自由につくって、天井からつるしてある球体(惑星)に取り付け、「粘土で作ろう! わくわく惑星」というもの。カラフルな粘土の作品で、惑星がどんどん埋まっていく。 |
大きな糸電話。どんな声が聞こえるのかな |
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その横にはたくさんの紙コップがぶら下がっている。これは紙コップアーティスト LOCOによる「みんなで話せる糸電話」。糸電話は、1対1だけでなく、同時に10人でも100人でも話せる、ということを体感する。 |
子どもが出会う初めての電子絵本。お母さんといっしょに |
朝倉民枝さんが開発した電子絵本「ピッケのおうちへあそびにおいで!」は、子どもが出会う初めてのパソコンソフトとは、どういうものであって欲しいか、ということから発想し、おかあさんの膝の上で、おかあさんといっしょに楽しめるものを考えたという。 普通の絵本のように読み聞かせをしてあげることもできるし、ピッケといっしょにかくれんぼやお絵かき、森の仲間と音楽セッションをする、などゲーム的な要素も楽しめる。 |
この手押し車「アニマカート」で絵を1枚ずつ撮影 |
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簡単にアニメーションを作れるツールを展示していたのは、トリガーデバイス。子どもたちが描いた数枚の絵を床にならべて、ゴロゴロと手押し車型の道具「アニマカート」を転がしていく。この道具が実は画像を撮影してパソコンに入力するデバイスで、取った画像は即座にアニメーションとなってスクリーンに映し出される。 |
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わいわいとみんなでクレイアニメが作れてしまう、ねんどアニメカフェ |
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また、「ねんどアニメカフェ」は丸いテーブルの上の赤いボタンを押すと撮影、緑のボタンを押すと再生、という単純な入力装置で、すいすいとアニメが作れる。粘土をこねこねしてボタンをポン、これを繰り返し、あっという間にクレイアニメが完成していた。 |
手前にあるのが2cm×4cmの小さなコンピュータ。奥にあるのは動くおもちゃの作品 |
希望者多数で体験はできなかったが、ZOU STUDIO,Incが出展する「ZOZOキッズ CG ワォ!へんし~ん」のコーナーでは、自分をデジカメで撮影して2次元、3次元に加工。CGの楽しさを体験できる。 株式会社CSK CAMP(Children's Art Museum&Park)の「クリケットワークショップ」も早々に予約一杯に。ここでは、9Vの乾電池で動く、掌にのるような小さなコンピュータを使って、動くおもちゃを作る。おもちゃを動かすプログラムはアイコンをドラッグして重ねるだけでできる簡単なもので、小学4年生でもりっぱな作品を完成させていた。 |
紙風船を投げる動作をビデオに撮って逆に再生すると…? NPO学習環境デザイン工房の 「逆転時間を楽しもう!」 |
NPO学習環境デザイン工房の「逆転時間を楽しもう!」では、小型ムービーカメラで撮った画像をパソコンに撮り込み逆回転させてみる、というもの。たとえば転がっているボールが突然飛びあがって、ひょいっと手の中に。これはボールを投げるところを撮って逆回転したもの。逆回転なら、手品もアクロバティックな身のこなしも簡単だ。 これらのほか、DJやミキシングが体験できる「RADIO WORKSHOP」(株式会社プロムナード、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会)、「バーチャル砂場遊び」(尾上耕一)、パソコン上に描いた絵が他の友達の描いた絵と交配して新しい絵を生み出す「メンデルのキャンバス」(安斎利洋、中村恵理子)、パソコンで印刷した紙を使ったペーパークラフト「Yahoo!きっず ペーパークラフトで動物園を作ろう!」(ヤフー株式会社)、 |
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ブロックを置いたり並べ替えたりするだけで音楽が作れる「Music Table」(株式会社国際電気通信基礎技術研究所)、絵を並べるだけで画面の絵が動き出す最新のプログラム言語ビスケットを使った体験コーナー「1分で君も画面の魔法使い」(原田康徳)、本物のちんどん屋さんと一緒に演奏をしながら会場を練り歩く「ちんどん+リズムワークショップ」、そして、学びの場.comにも何度か登場していただいている日本シミュレーション&ゲーミング学会の授業と教材研究部会からは、授業を楽しくするゲームの数々が紹介された。 |
日本シミュレーション&ゲーミング学会のゲームのひとつ「つなげー」に参加する子どもたち |
同学会の彌島康朗氏は、 子どもたちにモノ作りの場を提供する、という今回のイベント、最先端の技術を駆使したデジタルツールもたくさん登場していたが、子どもたちは、粘土をこねたり、紙を切ったり貼ったりする、という手作業の延長線上で、自然にデジタルツールも使いこなしていた。ゲーム漬け、ネット依存など、情報化社会の闇ばかりが強調される中、今回のイベントはその対極にある、光の部分を示唆するものとなったのではないだろうか。 (取材・文/学びの場.com 高篠栄子) |
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