2004.07.27
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テディベアを親善大師に! 2004JEARN国際交流セミナー in 東京

今回は、学びの場.com特派員 小股千佐からのレポート。100ヵ国が参加する世界最大の教育ネットワークiEARNの日本事務局「JEARN」が行う国際交流事業、「テディベアプロジェクト」について取材しました!


 

 100ヵ国が参加する世界最大の教育ネットワークiEARNの日本の窓口であるJEARN(グローバルプロジェクト推進機構 http://www.jearn.jp/)のセミナーが6月26日、内田洋行の多目的ルームで開催された。JEARNは日本で初めての本格的な国際交流学習プロジェクトを推進するNPOで、150以上の国際交流学習プロジェクトを提供している。セミナーには学校の先生方やいくつかのNPOのスタッフ、学生、会社員など19名の参加者が集まった。長野から駆けつけた先生の姿も見られ、その関心の高さが窺える。

 


 
赤堀侃司先生

 まず初めに赤堀侃司氏(東京工業大学教育工学研究センター教授)の基調講演があった。「異文化理解を教育に活かす」と題し、「異文化体験・交流の中で思うようにならないことが必ず出てくるはず。そこから、インスタントなこの時代の中で、待つこと、我慢することを身に付けます。また、国際交流する中で、うまくいかなかったときにどうするかを考えたり、自分と違うものをどう理解するかといった重要なことを学べます」と異文化交流の重要さを語った。「失敗してもいいんです。失敗から学ぶことで力強い子どもになっていくんです」という言葉が印象的だった。

 


親善大使として世界を回ったテディベアたち

 


ぬいぐるみのコアラと記念撮影

 そしてこの日のメインとして、JEARNの国際交流プロジェクトのひとつである「テディベアプロジェクト」を題材に参加者が実際に体験しながら学べるワークショップが始まった。JEARNの理事長であり、20年以上国際交流のコーディネートに携わっている高木洋子氏がファシリテーター。テディベアプロジェクトとは海外の子どもたちと日本の子どもたちがそれぞれぬいぐるみを用意し、互いに「親善大使」として送りあい、ぬいぐるみが体験した文化をメールや手紙、ビデオなどで交換することで相手国を知り、学ぼうというもの。世界のおよそ70ヵ国、2600の学校が参加しており、学校教育に取り入れられる国際交流プログラムとして注目されている。
 まずは参加者が4班に分かれることに。班の中で自己紹介が終わると、テディベアプロジェクトの流れを高木氏がスライドショーで説明。親善大使となるぬいぐるみはオーストラリアからはコアラだったりアリゲーターだったり、タイからは象だったりと、何もテディベアに限らずともいい。日本に来たぬいぐるみは、こどもたちが順番に家につれて帰り、一緒にスイカを食べたり祭りに参加したりと日本の生活を満喫することになる。そしてそれを子どもが日記に書き、翌日は次のこどもへと順番が回っていく。


子どもたちが交換した写真やメッセージ

  このプログラムでは子どもたち自身がプロデューサーだ。こどもたちは「何をして何を伝えようか」と自分たちで考える。プロジェクトでは2ヵ月や3ヵ月といった期限を決めるが、それは各自の持ち時間を意識させ、その時間を最大に生かす、タイムマネージメント能力を養うという狙いがある。また、学習は教室の中だけにとどまらない。家庭や他クラスとの交流がはかれるほか、「海外からこんなぬいぐるみが来てるんです」と近所、地域との交流もでてくる。また、クラスのほかの子と違った体験をさせたいということから、生徒の創造性も伸びる。そして相手の国への興味・関心が高まることでコミュニケーション力や語学力などが自然と高まり、メールやチャットで交流するなかでパソコンスキルなども身についていく。
 準備段階から、実際に動き出してからの週間単位の進行プログラムに沿ってグループごとに話合い、自分たちを担任の先生と想定してワークシートを埋め、グループごとに発表する。課題は「こどもたちにとってこのプロジェクトのゴールとは」「こどもたちから多くの可能性を引き出すためにはどのように励ましたらいいか」「ほかのクラスの子たちや家族、地域をどのように巻き込んでいくか」などなど。送り出すテディベアの名前を付けるときに「純一郎」と名づけたグループがあり、「好きなことは国際協力です(笑)」「いじめられたどうするんですか(笑)」などと盛り上がっていた。

 
JEARNの理事長
 高木洋子氏

 また、JEARN事務局とのメールのやりとりや相手国の先生とのメールでのコンタクトなども実際に画面を見ながら進められ、作業の流れがわかりやすく示された。「短い文章を相手の先生に何度も送ったほうが仲良くなれますよ」など具体的に細やかなアドバイスも。テディベアに着せる服や持たせるものなどについても、「予算がなければ手作りすればいいですし、誰かの家にあるものでもいいんです」と。高木氏の話を聞いていると、構えすぎずフレキシブルにやればいい、という姿勢がうかがえる。ぬいぐるみが紛失したこともあったそうだが、「それにどう対応するかも学びです」。こどもたちだけでなく、このプロジェクトでは先生にも柔軟性や対応力が養われそうである。最後に、相手国の先生とのテレビ電話の会話シュミレーションも実際にテレビ電話を使って行なわれた。
 「こうしなさい」「こうあるべき」とは決して言わず参加者自身に考えさせていた高木氏。実際は2、3ヵ月で進めるプロジェクトを短い時間で体験したわけだが、知るべきエッセンスは十分凝縮されていたように思う。
 テディベアプロジェクトはJEARNの中でも中核となっていくであろう人気プロジェクトだ。すでに100クラス以上が取り組んでいる実績があり、「積極的に総合学習に活用して欲しい」と高木氏は語る。今後ほかのプロジェクトも含めセミナー開催をしていきたいとのことで、参加者がまたそれぞれの現場で活動の源となり、こどもたちの国際交流の輪が広がっていくことに期待したい。


★JEARNのホームページ
http://www.jearn.jp/

(学びの場.com特派員:小股千佐)

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