2004.08.31
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平成16年度 日本シミュレーション&ゲーミング学会 「授業と教材」研究部会 夏の部会

内田洋行新川ビル地下一階の多目的スペース「CANVAS」にて、日本シミュレーション&ゲーミング学会の部会が開催されました。  今回は、大学の夏休みを利用し、学びの場.comにインターンとして、職業体験に来た、大学3年生の須藤綾子さんが特派員となり、イベントの様子を取材してくださいました。

日本シミュレーション&ゲーミング学会は、まだ認知が浅いシミュレーション教材やシミュレーションゲーム教材の正しい理解による効果的な活用を目指している学会である。廉価で質のよい教材が供給されるような市場の確立に向けて、シミュレーション教材やシミュレーションゲーム教材を使った授業の提案がなされた。今回の参加者は55名。各セッションが終わるごとにEdu Clickという小型リモコンでアンケートに答えるという試みがされたが、目新しい小さな道具に目を輝かせて投票する参加者も少なくなかった。

 この学会の会員は、日本全国で活躍するシミュレーション&ゲーミングの研究者、 実務家、教育実践家などで構成されている。シミュレーション&ゲーミングという学際的手法と、科学技術の飛躍的発展をはかることを目的とし、国内外の研究ネットワークの形成に努めている学会である。ここでは発表されたセッションの中から3つ紹介していきたい。

「“やってみ店長”&“マネースマート”でマネー教育」 発表者:小林潤一郎(田園調布雙葉高等学校)

小林潤一郎先生

高校の“情報”という教科では生徒に何を学ばせる授業なのだろうか。このような問いにはどのような答えが返ってくるだろうか。インターネットの使い方を学習するため、文章作成やグラフの作成を学ぶため、などという答えが一般的であると思われるが、 “情報”は個々の考え方を表現するための手段としてパソコンの使い方を学ぶ教科であると小林氏は言う。その手段を身につけることが目的になってしまっては本末転倒になってしまうのだ。

 実際に小林氏の授業では“やってみ店長”と“マネースマート”というソフトを使って生徒に主体的に学習させている。“やってみ店長”というソフトは、生徒自身がコンビニの店長をシミュレーションするものである。生徒たちは、商品が売れるように「棚」や「商品」の配置、「保有数」などを工夫する。最終的には結果を分析した生徒たちは、売上を上げても利益が上がるわけではないというようなビジネス仕組みに触れる。そこで初めてビジネスの現実を知ることができるのだ。
 そして、“マネースマート”というソフトを使い、生徒は株、投資、不動産についても学ぶ。お金の流れについて学んだ後に、生徒は年齢ごとに詳細な人生設計を立てることになっている。この学習では、最終的に人生設計をすることによって、シミュレーション学習が生かされているのだが、ただシミュレーションソフトを使ってみるだけでは、単なる遊びになってしまう危険性がある。シミュレーションやゲーミングの教材を使う時には、本来の目的を見失わずに学習をできるように、教師が支援をする必要があるのだ。

関係発見を促す3次元歴史データベースシステム「クロノスシステム」 発表者:宮之原立久(株式会社エンサイクロメディア)

クロノスシステムの画面

クロノスシステムは歴史学習をするためのソフトである。これを使うことによって歴史を、時代や場所を3次元に置き換えて学習することができる。発表の中では実際に小学生がこのソフトを使って学習している様子をビデオで紹介されたのだが、マウスでスクロールすることにより、時代を自由に横断でき、画面上で歴史的出来事が迫ってくるという仕組みに児童たちは大変興味を示していた。このソフトで歴史の流れを学習した後、児童たちはそれらの出来事について詳しく調査をし、最終的には自らコンテンツを作成するという学習体型をとっていた。3次元で年表を現すことのメリットとして、宮之原氏は科学・技術・文化のつながりを学習できることだと行っている。
 このセッションのあとにもやはりEdu Clickを使ってアンケートがされたが、 “社会科の先生に紹介したい”という意見が多数を占めていた。このソフトは、e-learning World 2004で日本e-learning大賞を受賞しており話題性も高いが、何よりその中身に多くの支持を得たことをあらわすアンケート結果であった。

「江戸明治東京重ね地図」を用いた地域学習・歴史学習の可能性 発表者:小島豊美(株式会社エーピーピーカンパニー)

小島豊美氏

このセッションで取り上げられたソフトは、その名のとおり江戸、明治、そして現在の地図を手軽に楽しめるものである。この地図の特徴を上手く利用すると、シミュレーション教材ならではの発見ができるという。発表の中では、以前は競馬場であった部分がとりあげられた。時が経ち、現在では当時のトラックがそのまま現在の道路となっている様子が分かると、会場にいた参加者の大半はスクリーンに釘付けになっていた。シミュレーション教材は子ども向けだけではもったいない、そう思わせるようなセッションであった。

取材・執筆:須藤 綾子

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