意外と知らない"学校での1人1台のタブレット活用"(vol.4)
前回は、学校での様々な学習場面におけるタブレット端末やICT機器の利用例を紹介しました。第4回は、実証実験や各種の調査で得られたデータを基に、教育現場でのICT利用の効果や活用状況について説明します。
ICTを活用した教育の効果とは?
実証に参加し、ICTを利用した教育を行った小学校(10校)では、ICTを利用した教育を行ったあと(平成24年度)の方が、標準学力検査(CRT)の結果において、低い評定の出現率が減少している傾向が見られました。(グラフ1参照)
ICTの整備状況:増加するタブレットPCと電子黒板
なお、日本に整備された教育用コンピュータのうち、タブレットPCの台数は約7万2千台で、全体の3.8%にすぎませんが、前年度と比べると2倍以上の ペースで増加しています。また、タブレットPCとセットで使われることが多い電子黒板の配備台数は、約8万2千台(1校当たり2.4台)で、こちらも前年 度から1万台以上増加しています。
今後、日本でも1人1台を目標にタブレットPCの導入が、加速するものと予想されます。
日本の教育現場で、ICTの活用は進んでいるか?
また、文部科学省が、平成25年度(2013年10月~2014年1月)に全国の小中学校(各100校程度)を対象に行った「情報活用能力調査」の教師用質問紙調査によると、「コンピュータなどを活用して、児童(生徒)同士が教え合い学び合う学習(協働学習)」に関して、「週1回以上」実施している教員は、小・中学校とも1割にもいたっていません(報告書P.112、P.114参照)。
さらに、経済協力開発機構(OECD)が34の国・地域の中学校校長・教員に対して実施した国際教員指導環境調査(TALIS2013)の調査結果報告書によれば、日本では、「生徒は課題や学級での活動にICTを用いる」と答えた教員の割合が9.9%で、全参加国・地域の中で最低でした(参加国の平均値は37.5%。報告書P.161参照)。
諸外国と比べてもICT活用が進んでいないことがわかります。
一方で、同調査では「主体的な学び」に関する質問もありました。指導・学習に関する教員の個人的な信念についての問いでは、
・「生徒自身の探求を促すこと」は、教員の役割である。
・「生徒は、問題に対する解決策を自ら見出すことで、最も効果的に学習する」
・「生徒は、現実的な問題に対する解決策について、教員が解決策を教える前に、自分で考える機会が与えられるべき」
の項目について、日本の教員の9割以上が、「当てはまる」「非常によく当てはまる」と回答しています(報告書P.177)。
しかしながら、「主体的な学びを引き出すために必要と思われる項目」に関して、教員自身の姿勢や能力について聞かれると、自信を持つ教員の割合が総じて低く、諸外国に比べても大きな差が顕れています。(グラフ4参照)
一方で、「教科指導に必要と思われる項目」については、こちらも諸外国とのかい離はあるものの、前者に比べれば高めの数値になっていることから(グラフ5参照)、日本の中学校教員の多くが、「生徒の主体的な学習」をすべきであるという信念は持っているものの、その指導に対して苦手意識を持っている様が感じ取れます。
教員のICT活用指導力は、伸びているか?
当記事第3回で紹介した総務省の「フューチャースクール推進事業」では、実証校の教員を対象として、ICT活用指導力に関するアンケート調査の経年比較を行いました。
ICT活用指導力に対する教員の自己評価は、ICT機器導入前に行われた事前アンケート時(平成24年1月頃に実施)に比べて、ICT活用後に全ての能力 が大幅に向上しています。特に「授業中にICTを活用して指導する能力」「生徒のICT活用を指導する能力」などは、平成23年度末アンケート(平成24 年3月から4月頃に実施)まで、わずか2、3か月という短期間で、10ポイント以上も向上していることがわかります。(グラフ6参照)
このように、ICT活用に不安を感じている教員も、使い始めると数か月ですぐに慣れ、授業を重ねるごとにICT活用指導力が高まることが示唆されます。も ちろん、教員研修や技術的な支援は必要ですが、積極的な実践を通じて能力を伸ばすという面もあるものと思われます。
今後、設備・環境の整備にともない、教員養成においてもICT活用指導力の育成が一層進められそうです。
参考資料
構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 井上信介
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