2013.09.27
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教員に必要な英語力とは

駿台学園高等学校 英語科教員 神戸 崇寛

 英語の授業を行っていくうえで英語力が必要なことは当然のことですが、何をもって英語力があると言えるのでしょうか。英語力があれば十分な指導を行うことができるということにすぐ結びつくのでしょうか。

 外国語能力の向上に関する検討会が取りまとめた施策で、生徒の英語能力向上を図るために英語教員の指導力、英語力の強化が極めて重要であるとしています。具体的には、新学習指導要領にもとづいて、「英語の授業は英語で」行っていくため、生徒が英語に触れる機会を増やすため、授業で実際のコミュニケーションの場面とするための英語力として、英検準1級、TOEFL(ibt)80点、TOEIC730点程度以上が必要であると指標を示しています。平成23年度の調査結果によれば、公立の高等学校や中等教育学校の後期課程で英語を担当している教員(非常勤は除く)22,482人のうち、これらの基準に達しているのは11,878人で48.9パーセントであるとしています。逆の見方をすれば、約51.1パーセントの教員はこの基準に達していないことになります。もちろん試験を受けていないだけで、試験を受ければこの基準に達する教員もいるかもしれません。ただ、生徒に勉強しなさいという以上、教員本人がこの手の基準を何も持っていないのは手本として感心できたものではありません。

 はたしてこの基準に達していれば満足いくような授業ができるのでしょうか。最近では英語教員でなくともTOEIC900点以上をもっている人もざらにいます。指導力を図る上での指標として適切なのでしょうか。TOEIC730ぐらいでは英語の文章を表面的には理解できるかもしれませんが、文章を読んでいて本当に筆者が伝えたい意図を理解できているのでしょうか。教科書や指導書に使われている英語に批判的になれず、誤った知識を伝えることにもなりかねません。

 逆に英語がいくらできても、生徒が理解できる英語のレベルで話す能力や状況に応じてやさしい英語で言い換える能力がなければ指導力がある教員とも言えないでしょう。

 英語を教えるようになってわかってきたことは、英語の教員として求められる力は後者の方で、生徒の発言をくみ取ったり、教科書に書いてあることを自分なりの言葉で言い換えたりすることができる力のような気がしています。(だからと言って資格取得のための勉強をしなくていいとは思っていません。)そのためには、授業準備の段階で予想される生徒の反応やさまざまな資料に目を通す時間が確保できたらいいのですが…。授業のコマ数や教科書の種類を決める際にそういったことも考慮してもらいたいものです。

神戸 崇寛(こうべ たかひろ)

駿台学園高等学校 英語科教員
英語の文法に興味があり、大学院で研究してきました。2011年より現勤務校。日々英語を教えながら学び感じ取ったことをお伝えし、 皆さんと共有していきたいと思っています。

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