2018.10.17
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北六米っこ物語 ~自分たちのくらしをつくる~(その3) 【食とくらし】[小5・総合的な学習の時間]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第143回目の単元は「北六米っこ物語 ~自分たちのくらしをつくる~(その3)」です。

これまで、子どもたちは、米粉パンの製品化に向けて、米の栽培活動を経て米粉パンの企画書を考えたり、地域のパン屋さんを招きプレゼン大会を実施したりするなど主体的に活動してきた。

第3回は、⽶粉パン製品化に向けて、店頭で販売するパンの個数を考える。そして、より多くの⼈に⽶粉のすばらしさや⾃分たちの活動に対する思いを広めていくために、⼦どもたちは活動に没頭した。活動のふりかえりとして、4月当初に⾷べた⽶粉パンを食べた。活動前と後で同じ米粉パンがどのように感じるか交流することで⾃分たちの学びの⼿ごたえや⽶粉パンへの思いを⾃覚し深く学んだ。そんな⼦どもたちの姿を紹介する。

6 米粉パン製品化に向けて~パン職人の生き方に学ぶ~

(1)パン工房「りょう」のマスターから学ぼう

・米粉パンをつくろう~パン工房りょうのマスターといっしょに~

本格米粉パンづくり

西宮市の南部に店を構えるパン工房「りょう」のマスターに来ていただき、米粉パン作りを教えていただいた。材料をこねるところから焼き上げまでパンをつくるすべての工程を実際に体験した。生地をこねる工程や焼き上げる工程では、パン作りの難しさや職人の技のすごさを肌で感じていた。

(2)道徳 パンづくりの情熱 ~パン工房「りょう」のマスター~

パン工房「りょう」のマスターのパン作りに対する情熱や生き方からものをつくる職人の思いに迫った。

子どもたちは、パン職人として働く喜びや苦悩、職人としての誇りを学んだ。さらに、売れ残ったパンは捨てられているという現実を知った。パン屋として、値引きしたほうがいいのか、それともそのまま定価で売り続けたほうがいいのか考えた。

以下は実際の授業の子どもの意見である。

  • パン屋の職人は、小麦や米、酵母を提供していただいているさまざまな人の思いを受けて作っている。
  • 値段を下げることで、ものの本当の価値が下がる。
  • 捨てられると、作った人の思いまで無駄になってしまう。

子どもたちは、この後の活動で地域のキタロクベーカリーで製品化してもらい販売化することを重ねて発言していた。互いにさまざまな意見を出し合う中で一つのパンを作るのにたくさんの人の思いが込められていることに気づき、ものを創り出すことの大変さや苦労を感じていた。

7 米粉パン製品化に向けて~米粉パンの販売個数を考えよう~

店で検討してもらった結果、⽶粉メロンパンと⽶粉焼きそばパンと⽶粉チョコパンの3種類が製品化されることになった。米粉パンを製品化して、商品として販売する際に「何個販売するのか」という新たな課題が上がってきた。⼦どもたちは、1⽇のパンの販売個数、1⽇の来客数、価格、従業員の⼈数などさまざまな視点から実現可能なのか考えることで販売個数を検討していた。さらに、多く作りすぎて余ることで⾷品ロスとなるという視点から、⼦どもたちは以下のような発⾔をしていた。

  • 作りすぎて余ると、米粉の良さも伝わらないし、自分たちが作ったお米も捨てられてしまうか個数は少ない方がいいかもしれない。
  • せっかくつくったものが捨てられると、恵方巻の話とつなげていうと資源を無駄にしているし、だれもいいことがないと思います。

このように自分たちが作ったものを多くの人に食べてもらい、米粉のすばらしさを伝えたいという思いを子どもは語っていた。

この話し合いの前時において、学級活動で「恵方巻」における食品ロスの事例を取り扱った。自分たちの身の周りで売れ残ったものが捨てられている事実を知った。子どもたちは、米粉パンの販売個数を検討する際も同様に考えていた。販売する米粉パンを多く作りすぎることで食品ロスにつながるという視点を持って活発に議論した。⼦どもたちは、既習の学びを⽣かして⾷品ロス削減の視点から持続可能な社会の実現を意識して発⾔し、⽶粉パンの個数を考えていた。

「製品化される米粉パンの販売個数を決定しよう」授業板書

8 米粉パンのすばらしさを発信しよう

(1)米粉パンのよさを知ってもらおう~神戸新聞から発信する~

神戸新聞の記事より

米粉パンのよさを多くの人に知ってもらうために子どもたちは、社会の学習と関連させて新聞社にPRすることを考えた。日本の米の消費量増加や日本の農業が抱える問題点など日本の社会問題の解決に向けてもっと多くの人に知ってもらいたいという子どもの思いが地域の新聞社を動かした。子どもたちは自分たちの活動に大きな自信を持つとともに、自分たちが世の中を変えていくんだという強い思いを再認識している学びとなった。

(2)米粉パンのよさを知ってもらおう

~朝日小学生新聞で活動の学びを発信しよう

朝日小学生新聞の記事より

朝日小学生新聞に取材を受け、日本全国へ発信した。地域から日本全国へ学びを発信する経験は子どもにとってかけがえのない経験となった。また、小麦アレルギーでパンを食べることのできない人は日本全国にいる。そんな人がより良く暮らしていける世の中をつくりたい、そんな思いの高まりの見られたインタビューとなった。

終わりに

「私にとって米粉パンとは・・・」

学習のまとめとして「私にとって米粉パンとは~である。」と振り返らせた。学びの集大成として、子どもたちからはさまざまな意見が出た。
以下は、子どもの米粉パンに対する見方である。

社会に広がる第一歩

「米粉パン製品化を通して、パン屋さんとか新聞とかいろんな人に知ってもらったから。社会に向けて米の消費量や古米の量の問題、食料自給率が下がるかもしれないって問題を伝えることができたから。自分達でもそんなことができるんだって思ったから」

未知の食べ物でした

「ぼくは、米粉パンは、最初未知の食べ物でした。でした にしたのは、今は知っているから。米粉パンを知ってもらうことで、米粉アレルギーの人や農家の人を助けることにつながるし、いろんなよいところを今は知っているから。でも、まだみんなには知られていない存在だから。」

自分たちじゃ商品化できないもの

「この活動は、自分たちだけじゃできないことだと思います。農家の方やJAの方、パン屋さんとかたくさんの人がいて、この活動が、製品化ができたことだと思います。本当にお礼が言いたい気持ちです。」

可能性・・・

「小麦アレルギーの人も食べてもらえるかもしれないし、全員が同じものを食べてもらえるかもしれない。これは世の中を変えていくだけの可能性のあるものだと思いました。」

ヒーロー

「みんなのヒーローだと思いました。米粉パンは、小麦アレルギーの人も食べてもらえるし、米を食べてもらうことで農家の人も助かるし、米粉は、みんなのヒーロー的存在だと思いました。」

「米粉パンは、夢です。この米粉パンがマクドナルドとかに知ってもらって、売り出すことができて製品化されるとすごいことだし。自分たちがしてきた活動がたくさんの人のためにもなる。これからもっともっと広がっていく可能性のあるものと思うから。」

みんなを笑顔にするもの

「ぼくにとって、米粉パンはみんなを笑顔にするものだと思いました。なぜなら、このパンを地域の人が食べると笑顔になれるし、パン屋さんも言っていたけど、お年寄りから赤ちゃんが食べて笑顔になれるから。そんなパンが地域を笑顔にしていけると思ったからです。」

普通のもの

「私にとって米粉パンは、普通のものです。私の家では、兄がアレルギーを持っているので、いつも米粉パンを食べています。なので普通のものです。この勉強でたくさんの人に米粉のことを知ってもらえてよかったと思います。アレルギーの人でも食べられることを知ってもらえてよかったし、このことをもっと多くの人に知ってもらいたいと思います。」

このように、子どもたちなりに米粉パンという教材から主体的にまた切実に社会の課題に向き合う活動となった。

はじめに食べた米粉パンと最後に食べた米粉パンは同じ店で作った米粉パンである。しかし、子どもの感じ方はちがう。それは、お米を1から栽培し米粉パンを製品化する中でさまざまな課題や人の考え方、生き方と自分の考えや日常と深く結びつけ学んだことであると考えられる。この一年で米粉パンに対する見方や考え方の変容が見られたことは子どもにとって大きな学びだったと思う。

今、ふりかえると、子どもの見方や考え方を変容させた大きな要因は人との出会いであったように感じる。さまざまな人と出会い、子どもたちなりにコミュニケ―ションをとり、生き方やその人がその人たるゆえんを感じたのだと思う。

米粉という教材を通して、地域の人だけでなくパン屋さんや農家の方、JAの方など社会に出て働く人、地域に生きる人とを子どもが繋げ、社会に大きく羽ばたく一歩となるように環境を整えることの重要性を感じる一年であった。

社会に開かれた教育課程と言われると固い感じがするので、私なりに言い換えると、人と出会い、子どもがその人の魅力を素直に受け止め、自分の生き方に活かせるようにさまざまな人やもの、地域とつながることのできるようにしていきたいと考えている。その中で、子どもたちは、人と人とのコミュニケーションの在り方、本物と出会い、自分の夢を見つめ直し未来に向かって生きる力を育んでいくと信じ、これから日々の子どもとの関わりを大切にしていきたいと思う。

授業の展開例

〇米のようにさまざまな姿に変化し、消費される作物を育ててみよう。教材のさまざまな 側面が子どもの活動の広がりとなるヒントとなるでしょう。

〇食品ロスについて、年間どのくらい廃棄されているか調べてみよう。また、食品ロスと自分たちの生活とのつながりについて考えてみよう。

箱根 正斉(はこね まさなり)

兵庫県西宮市立北六甲台小学校 教諭
教員8年目。総合的な学習の時間を中心として子どもの主体性を引き出せるように単元、授業づくりに日々取り組んでいる。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学文学部教育学科 専任講師 小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文・箱根正斉/イラスト:学びの場.com編集部

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

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