2007.07.24
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New Education Expo2007 in東京 現地ルポ ~ことば・モノ・空間から探る教育の未来~

New Education Expo2007 in東京 現地ルポ

New Education Expo2007 in東京が6月7日~9日の3日間、東京ファッションタウンで開催され、教育改革、教育の情報化、サイエンス教育など多様なテーマで講演やセミナー、事例発表が行われた。ここでは現地ルポとして、識者が教育改革の今後を語ったふたつの講演と、最新の教育空間やグッズを提案した展示ゾーンの概要を紹介する。

New Education Expo2007 in東京 現地ルポ

基調講演 「21世紀の日本と教育の再生」
独立行政法人日本学術振興会 理事長
教育再生会議有識者
小野 元之 氏

教育再生会議・第二次報告のポイント
~「社会総がかり」での教育改革を実現するために~

学力向上から大学改革まで提言
小野 元之 氏

 初日に基調講演した小野氏は冒頭で、21世紀の日本は、明治維新、戦後の復興に次ぐ「第三の転換期」を迎えているとし、「少子高齢化、規範意識や倫理観の低下、学力低下、教育を含む行政機構の制度疲労など課題が山積するなかで、国家戦略として教育再生を進めていかなければならない」と述べた。

 こうしたなか、平成18年10月に発足した教育再生会議では、「社会総がかりでの教育再生」をテーマに各界の有識者らが議論を展開。今年1月には、ゆとり教育の見直し、規律ある教室を取り戻す学校再生、教育委員会機能の見直しなど7項目からなる第一次報告を取りまとめた。

 6月には一次報告の内容を精査した第二次報告を発表。「学力向上にあらゆる手だてで取り組む」「心と体~調和の取れた人間形成を目指す」「地域、世界に貢献する大学・大学院の再生」「『教育新時代』にふさわしい財政基盤の在り方」の4つを軸に具体的な提言を行っている。小野氏は項目を一つずつ取り上げながら、会議での議論の経緯や提言の意図を解説した。

学校裁量で授業時数増も可能に

 このほかにも二次報告では、緊急の対応策として、1.学力向上を目指し授業時数10%増を図る(夏休みの短縮や朝学習の活用、必要に応じて土曜日の授業を学校裁量で行えるようにするなど)、2.徳育の充実、3.メリハリのある教員給与体系の実現、4.国際化を通じた大学・大学院改革を挙げている。1、2、4については、平成19年度中に予定される学習指導要領の改訂などにより実現する見込み。3は、20年4月をめどに関連法案の改正を行うとしている。

会場

 小野氏は、こうした改革を実現していくうえでは、確かな財政基盤の整備が必要と指摘。「教育行政や学校運営の効率化を図る一方、メリハリある予算措置により、教育再生に真に必要な財源を確保する施策が求められる」と話した。また教育再生会議の今後については、「教育改革に対する国民の関心は高く、内閣でも最重要課題と位置づけられている。多様な人材が集まる再生会議で実りある議論を行い、国民の期待に応えられるような教育の将来像を提言していきたい」としめくくった。

特別講演 「学力問題の新たな展開とICT」
立命館小学校 副校長
教育再生会議有識者
陰山 英男 氏

基礎基本の徹底反復が学力を伸ばす
~ICTのメリットを生かした新たな学習スタイル~

生活改善で体と脳の健康を取り戻す
陰山 英男 氏

 午後の特別講演は、「近年の学力低下問題は、授業時数やカリキュラムの減少ではなく、子どもの生活リズムの乱れからくる『脳の機能低下』が要因ではないか」という問題提起からスタートした。
 

 陰山氏は、睡眠時間や食事の内容と学力の相関関係を表すデータを提示し、「十分な睡眠と、バランスのよい食事をとる子どもほど学力も高い」と指摘。自ら参画している「早寝・早起き・朝ごはん」国民運動の取り組みも紹介しながら、子どもの家庭での生活環境を改善し、体と脳を健康な状態に保つことが学力向上への第一歩と語った。
 

 次に、自身の実践から得たデータをもとに、学力を効率的に伸ばすためのポイントを紹介。「早寝・早起き・朝ごはんの継続」「ひとつの学習に短期間集中させる」「教材は基礎基本に限定し徹底反復する」「定着期間を大切にする」といった点に加え、「漢字の読み書きを中心とした言語能力の育成が学力向上のポイント」と述べた。

ICTによる「書く学習」の可能性

 こうした基礎基本の徹底反復学習は、ICTと相性がよい。詳細な学習履歴を保存できるため、子どものつまずきを把握し適切な支援に生かすことができるほか、ペンでの手書き入力ができるタブレットPCや携帯ゲーム機の普及により、ICTを使った「書く学習」も可能になっている。陰山氏は、こうした機器の活用を「デジタル学習の本命」として重視し、携帯ゲーム機を使った漢字学習の実証研究もはじめており、「自動採点や筆順を含めた正誤判定、間違えた漢字を集中して出題する機能など教材を工夫することにより、学習を効率化し、短時間でも十分な習熟が可能になる」との見通しを示した。
 

会場

 このほかにも、授業内容のシステム化やデジタル教材の共有を実現する電子黒板の活用、教室や学校という空間的な制約を超えた学習を可能にするインターネットやテレビ会議の利用など、ICTの学習利用には大きな可能性があると指摘した陰山氏は、「教育のあり方についてさまざまな論議があるが、まずは先生方が社会に評価される結果を出すことが大切。確かな学力の育成をサポートしてくれるツールとして、ICTを有効に活用してほしい」と提言した。


見どころ満載の展示ゾーン~

 会場内の展示スペースでは、教育の情報化などに対応した最新の学習空間を体験できるブースのほか、協賛企業が提案するさまざまな教材・教具の展示も来場者の関心を集めていた。注目度の高かったブースをピックアップして紹介する。

職員室
~ICTを取り入れた新しいワークスペース~
普通教室
~アナログとデジタルが融合する学習空間~
職員室
普通教室
職員室のブースは、各地で導入が進む校務用PCやネットワーク環境を生かしたワークスペースに。校務の情報化を支えるグループウェアやCMS、情報セキュリティ対策などソフト面の環境整備も合わせて提案した。 普通教室ブースでは、通常の黒板に取りつけることで、デジタル教材の提示や操作が可能になるインタラクティブユニットの活用シーンを再現。毎日の授業のなかにICTを自然に取り入れられるツールとして注目を集めていた。
理科室
~サイエンスへの興味関心を刺激~

 
特別支援教室
~個に応じた支援に役立つグッズに注目~
理科室
特別支援教室
ICTのメリットを生かした学習スタイルを提案する理科室のブース。PCやプロジェクターと接続し、観察中の映像を拡大提示して共有できるデジタル顕微鏡などが、理科の授業をより楽しく、わかりやすくしてくれそうだ。 個別のワークシートを細かく整理できるラックや、間仕切りとしても使えるキャスター付きの什器類のほか、見やすい時計や「カチンコ」など子どもの集中力を高めるグッズも紹介。ブースは終日盛況で、現場の関心の高さがうかがえた。
UCHIDAS
~学校に必要なあらゆるアイテムが揃う~
内田洋行教育総合研究所[UERIC]
~学校現場で役立つ情報・教材を提案~
UCHIDAS
内田洋行教育総合研究所[UERIC]
今年3月にスタートした学校向けカタログ・ネット通販「ウチダス」。教材・教具から文具や事務用品まで10000点におよぶラインアップで、楽しい学校・学級づくりを応援する。
http://www.uchidas.net/shop/

[UERIC]では、調査研究やイベントの企画運営、学びの場.comでのコミュニティづくりなど、現場で求められる情報や教材を提案するためのさまざまな活動を展開している。

http://ueric.uchida.co.jp/

(写真:言美歩/取材・文:栗林俊晴 ※写真の無断使用を禁じます。)

 

 
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